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平成ライダーの世界

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第二十五章

 ナオミですが一見すると可愛いだけの女の子です。しかしです。その髪を見てみるとイマジンが憑依した時の良太郎や桜井と同じものになっています。これは放送当時ネット上でちらほら言われていましたがおそらく彼女はイマジンが憑依しているかイマジンと強い関係があると思われます。しかしそれでもスサノオと戦う側にいます。それは即ちイマジンもまた人間の心を持っているならば人間でありスサノオと戦う立場になるということでしょう。ナオミはストーリーにはあまり関わらずその可愛さを見せてくれる存在でした。しかし彼女もまた中々深い伏線だったのではないかと思います。平成ライダーの世界を考えるうえにおいてです。
 電王の話はこれで終わりとさせてもらいまして次はキバです。今度は父と子の話になっています。平成ライダー九作目にしてこれは随分な冒険をしたものだと驚きましたがこの作品は父親の紅音矢と息子の紅渡、二人の主人公を軸として動いていくお話でした。
 大体において父親の因果が息子によって消されていく、そうしたストーリでした。紅はファンガイアと人間のハーフであり最初から音矢がファンガイアと恋を結ぶということははっきりと示唆されていました。しかしそれはどういった経緯によってか、それが謎でありました。
 この中で紅は名護啓介や彼が所属する素晴しき青空の会と出会います。この会はファンガイアと戦う会です。しかし次第にファンガイアとは何かということを名護をはじめとしてメンバーが理解していきます。このこともストーリーにおいて見所だったのではないでしょうか。
 まずキバの世界は十三の種族、ファンガイアを入れてそれだけの種族がいるとされています。この十三の種族を作ったのもやはりスサノオなのではないでしょうか。
 ファンガイア達も紅を助けるキャッスルドランの中の三人も非常に人間臭い性格をしていました。もっと言えば人間の性格をしていました。つまり人間の心を持っていました。しかし彼等はそのことに気付かず人間を襲いそして人間と戦う。それに対して迎撃する人間。これがキバの基本的な対立の構図です。
 こうした対立の構図を作らせるのはスサノオの常です。とにかく平成ライダーの世界では人間と人間の心を持ち得る姿形の違うもの、この両者の対立が多いです。それはアギトでありオルフェノクでありジョーカーでありワーム、ネイティブです。元々は人間であった存在もいますが基本的にはこう考えていいでしょう。そうした意味でキバの世界もまたスサノオが作り上げた対立の構図の中にあったのです。
 その対立の中で戦う者達の話こそ平成ライダーなのですがキバではそれが親子に渡るものとなっています。それぞれのファンガイアとの因縁、そして名護啓介や登太牙の二人のライダーの過去との関係、素晴しき青空の会とその中心人物である嶋護、先代のファンガイアのクイーンといった面々が過去から因果を引き摺ってきます。この中で名護だけはかなり特殊ですがあえてこの中に入れさせてもらいました。
 過去と現在において戦い続ける彼等ですがその最後で音矢は我が子と会いそのうえで最期の意地を見せ命を賭けてダークキバとなり戦います。そして後を我が子に託して事切れ息子は己がやるべきことを果たします。しかし最後の最後で今度は未来から何と紅の子供が来てネオファンガイアとの戦いに向かうところで幕となります。ですがこれはおそらくファンガイアの因果を全て終わらせる為の戦いでありこれもまたスサノオが仕組んだことなのでしょう。
 僕はキバ篇はそのネオファンガイアの戦いを書きました。ヒーローショーでもこの戦いでファンガイアの因果が終わった流れになっていたと記憶しています。スサノオは人がどう戦い、どう成長しているのかを見るのですからこのネオファンガイアとの戦いもまた必然だったのでしょう。そして紅達はその戦いに勝ち自分達の因果を終わらせました。無論それで終わりではなく彼等が仮面ライダーであるが故にスサノオとの戦いは続きます。しかしファンガイアの因果は紅渡により終えられたのです。
 ここまでお話させてもらったところで人物のお話をさせてもらいたいと思います。まずはこの作品の二人の主人公からです。
 紅渡ですが最初とんでもない登場の仕方をします。仇名がお化け太郎でした。父の作った完璧なバイオリンを自分も作ってみようと何かと変なことをしています。異様なまでに個性の強いキャラクターを出しそれで観る者を最初に惹き付ける井上敏樹脚本の中でも彼はかなり独特な登場でした。
 その彼ですが最初は非常に内向的な人物でした。引き篭もりと言うべき存在であり世話をしている野村静香が色々と気にやむ程です。静香の方が年上なのですが紅はその彼女が保護者的ポジションにいるという頼りないキャラクターでした。そしてキバット三世がいつも傍にいます。彼と共にお風呂に入る場面はキバ全体でよく観られたシーンですがこれは彼とキバットの交流の場面でもあり紅にとっては重要なものであったのではないでしょうか。
 彼はキバットの力によりキバとなりファンガイアと戦います。彼は人間としてファンガイアと戦っていますが彼自身も知っているようにファンガイアとのハーフです。その彼が何故キバとして戦うのか、ストーリーの大きな謎でした。
 これは彼が父の意志を受け継いだからなのですがそれが全てわかるのはストーリーの終盤になってからです。過去で父と出会い父が我が子を知りそしてその意志を受け継いだからこそ。彼は戦っているのです。彼は最初の頃父の話を聞いていきそしてその因果を知り己を見詰めなおしもしてそのうえで徐々に成長して外にも出るようになっていきます。その中で戦いを繰り広げです。名護やかつての親友、実は兄であった登、そして鈴木深央と出会いさらに成長していきます。それと共に彼はさらに強くなっていきます。人の心や温かさを知っていくと共にです。最後には自分がキングになりますがそれは何故かというと兄を守る為でした。ここまで誰かの為に積極的に動くようになっています。そうなったのは彼が人との出会い、別れ、戦いの中で多くのことを知り学んだからです。キバはキャラクターがそれぞれ成長していく物語でもありましたが彼は最も成長したキャラクターでしょう。だからこそキバのハッピーエンドがあったと思います。登場人物達が大切なものを知り成長していったからこそです。当然その中心にいたのは彼です。彼のその運命に立ち向かいそのうえで大切なものを掴み取り大事にしていく、その姿勢が話を動かしていました。 
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