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SECOND

作者:灰文鳥
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第一部
第二章
  第十七話『あれは君の所為なんかじゃない』

 翌日、ぐったりとした翠が登校していた。翠が何とか教室に辿り着くと、幸恵と詩織が声を掛けて来る。
幸恵 「翠、おっはよ。」
詩織 「お早う。」
翠  「うん…お早う。」
幸恵 「何?元気ないじゃん。」
翠  「うん…ちょっとね。」
幸恵 「あっ、分かった。今、陽子と喧嘩中なんじゃない?」
翠  「…。」
幸恵 「だってー、昨日も二人別々に登校して来てたでしょ。」
詩織 「ん?幸恵、何の話。」
幸恵 「ほら、だって昨日なんか陽子、暁美先輩と二人だったし。」
詩織 「陽子って?」
幸恵 「陽子って、空納陽子よ!私達のクラスメイトでしょ。」
詩織 「空納陽子なんて子、うちのクラスにいたっけ?」
幸恵 「何言ってんのよ詩織、小学校の時から知ってて最近一緒にしてるでしょ。翠も何か言ってやってよ!」
 翠は幸恵がまたも陽子の事を覚えていて少し驚いたが、とてもその説明をする訳にはいかないし、それ以上にそんな気持ちにはなれなかった。
翠  「そんな子は…いないよ。」
幸恵 「えーっ!また?」
 幸恵は困惑した。

  ♢

 放課後、幸恵は落ち込んでいた。クラスの中で陽子の事を聞きまくり、挙げ句先生にも尋ねたが結局誰も陽子の事を知らなかった上に、見えないお友達がいる人としてあらぬ疑いを掛けられてしまったからだった。
 詩織はそんな幸恵を見兼ねて、元気付けようと提案した。
詩織 「ねぇ幸恵、翠。帰りに少し遊んで行かない?」
 しかし幸恵は更に暗い顔をして答えた。
幸恵 「私、塾に行かなくっちゃいけないから…」
 幸恵と別れた後、詩織が翠に教えた。
詩織 「幸恵のお母さんって、勉強に厳しいんだよね。」
翠  「でも幸恵って学年で十番台でしょ。」
詩織 「それがねぇ、幸恵によるとトップ3に入らなきゃいけないんだって。」
翠  「ふーん。」
 翠は幸恵がちょっと気の毒に思えた。

  ♢

 ほむらとまどかは別々に学校から帰宅していた。いろいろ勘ぐられるのも面倒なので、クラスメイトには同棲している事はまだ伏せていたのだ。
 先に帰っていたほむらは、帰宅して来たまどかを居間に呼んだ。
ほむら「まどか、ちょっと来てくれる。」
まどか「何?ほむらちゃん。」
 まどかが部屋に入って来ると、ほむらは右手をまどかに差し出して来た。
まどか「え~と…」
ほむら「ソウルジェムを見せてよ。」
まどか「ああ、あれ。あれねぇ…どーこやったかなぁ…」
 まどかはポケットをまさぐり、探すふりをした。しかし、何か誤魔化そうとしているのが見え見えだったので、ほむらは怒った。
ほむら「まどか!ふざけてないで早く見せて。」
 だがまどかは、服のあちこちに手をやって探すふりをするばかりだった。
まどか「あっれ~、おっかしいなぁ。どこかに落として来ちゃったのかなぁ~。」
ほむら「そんな訳ないでしょ、もう!」
 堪忍袋の緒が切れたほむらはまどかに飛び掛かると、彼女の服の中に手を突っ込んで自ら探し始めた。
まどか「ちょっと、くすぐったいよほむらちゃん。いやーっ、あははは…」
ほむら「どこ!どこへやったの!」
まどか「うひゃひゃひゃひゃー…あーもー降参、降参するよー。鞄、鞄の中にあるよー。」
 それを聞いてほむらは手を引っ込めた。乱れた服を直しながら、まどかが言う。
まどか「ほむらちゃんの、エッチ。」
ほむら「なっ!」
 ほむらは思わず赤面してしまった。まどかは鞄から丸めた紙を取り出すと、それを広げ出した。
ほむら「あなたねぇ、これがどれだけ大切な物か…」
まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。なんたってボルトと一緒に握り潰したって、傷一つ付きはしないんだから。」
ほむら「えっ?」
まどか「さあどうぞ、とくとご覧あれ。」
 まどかは紙の中にあったソウルジェムをほむらに手渡した。ほむらはそれをしげしげと見詰めてから言った。
ほむら「これはもう…半分よね。」
 ほむらはホッとすると同時に違和感も覚えた。
 (これでもうまどかは戦わなくてもいい。しかしそれにしても、たった二戦でここまで輝きを失うなんて、いくら何でも消耗が激し過ぎるのではなかろうか?)
ほむら「とにかくキュゥべえに確かめておきましょう。これであなたが戦いの義務から解放されたのかどうかを。」

