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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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その子誰?

 
前書き
休みが・・・休みが終わるぅ!!
シリル「ずいぶんと長いね」
レオン「休みすぎなんじゃね?」
まぁ・・・月曜から仕事ちゃんとできるか不安はあるな・・・
シリル「もうダメかもね」
レオン「てか俺らも言うほど働いてはいないよな?」
シリル「た・・・確かに・・・」 

 
その日の夜・・・

「「ただいまぁ!!」」

家の扉が開いた音がしたかと思うと、靴を脱いで二人の少女がリビングにやってくる足音が聞こえてくる。

「今帰ったよ!!」
「お待たせ!!」

両手に紙袋をたくさん持っている彼女たちは、満足げな表情なのを見ると、有意義な一日を過ごしたのだと推測することができる。

「あぁ・・・」
「おかえり・・・」

対してこちらはレオンも俺も死にそうな目をしている。それを見た二人は、楽しげだった表情から一転し、心配そうにそれぞれの幼馴染みの横にやってくる。

「どうしたの?シリル」
「具合でも悪いの?」

覗き込むように顔を見つめるウェンディとシェリア。彼女たちは何があったか知らないため、このような反応をしているのだ。

「いやぁ・・・色々あってね」
「色々って?」
「俺らが悪いから仕方ないんだよ・・・」
「レオンが自分の非を認めるなんて珍しいね」

ソフィアへのドッキリが終了した後、カグラさんに通信用魔水晶(ラクリマ)を通してすごい怒られた。その後、リオンさんにも同じように怒られて、身も心も疲れきった俺たちはリビングのテーブルで力尽きでいたのである。

「そうだ。俺ら明日人魚の踵(マーメイド)に手伝い行ってくるから」

本当は今日の行いの罰として行くのだけれども、手伝いと言っておけば二人から怪しまれることもない。物はいいようである。

「え?人魚の踵(マーメイドヒール)に?二人だけで?」
「なんで?あそこ男子禁制でしょ?」

しかし、ギルド名を出したことが間違いだった。女性限定のギルドである人魚の踵(マーメイドヒール)に、俺とレオンが行くなんて明らかにおかしい。だって二人とも男だから、そのギルドに手伝いに行くなんて向こうにはメリットがないからだ。

「えっと・・・」
「ひ・・・人手不足らしくて・・・」

彼女たちのもっともな疑問に言葉を詰まらせていると、レオンが助け船を出してくれる。彼の理想的な判断に思わずナイス!!とか思っていたのに、その判断が悪い方へと傾いてしまう。

「人が足りないなら私たちも行こうか?」
「うん!!それがいいよね!!」
「「・・・へ?」」

彼女たちは他のギルドが困っているとあって放っておけないらしい。だけど、その申し出は受けていいのかわからない。だって、明日は俺たちはタダ働きなのだから、彼女たちを巻き込まないようにした方がいいのである。

「い・・・いや、大丈夫だよ!!」
「俺らだけで行ってくるからさ!!」

二人が来てしまうと俺たちが今日何をやっていたのかバレてしまう。それを聞かれたら、軽蔑の目で見られそうな気がするので、なんとか避けたいところなんだけど・・・

「え?なんで?」
「二人とも今日変だよ?」

なんで自分たちが付いていってはいけないのか、不思議そうな目でこちらを見つめるウェンディと、いつもなら言わないようなことを連発していることで、さすがに怪しいと勘づき始めているシェリア。

「ナ・・・ナンデモナイヨ・・・」
「おま・・・慌てすぎて片言になってんぞ」

誤魔化そうとした結果が裏目に出てしまった。違和感がないようにと思った結果、逆に言葉使いがおかしくなっている。

「「じーっ」」

慌てすぎた俺を見て、二人が目を細めている。どうしよう・・・ソフィアにドッキリして、その結果人魚の皆さんを気絶させてしまい、カグラさんに強制的にギルドの手伝いをさせられることを正直に話した方がいいんだろうか?

「ハッ!!もしかして・・・」

話すべきか話さぬべきかで迷っていると、ウェンディが俺たちが頑なに拒む理由に気付いたらしく、口を手で覆い、涙を目に溜めている。

「シリルたちはソフィアのお嫁さんになるつもりなの?」
「いや待て!!」
「おかしい!!どこをどうしたらその考えになった!?」

だが、思い付いたものが正解だとは限らない。てんで外れている予想をした天竜は、俺たちの突っ込みが耳に届いていないのか、何やら泣きそうな表情でこちらを見つめていた。

「レオン!!あたしよりもソフィアの方がいいの!?」
「落ち着けシェリア!!」

そして隣にいる少女までもがその何の脈略もなく出てきた言葉を信じ、レオンの胸ぐらを掴みブンブン振り回している。彼も誤解を解こうと必死だが、二人は全然聞いてくれない。

