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FGOで学園恋愛ゲーム

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九話:男達の会議


 夏期講習も午前中に終わり、生徒が部活に遊びにと精を出す昼下がり。
 喫茶店『アーネンエルベ』の片隅で男達は隠れるように集まっていた。

『みんな、今日は俺のために集まってくれてありがとう』
「他ならぬぐだ男の頼みだ。俺達で相談役になれるのなら是非もない」
「ええ、力になれるのであれば喜んで」
「フン、貴様が導いて欲しいと言うのなら……導いてやろう」

 席の中心でぐだ男が集まってくれた友人に頭を下げる。
 ジークフリートはそれにイケメンな対応をし。
 天草は聖人スマイルで応え。
 エドモンは皮肉気な笑みを浮かべながらもウキウキとした様子を見せる。

『今日はみんなに……恋愛相談をしたいんだ』
「ほう、お前がか? 何をしなくとも女を落としかねないお前が相談とはな」
「それでお相手は誰なのですか?」
「相手が分かれば的確な支援もできる。決して他言はしないから安心してくれ」

 人誑しのぐだ男から出た意外な相談に興味を惹かれる三人。
 そんな三人の対応に気恥ずかしくなりながらも彼は息を吸い込み彼女の名前を吐き出す。

『俺……ジャンヌのことが好きなんだ』

 意を決して吐き出した言葉に三人はそれぞれ違う反応を示す。
 天草は相変わらずの笑顔で受けとめ。
 ジークフリートは真剣な表情で頷き。
 エドモンは何とも言えぬ顔で固まる。

「……あの人間要塞を好きになったのか?」
『うん』
「あれは女というには余りにも硬すぎるぞ?」
『だとしても、好きなんだ』

 ジャンヌに対して余り良い感情を抱いていないエドモンは警告をする。
 だが、ぐだ男の意志は変わらない。それを悟ったエドモンは溜息を吐き深く座り込む。
 そして、店員に追加の注文を行う。

「ウェイター、彼にコーヒーを!」
『ミルクたっぷりでお願いします』

 やけに堂に入った注文とマイペースなぐだ男の発言にウェイターは苦笑いをする。
 しかし、それもほんの一瞬ですぐにカウンターの奥に消えていく。

「そこまで言うのなら俺も手伝ってやろう」
『ありがとう、エドモン』

 親友を嫌いな人間に渡すのが嫌なのかイライラとした表情を見せるエドモン。
 だからと言ってぐだ男の意志を否定したりすることはなく相談に応じる姿勢を示す。

「頼りないかもしれないが、俺も微力ながら力になろう」
「私もお手伝いしましょう」
『恩に着るよ。ジークフリート、天草』

 他の二人も快く協力を申し出てくれる。
 ぐだ男はそんな友人達にお礼を述べつつ自分は恵まれているなと実感する。

『それでなんだけど、どうすればジャンヌと距離を縮められるかな?』
「俺の浅い経験からはこの程度のことしか言えなくてすまないが、プレゼントなどはどうだ?」
『プレゼントかぁ…』

 ジークフリートからの提案になるほどと頷くぐだ男。
 オーソドックスではあるが明確に好意を伝えるには良い方法だろう。

『ところでジャンヌの好きな物ってなに?』
「すまない。そこは俺にはわからない。天草、お前ならわかるのではないか?」
「彼女の好きなものですか……」

 しかし、ジャンヌの好きな物が分からなければ意味がない。
 そこで最も彼女といる時間が長い天草に尋ねてみるが彼はどうしたものかと頭を悩ませる。

「彼女は大抵のものは嫌いませんから、特別なものと言われると……思いつきませんね」

 彼女は大抵のものを嫌わずに受け入れる。
 それ故に特別なものとなると答えが出てこなくなるのだ。

「別にそれだけに答えを限定する必要はない。ぐだ男、お前ならば特別なことをする必要はない」
『それで大丈夫なのかな?』
「お前の魅力は誰とでも信頼関係を築けることだ。それが悪人であれ善人であれな」

 届いたコーヒーをちびちびと飲みながらエドモンの言葉に耳を傾ける。

「誰の傍にいてもおかしくなく、誰の傍にいても許される。一種の才能だな」
『そうなんだ』
「自身は気づかないのも特徴だが、まあ、それはいい。とにかく、お前は特別なことをしなくていい。誰の傍にでも居られるお前が特定の人間の傍にいる。それだけで十分だろう」

 語り終えて満足したのか自身のコーヒーを啜るエドモン。
 一方のぐだ男は納得したような、納得してないような表情を見せる。
 彼は普通の人間だ。誰にとってもそこに居て普通だと思わせる平凡な人物。
 だが、そんな普通な人間だからこそ誰かにとっての特別な存在となることができる。