  ♢

 幸恵が家に帰ると母親が成績の事で小言を言って来た。幸恵は小言を受けながら塾の支度をすると、着替える事もなくすぐに家を出た。嫌な気分になりながら塾へ行く幸恵。
 塾が終わり、ため息を吐いて建物から出ると、へとへとになって帰路に就いた。
幸恵 「人生ってずっと、こんなんなのかなぁ…」
 幸恵は虚無感に襲われた。そして彼女は考える事を止めようと考えた。周りの景色が変わって行く。だが幸恵は何も考えないよう歩いて行く。
 ふと気が付くと見知らぬ、そしてこの世ならざる場所に立っていた。
幸恵 「…ここ、どこだろ?」
 多くの人間がするように後ろを振り返ったが、そこに幸恵が望むような光景は見られなかった。
幸恵 「ちょっとー、誰かいませんかー!」
 幸恵が大声を出して尋ねると、それに応えるかのように魔獣が現れた。そして大半の人間がそうであるように、彼女は逃げもせず魔獣の振り上げた拳をただ見詰めるばかりであった。
 魔獣の拳が振り下ろされる前に、どこかから飛んで来た矢がその魔獣に刺さった。よろめく魔獣に、少年と思しき刀を持った人物が切り掛かり、それを倒した。その時、幸恵はそれを美しいと思った。よく見れば、魔獣は一体ではなく何体もいた。幸恵はその少年と、後から現れたボウガンを持った少女が魔獣達を倒す所を、まるで他人事のようにただ呆然と立ち尽くして見ていた。
 気が付くと現実の世界にいた。幸恵の前には二人の少女がいた。
唯  「もう大丈夫だろ。行こう。」
詠  「そうね、行きましょう。」
 二人の少女が立ち去ろうとした時、幸恵が唯の手を取った。
幸恵 「待って…今のは何?そしてあなた達は誰?」
 唯と詠は少し意外そうに一旦お互いの顔を見合った。しかしすぐに二人は笑顔になると、唯は幸恵の手を丁寧に外し彼女の肩に手を掛けて言った。
唯  「今あった事を明日も覚えていられたのなら、きっとまた会う事になるさ。」
 そして二人は夜の闇の中へ消えて行った。