「わかった!!話す!!話すから!!」

シェリアがレオンを振り回していることで顔が青くなってきていたため、彼女を止めるためにもと思い、正直に話すことに決めた。それを聞いてシェリアもウェンディもこちらに耳を傾け、レオンもようやく解放され、体に酸素を取り入れ吐き気を納めている。

「実は・・・」

今日ウェンディたちがショッピングに出かけてからのことを話していく。レオンをびっくりさせたことやレオンがドッキリを仕掛けてきたことやソフィアにそれを仕掛けたこと。特に最後のソフィアにドッキリを仕掛けた際に、周りの人たちまで気絶させてしまい、カグラさんの逆鱗に触れ、明日二人で彼女たちに迷惑をかけた分を返しにいくことになったことを。

「なんだ、そういうことか」

事情を聞かされたシェリアは、自分たちの予想が間違っていたことを知り、笑顔でそう答える。

「よかったぁ、シリルが浮気でもしてるのかと心配になっちゃったよ」

中でも一番安心しているのはこの少女なのかもしれない。ウェンディは胸に手を当て、俺があらぬことをしていなかったことに安堵し、一つ呼吸を漏らしている。

「ひどいよウェンディ、俺がそんなことするわけないじゃん!!」
「うん、ごめんね」

ちょっと頬を膨らませて怒っている風に見せると、天竜は手を合わせ謝罪してくる。まぁ、紛らわしいことをした俺たちにも非があるわけだし、責めることはできないけどね。

ガチャッ

そんな感じで事態が集束しようとしていた頃、玄関の扉が開かれた音が聞こえてくる。

「あ!!セシリーたち帰ってきた!!」
「そういや忘れてたな、あいつらのこと」

時刻は夜の八時を回っている。ウェンディとシェリアが出かけたすぐ後に三人でどこかに行ってしまったセシリーたちは、お昼に帰ってくることもなく、たった今帰ってきたようだった。

ドタドタドタドタ

玄関の扉が閉まったかと思うと、誰かがドタドタとこちらに向かって走ってきている音が聞こえる。その音の大きさはラウルかな?ラウルは俺やウェンディと同じくらいの背丈の男の子になれるから、これくらいの音は普通に出せると思う。

バタンッ

「おかえり、遅かったn・・・」

リビングの扉を開けた三人の方に視線を向け出迎えようとした。しかし、扉のところにいる見たこともない茶髪の少女を見て、全員口を開いたまま固まってしまった。

「ただいま~!!」

元気に挨拶を返してくるその少女は、レオンとシェリアくらいの背丈をしており、元気いっぱい天真爛漫といった感じの印象を俺たちに与えた。

「誰?」
「知り合い?」
「見たことある?」
「知らない知らない」

ウェンディ、シェリア、レオンがなぜか俺の方にこの少女のことを聞いてくるので、ブンブンと首を横に振り、知らないことをアピールする。

「あ!!シリル~!!」

すると、見たことのないその少女は、俺の顔を見るやすぐさまこちらに駆け寄って飛び付いてくる。

「ただいま~!!シリル~!!」

ムギュウと体を寄せてくる茶髪っ娘。その際、彼女のシェリアやソフィアくらいの大きさのある胸が腕に当たり、ドキッとしてしまう。

「シリル・・・その子誰?」

柔らかな感触に心を奪われそうになっていると、隣からバトルでも始めるのではないかというほどの凄まじいプレッシャーを放ちながら、天空のドラゴンが声をかけてくる。

「え!?待ってウェンディ!!ホントに知らないんだって!!」
「ウソ!!知らない子がシリルなんかに抱き付くわけないじゃん!!」
「なんかって何!?どういうこと!?」

全く心当たりのない少女がまるで知り合いかのように振る舞っていることに戸惑いながらも、誤解を解こうと懸命に少女に訴える。

「えぇ!?ひどいよシリル~!!一緒のベッドで寝てたのに~!!」

しかし、その少女はあろうことかそんなデマカセの話をし出し、場の空気が凍り付く。

「シリル!!その子と寝てたっていつ!?マグノリアにいた時!?」
「知らないって!!君もそんなウソつかないでよ!!」
「ウソなんかついてないよ~!!本当のことだよ~!!」

ウェンディとよくわからないタレ目の少女二人に顔を近付けられている状況。ここから見た人は羨ましいと思うかもしれないけど、心当たりのない俺にとっては誰か助けて状態なのである。