『じゃあ、ジャンヌと一緒に居られる時間をもっと作ればいいの?』
「それでしたら、私に考えがあります」
『どんな作戦?』

 ぐだ男の言葉に閃いたとばかりに手を打つ天草。
 何となしにその仕草を不安に思いながらも彼は尋ねてみる。


「ジャンヌに生徒会長の座から降りてもらうのです」
『却下』


 バッサリと切り捨てるぐだ男。
 しかし、天草は何が悪いのか分からない顔をして説明を続ける。

「何故です? ジャンヌは自由な時間を手に入れられ、私は生徒会長の座につける。さらにあなたは落ち込むジャンヌの傍に居て好感度を上げられる。俗に言うWinWinというものですよ」
『物は言いようだね』

 天草に白い目を向けながら温くなったコーヒーを啜る。
 彼は100%善意でこうした外道な作戦を思いつくのだから末恐ろしい。

『ジャンヌを傷つけるような策は無しの方向で』
「良い案だと思うのですが……」
『ジャンヌを泣かせるぐらいなら一生嫌われた方がマシ』

 なおも自身の案を通そうとする天草だがぐだ男の覚悟を見て諦める。

「分かりました。では、他の策を考えるとしましょうか」
『うん、ありがとう』
「それならば、ストレートにデートにでも誘ってみればどうだ? 俺にはこの程度しか思いつかなくてすまない」

 今度はジークフリートが案を出す。
 基本的に控えめな正確なジークフリートではあるがここぞの時の思い切りの良さは素晴らしい。
 しかしながら、誰にでも彼と同じことができるとは限らない。

『いきなりハードルが高くない…?』
「何を今さら。女と二人きりなどお前なら幾らでも経験があるだろう」
『いや、あれは友達としてだから……いざ誘うとなると』

 若干皮肉気に告げるエドモンであるが当の本人は顔を覆って恥ずかしそうにするばかりである。
 普段通りであれば平然と女性と二人きりでも乗り越えられるぐだ男だが本命相手には勇気が出てこない。

「すまない。やはり俺の案では無理があったか……」
『いやいや、ジークフリートじゃなくて勇気のない俺が悪いんだし』

 自分の案で相手を不快にしてしまったと落ち込むジークフリートを宥めながらぐだ男はどうしたものかと考える。そこへ新たなる助っ人が現れる。
 

「よっ、恋のお悩みなら相談に乗るぜ」
『キャスニキ……盗み聞きはよくない』
「人聞きが悪いこと言うなって。偶々聞こえただけだよ」


 ここ、アーネンエルベでバイトをするキャスター・クー・フーリン。
 略してキャスニキがぐだ男の肩をポンと叩いてくる。

『……誰にも言わない?』
「ああ、ゲッシュに誓ってもいいぜ?」
『破ったら犬料理フルコース+激辛麻婆豆腐十皿ね』
「サラッとエゲツねえこと言うな、お前!?」

 新たなるゲッシュを誓わせつつぐだ男は本題に戻る。

『それで何かあるの?』
「いや、普通に女口説けばいいんじゃねえか? お前なら難しくねえだろ」

 何とも簡単そうに口説けと言ってくるキャスニキ。
 確かに正論ではあるがそれができればこんなところで悩んでなどいない。
 しかしながら、一応尋ねてみるぐだ男。

『例えばどんなの?』
「お前の心臓(ハート)にゲイボルグ! …てのはどうだ」
『でも、キャスニキ槍持ってないよね?』
「ミディアムかウェルダン。好きな焼かれ方選びな」

 キャスニキがクー・フーリン兄弟の中で唯一槍を持っていない。
 普通に扱えるのだが何故か持っているのは杖といういじめ状態。
 それ故に彼の前で槍の話は禁句だ。

『レアでお願いします』
「たく…それだけ度胸があってなんで女一人口説けないのかねえ」
『本命には難しくなる。キャスニキだってエメルさんは口説けてないでしょ』
「あー……ナンパしたらビンタで追い返されたな、そう言えば」

 ぐだ男の言葉に納得を示すキャスニキ。
 エメルという女性にアタックをしているのだが軽くあしらわれている。
 彼女曰く『誉の一つもないガキの炉端に行く気はない』そうだ。

「でもよぉ、何もしなけりゃ何も起きないぜ?」
『困った』

 為せば成る、為さねば成らぬ何事も、と言うように動かなければ何も始まらない。
 世の中とはままならないものだと頭を抱えるぐだ男。
 そんな彼の元に更なる助っ人が現れる。