  ♢

 次の日の朝、幸恵はぼーっとした表情で登校して来た。詩織と翠が挨拶をしても全くの上の空で、明らかに妙な様子だった。
 昼食の時になって、幸恵がポツリと言った。
幸恵 「私、やっぱりおかしくなっちゃったみたい…」
詩織 「どうしたの幸恵、昨日の事気にしているの?それとも別に何かあったの?」
 幸恵は虚ろな瞳を詩織と翠に一度向けると、その二人の中間辺りを見据えて話し始めた。
幸恵 「そうね、陽子の事もあったけど…昨日の塾の帰りの時なんかね、歩いていたら変な所にいつの間にかいたの。そこは何もかもが真っ白い荒野みたいな所で、石柱があっちこっちに生えてて、しかも白い巨人みたいな怪物が襲ってくるのよ。そしたらヒーローが現れてその怪物達をやっつけていって、私を助けてくれたの。」
詩織 「ええ、何それ?夢の話って事なの?」
 幸恵は腑抜けたニタリ顔をして、詩織の方を向いた。
幸恵 「それが夢って感じじゃなくってさぁ…白昼夢って奴なのかなあ、とにかく実体験ぽくって…そんな感じで…はぁ、私もうダメだわ…」
 そう言うと幸恵は突っ伏した。詩織はそんな幸恵を心配していたが、翠は一つの確信をしていた。
 放課後、翠は幸恵に大切な話があると言って人気の無い場所へ連れ出した。
幸恵 「翠ぃ、私今日も塾があるからぁ、手短にしてよね。」
 幸恵は翠の方を見ず、俯き加減にそう言った。
翠  「…幸恵、落ち着いて聞いて。まず空納陽子の事だけど、確かについこの間まで存在していたよ。それから巴先輩も実存していたし、あなたの昨日の体験も実際にあった事なの。」
 それを聞いても幸恵は何とも思わなかった。どうせ翠は自分を励まそうとして合わせているだけなんだと思ったのだ。
翠  「白い巨人って仏教の僧侶みたいだったでしょ、それは魔獣って言うの。そしてあなたが迷い込んだ場所は白い砂地に、白い石灰岩みたいなもので出来た四角柱の塔が不規則に立っていたでしょ。そこは魔獣空間て言って、その魔獣達の特殊な異空間なの。」
 幸恵の顔が上がる。
翠  「その空間に入り込む直前、あなたは何か嫌な事や不安な事とか考え込んでいなかった?魔獣達はねえ、人間の負の感情が具現化したものなの。そして不安や不満といった負の感情を強く持った人間を、自分達の空間に取り込んで殺そうとするの。」
 幸恵は何か言いたげな顔をした。
翠  「そんな魔獣達と戦う者がいるの。あなたを助けたって人もそうなんだけど…それが魔法少女と呼ばれる者なの。」
 幸恵は頬に手を当てて、少し考えてから言った。
幸恵 「私ね…」
翠  「うん。」
幸恵 「翠、私ね、その話、突拍子も無いし非科学的だし、正直嫌いなぐらいなの。」
翠  「…」
幸恵 「でもね、不思議なまでに今は信じられるのよね。私から質問してもいい?」
翠  「うん、いいよ。」
幸恵 「その魔法少女って、何者なの?」
翠  「う、うん。それはね…」
 翠は少し躊躇したが、ここまで来ては引き返せない。 
翠  「魔法少女はね…まあ…何ていうか、人がなるものだよ。生まれついてその資質を持った選ばれた子がインキュベーターのキュゥべえと契約して、願い事一つと引き換えに命懸けの戦いの運命を受け入れるとそれになれるの。」
幸恵 「インキュベーターのキュゥべえって?」
翠  「えーっと…宇宙生物って言ってたかな…見た目は猫ぐらいの白い小動物で、口を開けずに話をするの。」
幸恵 「魔法少女ってあのでかい奴ら、魔獣ってのと命懸けの戦いをしているのよね。」
翠  「ええ。」
幸恵 「じゃあさぁ、死んじゃう子もいるって事よね。」
翠  「うん、そう。」
幸恵 「じゃあ、魔法少女が死ぬとどうなるの?」
翠  「魔法少女の死には二種類あるんだ。一つは普通に、と言ったら変だけど、体に大きなダメージを受けて死んでしまう死と。もう一つは魔力を使い果たしてしまい、円環の理というものに従ってこの世界から消えて無くなるって死。そしてそのどちらの場合でも、死んでしまった魔法少女の事は普通の人の記憶と記録から消されてしまうの。」
幸恵 「じゃあ、巴先輩と陽子って…」
翠  「うん、魔法少女だったよ。」
幸恵 「それじゃあ、それを知ってるあなたも…」
翠  「ええ、そうよ。」
 幸恵は横を向いて腕を組むと、呟くように言う。
幸恵 「なぜ私に、そんな話をしてくれるのか…」
 そして我が意を得たりとばかりにニヤリとして続ける。
幸恵 「それはこの私が、資格を持った選ばれた人間だからなのね。」
 翠は微かに頷いた。
 幸恵はすっかり自信を取り戻し、いつもの少し挑戦的な幸恵になっていた。
幸恵 「も一つ聞くけど、魔法少女って男子もいるの?」
翠  「ええっ!?…ちょっと分からないけど、私が知る限り男子っていないし…多分魔法少女って言うぐらいだから女子限定なんじゃないのかなぁ。歳も私達くらいの子だけだと思うし…」
幸恵 「でも私を助けてくれた人って、カッコいい少年みたいだったよ。」
翠  「それって…ひょっとして学ランみたいな服装で、日本刀みたいな武器を持ってた?」
幸恵 「そう!それ!」
翠  「ああ…きっと唯さんの事ね。」
幸恵 「知ってるの!?」
翠  「ええ、静沼中の二年の人で、私達の仲間よ。」
幸恵 「ねぇ翠、お願い!その人に会わせて、ねえねえ!」
翠  「いい…けど…」
 翠は急に自分が余計な事をしたような気がして、少し後悔した。

