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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十三話 海での午後その二

「それで」
「六人か」
「多いですか?」
「四人がいいのではないか」
 これが井上さんの提案だった。
「この海水浴場でビーチバレーをするのならな」
「人が多いですね、今は」
「そのこともあってだ」
「四人一組で」
「二組で試合をしてだ」
「試合をしないチームは自由行動」
「それでよくないか」
「そうですね」
 僕も言われて頷いた。
「それじゃあ」
「ではくじは私が出す」
「持ってるんですか?」
「作ればいい」
 言ってだ、少し何処かに行ってだった。戻って来て二十数本の細い紐を持って来た。それがくじであることは明らかだった。
「これでいいな」
「そのくじの端が、ですね」
「四本ずつ色分けされている」
 用意よく、というのだ。
「色は赤、青、黄色、緑、桃、黒だ」
「何か戦隊の色っぽいですね」
「好きだからな、戦隊が」
 井上さんはここで自分の趣味も明らかにした。
「毎週欠かさず観ている」
「そうだったんですか」
「録画をしてだ、ライダーも観ている」
「それは本格的ですね」
「両方共非常にいい」
 相当に真剣な言葉だった、井上さんは普段からかなり真面目な人だけれど今回はとりわけ真面目な調子だった。
「学問にもなる」
「そうなんですね」
「人生のな、とにかくその色にしたからだ」
「皆で引けばいいんですね」
「君以外はな」
「あれっ、僕は」
「君の分は用意していない」
 こう僕本人に言うのだった。
「あえてな」
「あえてって」
「今回は女の子同士の勝負だからな」
「二十四人のですか」
「だからだ」
「僕は除外ですか」
「審判役をして欲しい」 
 ビーチバレーのそれをというのだ。
「その為だ」
「ああ、四対四で」
「残りの者は随時休憩だからな」
「それで僕が審判ですか」
「そう思ってだ」
 僕の分は用意していなかったというのだ。
「駄目か」
「まあ僕は」
 そう言われるとだ、僕も。
 考えてからだ、こう言った。
「皆がするのなら」
「頼めるか」
「わかりました」
「それではな」
「何か」
 井上さんが言ったところでだ、早百合さんが来て言って来た。
「それでは義和さんが退屈では」
「むっ、そう思うか」
「はい、あと私少しピアノ部のところに行っています」
「君は部長だからな」
「少しこちらに顔を出し過ぎた感じで」
 ピアノ部部長としての言葉だった、早百合さんは穏やかだけれど実は井上さんと同じだけ生真面目なのでこうしたことは忘れないのだ。 
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