「何やらくだらんことで悩んでいるようだな―――雑種」

 黄金の髪に深紅の瞳。身に纏うは黄金の鎧、ではなく黒のライダースーツ。
 暴君の代名詞にして、全てを見通す叡智を携えた存在。
 その名も―――


『キャスニキ、コーヒーお代わりちょうだい』
「はいよ」
「ええい! この英雄王ギルガメッシュを無視するか雑種!」


 ギルガメッシュ。何かと尊大な態度で接してくるぐだ男の先輩である。

『凄過ぎる王気(オーラ)にあてられておかしくなっただけです』
「ハッ、我の目は誤魔化せんぞ? だが、我の王気(オーラ)を感じ取ったことだけは真か。よい。此度の無礼、貴様の道化ぶり(・・・・)に免じて特別に許してやろう」

 我こそがルールだとでも言わんばかりの横暴な態度でぐだ男を許すギルガメッシュ。
 その態度にエドモンやキャスニキは嫌そうな顔を見せるが彼は気にも留めずにどかりと椅子に座る。

「それにしても、貴様が恋とはな。身に過ぎたものを求める人間はすべからく愚かだが、それはそれで愛でようもあるというものだ。光栄に思え雑種。この我自らが道を示してやろう」
『嫌な予感……』

 どこまでも自身に満ち溢れた顔で語っていくギルガメッシュ。
 ぐだ男は直観的にこれはダメだと悟りながらも聞いてみる。

「男子が媚びを売るなど言語道断。男ならば力強く、かつ簡潔に言えばよい。
 ―――我のものになれ、セイバー! …とな」

『ナイワー、ショウジキナイワー』

 余りにも自己中心的な言葉にドン引きするぐだ男。
 恐らくそれを言われたセイバーという女性も聖剣が滑るぐらいにドン引きしただろう。

「分からぬか? フッ。確かに、雑種には些か荷の重い言葉やもしれぬな」
「分かりたくもねえだろーよ、普通」
「ほぉ……狂犬風情が吠えるではないか? いや、貴様は()を持たぬ故に羊か」
「あ? 喧嘩なら買うぜ、金ピカ野郎」

 一触即発の空気が流れキャスニキとギルガメッシュが向かい合う。
 ぐだ男達は巻き込まれては大変とそそくさと退散を始めるのだった。
 因みに騒ぎに駆け付けた悪役ボイスの店長に二人揃って焼きを入れられたらしいが自業自得というものだろう。

「まったく、とんだ邪魔が入ってしまったな」
「ええ、本当に困ったものですね」
『これからどうしようか』

 エドモンと天草に同調しつつぐだ男は頭を悩ます。
 今までは自然に接することができていたが、いざ意識すると今まで通りに出来るか分からない。
 明日からどんな顔をして会えばいいのかと頭を悩ませているところへジークフリートが声をかけてくる。

「思ったのだが、恋人のいない俺達で話すよりも恋人がいる人間に聞いた方が有用な意見を得られるのではないか?」
『――あ』

 その手があったかと三人同時に手を叩くのであった。
 そして、思い立ったが吉日とでも言うように彼女持ちで名高い二人を集めてみせた。
 良い意味でも、悪い意味でも。


「余とシータの馴れ初めが聞きたいのだな?」

「我が最愛のネフェルタリとの話を聞きたいと言うか、よかろう」


 ラーマとオジマンディアス。
 一人称が余であると同時に愛妻家であるという共通点がある二人だ。
 この二人であれば有用な話をしてくれるに違いないと思いぐだ男は二人を呼んだ。

「まず、余とシータの出会いは―――」
「ネフェルタリは余にとって―――」

 初めは穏やかな口調で話し始めた二人であった。
 しかし、時間が経てば経つほどに状況は変わってくる。

「シータの愛らしいところはだな―――」
「ネフェルタリは愛らしいだけでなく勇猛果敢であり―――」

 既に一時間ほど経過しているが二人の話の勢いに陰りはない。

「見た目だけではない。シータは余に一途でいてくれるのだ!」
「余には数多の女がいるがネフェルタリへの愛は微塵も揺らがぬ!」

 三時間が経過し、ぐだ男達の目が死んでくる。

「シータこそが世界最高の女性だ!!」
「それは己の中だけであろう。ネフェルタリに勝る女などこの世にはいない!!」

 六時間が経過し、ぐだ男達は魂が抜けたような顔で話を聞かされ続ける。
 現在、二人はどちらの嫁が最高かの激論に突入している。
 いつ終わるかは分からない。
 ただ、ハッキリしていることは一時間や二時間で終わるはずがないということだけだ。

『ごめん、みんな……。この二人を選んだ俺が間違ってた』
「いえ…あなたは…決して…間違いではありません」
「間が……悪かった…だけだ」
「エデ……俺は…帰れそうもない」

 全員が戦闘不能のグロッキー状態になりながら悟る。

 何でもかんでも人に頼ると碌な目に合わないと。
 
 

 
後書き

ヒロイン不在どころか野郎オンリーの話を書くという軽い暴挙に出たけど後悔はない。
大丈夫、ちゃんと水着イベントはこっちでもあるし。
次回以降にToLOVEるな展開もあるから心配しないで。

 
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