  ♢

 翠が夜の公園に招集を掛けると、他の魔法少女から異論は出なかった。翠は幸恵と共に真っ先に公園に行ってみんなを待った。
 最初にやって来たのはほむらとまどかだった。ほむらは幸恵を見て言った。
ほむら「翠、その子はどうしたの?」
 翠が答える前に、突如出現したキュゥべえが割って入るように答えた。
キュゥべえ「彼女は有資格者だよ。」
 キュゥべえの出現に一瞬で幸恵への興味を失ったほむらは、さっそくまどかの事を尋ねる事にした。
ほむら「丁度よかったわキュゥべえ。あなたに話があるのだけれど。」
キュゥべえ「うん、分かっているよほむら。でもその話は、みんなが揃ってから言った方が、手間が省けていいだろう。」
 ほむらを見て幸恵は、はしゃぐように翠に聞いた。
幸恵 「ねえ翠、巴先輩だけじゃなく暁美先輩も魔法少女って事は、やっぱり鼎麻衣も魔法少女だったりするの?」
翠  「えっと…それ誰?」
幸恵 「何言ってんのよ、私達一年生の学年トップの子じゃない。」
翠  「へぇー。でも私の知ってる魔法少女の中にそんな子はいないよ。」
幸恵 「そう…なんだ…」
 幸恵は少しがっかりした。そこへ唯と詠がやって来た。
唯  「おっと、今日は僕らが最後になったか…」
 唯は何気にほむらの方を見て言った。その唯を見て幸恵が前に出る。
幸恵 「あの…唯さんで宜しいんですか?私です、昨日助けて頂いた。鳴子幸恵って言います。」
唯  「ああ、君か。」
幸恵 「私、忘れずに覚えていましたよ。」
唯  「フッ。だから言ったろ、もし覚えていたらまた会う事になるって。」
幸恵 「そうですね…ええそうです、またお会いできました。」
 幸恵はうっとりするように唯を見詰めた。
翠  「さあ、幸恵。唯さんにも会えたんだからもういいでしょ、今日はもう帰った方がいいんじゃない。あなた遅くなったら不味いんでしょ。」
 幸恵は現実に引き戻されて、残念そうな顔をした。
幸恵 「うん、そうだね…。翠、今日はありがとうね…」
唯  「おいおい翠、それはちょっと酷いんじゃないのか?もうすっかり暗くなったってのに、普通の女の子に一人で帰れなんて少し無責任なんじゃないのかい。」
翠  「でも、いつも塾の帰りは一人だろうし…」
唯  「その一人の時を魔獣に襲われたばかりなんだぜ。」
翠  「そうだけど…」
ほむら「ちょっといいかしら?」
 ほむらは待ち切れないとばかりに発言した。
ほむら「キュゥべえ、まどかのソウルジェムの輝きが半分になったわ。約束通りもうまどかを戦わせないでもいいでしょ、確かめて。」
 ほむらはまどかに目配せをしてソウルジェムを見せるように促した。まどかもそれに従ってジェムを出そうとするが、キュゥべえはそれを見ようともせずに答えた。
キュゥべえ「ああ、僕はいいよ。」
 あまりにあっさりと了承した事に、却って心配になったほむらはキュゥべえに確かめた。
ほむら「契約ではまどかの通学についての許可というか支援というか、そういったものはそのまま受けられるって聞いていたけど…」
キュゥべえ「勿論さ。彼女が望む限りに通学するといい。その為の手続き等の支援は契約通りずっとし続けるよ。」
 ほむらは念の為に、他の魔法少女にも確かめた。
ほむら「みんなもいいかしら?誰かまどかの離脱に異議があるなら、今の内に言って。」
 翠と詠は当然のように無かった。問題は唯だが、ほむらは唯の方を見た。
唯  「俺は構わないぜ。」
