八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十三話 海での午後その十五
「ではな」
「一緒に行こうね」
「そうしよう」
「何かね」
チェチーリアさんはまた言った。
「沙耶香って何でも出来るけれど」
「そうではないが」
「いや、方向音痴なのはね」
「そのことがか」
「玉に傷っていうの?」
日本の言葉だった。
「それ?」
「いや、だからだ」
「だからって?」
「昔から方向についてはだ」
井上さんは苦い声でチェチーリアさんに話した。
「苦手なのだ」
「そうなのね」
「私はな」
「それだったらね」
「案内してくれるか」
「任せてね」
井上さんににこりと笑ってだ、そしてだった。
チェチーリアさんは井上さんをエスコートしていった、二人共後ろ姿のスタイルもよくてそちらも印象に残った。
僕達が見送ってだ、それから。
ふとだ、今度はエリザさんが言って来た。
「いい?」
「いいって?」
「西瓜割りしたいけれど」
「ああ、それだね」
「そう、日本の海ではよくあるのね」
「風物詩の一つだね」
実際にとだ、僕も答えた。
「西瓜割りは」
「それをしたいけれど」
「西瓜あるんだよね」
「安心してくれ」
今度は留美さんが出て来た、白いビキニが恵まれているとしか言い様のないボディを清楚だけれどそれでいて刺激的に映えさせている。
「既に容易してある」
「それじゃあ」
「うむ、皆でやろう」
「西瓜割りをだね」
「これからな」
「わかったよ、それじゃあね」
「その西瓜だが」
留美さんは僕にさらに言って来た。
「実は他の西瓜とは違う」
「っていうと」
「黄色だ」
返事は一言だった。
「クリーム西瓜だ」
「ああ、あの西瓜だね」
「それを用意してあった」
「いいね、ただ西瓜なんてあったんだ」
「実は貰ったのだ」
留美さんは種明かしもした。
「ホテルの方からサービスでな」
「剣道部に?」
「一つの部に一つだという」
「そういえば去年そうだったね」
僕はここで思い出した、このことを。
「一つの部に一個くれたんだ」
「それじゃあ」
「剣道部と一緒にどうだ」
「そうしようか」
「丁度剣道部の面々も来ている」
「じゃあバスケ部、そして八条荘の皆とね」
「西瓜割りをするとしよう」
留美さんは微笑んでだ、僕に言ってくれた。そして実際に西瓜割りを行うことになった。
第八十三話 完
2016・3・9
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