| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十三話 海での午後その十四

「だが酒だ」
「飲んだ後で、ですね」
「海に入るな」
「そういうことですね」
「心臓麻痺になる」
 そんなことをすればだ、実際に海でビールなりお酒を飲んでそのうえで海に入って心臓麻痺で死んだ人がいる。
「酒が入りだ」
「身体が熱くなって」
「それで急に身体が冷えて」
「そこから心臓麻痺になる」
「そうなるんですね」
「サウナでもそうだな」
 このこともだ、井上さんは話した。
「熱のある身体を急に冷やすことは心臓によくない」
「特にお酒が入ってる時は」
「そうなんですね」
「だから海でもですか」
「ビールを飲んだら」
「間違ってもだ」
 それこそというのだ。
「海には入らないことだ」
「井上さんってそうしたこと厳しいですね」
「風紀部だからな」
 それで、という返事だった。
「そのことからも気をつけていてだ」
「それにですか」
「うむ、実際に危ないからな」
「だからなんですね」
「こうしたことはだ」
「気をつけないといけないんですね」
「お酒は私も好きだがな」
 実際に井上さんにしても相当な酒豪だ、八条荘でも結構飲んでいる。日本酒や焼酎なんかもお好きである。
「しかし」
「気をつけることは気をつける」
「そうすべきですね」
「その通りだ、では私もだ」
「何がいいですか?」
「バスケ部のものは飲まない」
 右手で制止する様にして断る仕草もしてきた。
「それは君達のものだからな」
「だからですか」
「美術部の方に行って来る」
 井上さんの所属しているその部活で、というのだ。
「そこのジュースを飲む」
「そうされるんですね」
「だからいい」
「わかりました」
 生真面目な井上さんの言葉に頷いた。
「それじゃあ」
「またな」
「はい、わかりました」
 井上さんの言葉に頷いてだった、そして。
 美術部の方に行く井上さんを見送った、けれど。
 ここでだ、井上さんにだった。
 チェリーリアさん、黒と白のチェス盤の様なワンピースの水着を着た彼女が来てだ。井上さんに言って来た。
「沙耶香美術部まで行ける?」
「話を聞いてたのか」
「その気はなかったけれどね」
 それでもというのだ。
「聞いてたから」
「そうだったのか」
「御免ね」
「いや、それはいい」
「そうなの、それで沙耶香は」
 チェチーリアさんは井上さんにあらためて言った。
「美術部の人達の今の場所知ってる?」
「むっ!?」
 ここで急に止まった井上さんだった。
 そしてだ、無表情でお顔に汗を流しつつ言った。
「そういえばだ」
「知らないよね」
「何処だ」
「沙耶香方向音痴だから」
「そ、それはだ」
 口調も強張っていた。
「何というかだ」
「だから案内するわね」
「美術部のところまでか」
「今からね」
「うむ、済まない」 
 これが井上さんの返事だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