八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十三話 海での午後その三
「ですから」
「気になってだな」
「はい」
それで、というのだ。
「少し戻ります」
「わかった、ではな」
「そうしてきます」
「では君は後の方に回そう」
「そうしてくれますか」
「ではな」
こうしてだ、井上さんと早百合さんの話が整うとだった、その早百合さんのところに女の子達が来た。見れば僕が知っている娘もいる。
「部長お願いします」
「ちょっと来て下さい」
「部長も一緒に楽しみましょう」
「ピアノ部の方でも」
「はい、今行きます」
早百合さんもにこりと笑ってだ、そのうえでだった。
ピアノ部の方に行った、僕はその早百合さんを見て呟いた。
「早百合さん人望あるな」
「うむ、彼女は優しく公平だからな」
「それでなんですね」
「人望があるのだ」
「ピアノが上手なだけじゃないんですね」
「しかも教え上手だ」
このこともあってというのだ。
「それでなのだ」
「人望があるんですね」
「そうだ、立派な女性だ」
「立派ですか」
「私はそう思う」
「言われてみれば」
毎日練習は欠かさないし礼儀正しい、実際に誰にでも穏やかで公平だ。
これだけの美点が揃っているならだ、実際にだ。
「そうですね」
「いい人物とは思っていたな」
「はい」
「しかし立派という言葉はだな」
「それは」
「立派という言葉は滅多に使うものではない」
井上さんははっきりと言い切った。
「それ相応でないとな」
「それだけの言葉ですね」
「そうだ、まして彼女は慢心はしない」
「驕り昂ることはないですね」
「それも長所だ」
「それで立派なんですね」
「うむ」
井上さんは強い声で言い切った。
「そう思うからな」
「立派ですか」
「そう言ったし思っている」
「そうですか」
「うむ、私もああなりたいものだ」
早百合さんをかなり認めている言葉だった。
「人柄は違うがな」
「まあそれは」
「人柄はだな」
「人それぞれですし」
それにだった、僕から見て。
「井上さんもいい人ですよ」
「厳しくないか」
「厳しいっていうかしっかりしてますね」
「私はか」
「清潔で凛としていて」
「厳しいと思うがな」
「口調は強いですけれど」
それでもだ、僕が井上さんに受けている印象は。
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