八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十六話 自分も歌ってみてその十四
「沙悟浄はクールって感じで」
「クールよりもなんだ」
「愛嬌ある方が好きなの、私は」
「それで猪八戒好きなんだ」
「あれ位の女好きだったら」
まだ、というのだ。
「許せるわ」
「そうなんだね」
「西遊記で一番好きなのは三蔵法師だけれどね」
「あの人だね」
「知的で落ち着いているから」
この人は実在人物だ、唐から天竺まで経典を取りに行って戻ったその旅が「西遊記の元ネタだ。相当凄い人だったらしい。
「好きなの」
「そうなんだ」
「ただ、西遊記は架空だから」
「三蔵法師とかは実在だけれどね」
「だからね」
「まあそこはね」
「わかってるけれど」
それでもというのだ。
「私としてはなのよ」
「狒々は嫌いなんだね」
「猪八戒なら別だけれど」
「けれどヒバゴンはね」
「お猿さんよね」
「伝え聞くところによると」
目撃例をだ、聞く限りサスカッチやビッグフットと同じで大型の類人猿だ。このことから考えてもやっぱり狒々に似ている。
「そうだよね」
「そうよね、じゃあナマハゲね」
「そっちになるんだ」
「私的にはね」
「そうなんだね」
「というか本当に狒々は嫌だから」
コップの中の清酒を飲みつつだ、詩織さんは言った。何か息がどんどんお酒臭くなってきているのは気のせいじゃない。
「それなら猪八戒よ」
「またそう言うんだ」
「そう、狒々よりもよ」
「猪八戒で」
「出来ればナマハゲよ」
「ナマハゲは神様だから」
香織さんもまた言う。
「だからね」
「そう、年神様みたいになればいいのよ」
「広島には年神様のお話はなかったと思いますが」
小夜子さんは首を傾げさせつつ言った。
「それもいいですね」
「そうよね、それじゃあね」
「広島にも新しい年神様が出来ればいいのよ」
「ヒバゴンね」
「未確認動物からそっちに進化よ」
「進化なのかな」
僕はその言葉には少し疑問に思った、だがそれでもだった。
僕達はまだ飲み続けた、落語はまだ続いていたけれど何かもうただひたすら飲む感じだった。とりとめのないお話をしながら。
第八十六話 完
2016・4・3
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