 ほむらはホッとした。しかしすぐ、もう一人確かめておくべき人間がいる事に気付いた。
ほむら「まどかもいいわね。」
まどか「うん、分かってるよほむらちゃん。」
 ほむらが自分の用は済んだとばかりに口を閉じると、今度は自分の番だとばかりに唯が口を開いた。
唯  「提案なんだけどー、やっぱ魔獣狩りをすべきなんじゃないかなあ。同時多発的に魔獣が現れるのに個別対応して行くのは、やっぱり効率が悪いと思うんだよねぇ。」
 唯はみんなの反応を確かめるように見回した。あまり反応は良くない感じだったが、唯は続けた。
唯  「対処療法的個別対応ではどうしても取りこぼしが出ちまうよな。だから集雷針宜しく我々魔法戦士が魔獣達を引き付ける意味からも、狩りをした方が良いと思うんだよね。何たって我等の使命は魔獣達から人々を守る事なんだからさ。」
 キュゥべえが小声で呟く。
キュゥべえ「本当は違うんだけどね。」
 〝魔法戦士って…〟と、他の魔法少女達は思った。
 その時、幸恵がパチパチと手を叩きながら唯を称賛した。
幸恵 「さすが唯さん、それは素晴らしい考えだと思います。」
 唯は〝ありがとう〟とばかりに幸恵に向かって軽く手を挙げて応えた。ほむらはまどかの件で気を好くしていた。
ほむら「私は構わないけど。」
 唯は促すように詠に視線を送った。
詠  「私も構わないけど、翠はどう思うの?」
唯  「ああ、そうだ。リーダーの翠が決めてくれよ。」
 翠がリーダーと聞いて、幸恵は驚いた顔で翠を見た。
翠  「私はみんなが狩りをしようって言うのならそれに従うよ。それよりも私はリーダーとして失格だから、他の人がやるべきだと思うんだけど…」
 詠は迷った。唯にリーダーをさせる事だけはとにかく避けなければならない。順番で行くと自分だが、経験的な面からもほむらにやって欲しい所ではあった。自分が立候補するべきか、ほむらを推薦するべきか、詠は迷っていたのだ。
唯  「何言ってんだよ翠。この前の陽子の事を気にしてんのか?あれは君の所為なんかじゃないよ。俺達も出来るだけ守り立てるから、君ももう少し頑張ってみせろよ!」
 この唯のまさかの真っ当な意見は場を支配した。
 しかしその時、幸恵が口を挿んで来た。
幸恵 「あの、私思うんですけど…唯さんがリーダーになれば良いんじゃないですか?」
 〝このバカは何言っちゃってくれちゃってんだよ!〟と、詠とほむらが思っていると、よもやの正論が再び唯の口から放たれた。
唯  「幸恵ちゃん、すまないが今の君は部外者なんだ。だからごめんよ、口を挿まないでおくれ。それで翠はどうするんだい?」
 翠は複雑な思いだったが、ほむらと詠が〝リーダーを続けてくれるのなら、是非そうして欲しい!〟という目をして見詰めて来るので、続投する事にした。
翠  「それなら…もう少しやってみる…」
唯  「ああ、それがいい。ところでほむら、まどかの最後の仕事として幸恵ちゃんを家まで安全に送り届けて欲しいんだけど、どうだろうか?」
ほむら「ええ…それぐらいなら構わないわ。まどか、いい?」
まどか「うん、任せて。」
唯  「じゃあ我々は早速、魔獣狩りに行くとしようぜ、翠。」
翠  「えっええ…そうしましょうか…」
 詠はすっかり場を仕切ってしまっている唯に不安を覚えた。
 
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