八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十三話 海での午後その七
「お付き合いっても」
「言わなくてもわかるわよね」
「うん、まあね」
僕もこう答えた。
「感じるよ」
「そうね、じゃあね」
「そういうことでね」
二人で僕に言って来た。
「まあ何ていうか」
「そういうことよ」
「ベトナムとタイはね」
「そうした関係よ」
「そうだね、けれどベトナムの女の人って」
「強いのよ」
ラブポーンさんの言葉だ。
「実際に」
「そうなんだね」
「喧嘩でも強いわよ」
「夫婦喧嘩とかでも」
「もう滅茶苦茶強いわよ」
「それ噂では聞いたかな」
八条学園の中でだ。
「何処かでね」
「それ本当だから」
「やっぱり強いんだね」
「戦争でも出て来るし」
さっきダオさんが言った通りにだ。
「しかもね」
「夫婦喧嘩でもなんだ」
「強いから」
「とにかく女の人が強いんだね」
「猛女揃いよ」
ダオさんの言葉だ。
「ダオのお祖母ちゃんもベトナムで戦ってたのよ」
「ベトコンだったんだ」
「フランスとも中国とも戦ったのよ、夫婦でね」
「夫婦で軍人さんだったんだ」
「ベトコンだったのよ」
軍人さんでなく、というのだ。
「今は二人共悠々自適の生活だけれどね」
「しかもご健在なんだ」
「そうよ」
「二十年は戦って」
「ええ、何か戦友の人達で死んだ人は多いっていうけれど」
フランスとの独立戦争から長い間戦ってきたのだ、それも激しいものを。それなら多くの人が死ぬのも当然のことだ。
「二人はね」
「ご健在で」
「そう、今も元気に暮らしてるわ」
「いいことだね」
「ベトナムはダオが生まれるずっと前はね」
それこそというのだ。
「色々あったのよ」
「あり過ぎた、かな」
「そう言ってもいいわね」
実際にという言葉だった。
「本当にね」
「お祖父さんとお祖母さんも戦ってて」
「フランス、アメリカ、中国ってね」
「よく勝てたね」
「だから必死だったのよ」
どの国も常任理事国だ、特にアメリカなんて言わずもがなの軍事力を持っている。
「ジャングルで街で村で」
「あちこちに隠れて」
「必死で戦ったのよ」
「何時死んでもおかしくなかった戦いを生きてきたんだね」
「そうよ、本当にね」
「ダオさんのお祖父さんとお祖母さんも」
「二人共確かに生きてるけれど」
それでもという言葉だった。
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