「セシリー!!いい加減にしなさい!!」

身に覚えのない罪を擦り付けられようとしていたその時、廊下の方から一人の少女の声が聞こえてきて、全員がそちらを向く。

「「「「誰!?」」」」

しかし、またしても見たことのない人物だったため、茶髪の少女以外の四人の声が重なりあった。

「あら、ウェンディ、シリル、あなたたちなら私たちの匂いでわかるはずじゃない?」
「え?」
「匂い?」

小悪魔のような笑みを見せながらそう言う白髪の少女。俺とウェンディは顔を見合わせた後、俺は茶髪の、ウェンディ白髪の子の匂いを嗅いでみることにする。

「あれ?この匂いって・・・」

すると、少女たちの匂いには心当たりがあった。見た目が全然違っていたのと、突然のことで気付かなかったけど、もしかしてこの子たちって・・・

「セシリー!?」
「シャルルなの!?」
「ピンポ~ン!!」
「えぇ、そうよ」

彼女たちの正体は、相棒のエクシードであるセシリーとシャルル。彼女たちはやっと気付いたからなのか、スカートの中から隠していた長い尻尾を取り出し、頭にしていたカチューシャを外す。

ピョコッ

その際、カチューシャがあった場所にエクシードの時の名残なのか、猫のような耳が姿を現した。

「言われてみると、声一緒だね」
「全然気付かなかったよ」

意識して聞いてみると、二人の声はエクシードの時と何も変わっていない。だけど、二人が人の姿になっているなんて夢にも思わなかったから、気にすることがなかったから分からなかったんだ。

「ラウルに教えてもらったのか?」
「そうだよぉ!!」

レオンが人間になった彼女たちに問いかけると、シャルルの後ろからオレンジ髪の猫耳少年、ラウルが顔を覗かせる。

「最近どこかに行ってたのって・・・」
「うん!!ラウルから変身魔法を教わってたの~!!」
「こんなに早くできるなんて、変身魔法も大したことないわね」

わずか数日であっさりと変身魔法を修得したセシリーとシャルルは得意気に胸を張る。しかも二人は体の質量を変えることができているということは、上級の変身魔法を使えるようになったのか?聞いた話だとナツさんやルーシィさんでも苦戦した魔法なのに・・・この二人はセンスの塊だったのかもしれん。

「でもなんで変身魔法を?」

感心していると、シェリアが感じていた疑問をぶつけてみる。言われてみると、なぜ彼女たちは変身魔法を覚えたのだろうか?ラウルはレオンが猫の姿を見ることができなかったからだけど、二人にはそんな理由はない。趣味で覚えるにしても、変身魔法なんて難易度の高い技、覚える意味がないと思うんだけど・・・

「あんたたちに守られてばかりじゃあれだしね」
「僕たちも戦えるようになりたかったんだ~!!」

彼女たちの口から明かされた魔法を修得した理由。それを聞いた時、思わず嬉しくて頬が緩んだ。

「シャルルぅ!!ありがとぉ!!」
「ちょっとウェンディ!!」

喜びのあまり白髪の少女に変わったシャルルに飛び付くウェンディ。いきなり抱き付かれた少女は驚いていたが、すぐに嬉しそうに笑みを覗かせていた。

「シリルも飛び付いてきていいよ~」
「いや、それはやめておこう」

両手を広げ、俺が飛び込んでくるのを待ち構えているセシリー。だけど、いくら嬉しくてもそんなことはできない。やったらまた面倒事が増えそうだし、自重する心も大切だろう。

「よかったじゃん!!二人とも!!」
「シャルルもセシリーも二人のために一生懸命だったんだ!!」
「余計なこと言わなくていいわよ!!」
「このくらい朝飯前だったよ~!!」

飛び付いてこいと言わんばかりにジリジリと迫ってきたセシリーから距離を取っていると、シェリアに背後から頭を撫でられる。その後にラウルから二人が頑張っていたことが話されると、彼女たちは恥ずかしいのか、少年の口を大急ぎで塞いでいた。

「じーっ」

和気あいあいとした雰囲気が流れていると、一人の少年がシャルルとセシリーを見た後、俺とウェンディを交互に見るという不思議な行動をしていることに気が付いた。

「どうしたの?レオン」

何かを考えながら四人を眺めている少年に問いかけてみる。すると、彼は何かが引っ掛かったようで、ある提案をしてきた。

「四人とも、そっちの壁に並んでみて」

なぜ彼がそんなことを言ったのかわからなかったが、とりあえず言われた通りにリビングの壁に整列してみる。

「セシリー一番こっちかな」

並んだ俺たちを見て今度は配置まで弄ってくる少年。彼の指示通りに並び替えてみると、最後にはこのような配置にまとまった。

セシリー・シャルル・シリル・ウェンディ

「何?この並び」
「悪意を感じるのは俺だけ?」

言われるがままに並んでみたのはいいが、この配置に少々悪意を感じるのは気のせいだろうか?もしそうなら、レオンには意地でも拳を叩きつけたいところなのだけど・・・

「左向けぇ、左!!」

バッと全員が左方向に体の正面を向ける。その結果、先頭をウェンディにした列が完成したのであった。

「はい、背の順の出来上がり」
「「レオン!!」」

やっぱりそうだったのか!!細かく並びを変えてるから何かおかしいとは感じていたんだ。それは予想通りだったようで、レオンによってシャルルたちよりも小さいと判断された俺やウェンディは激昂していた。

「あら、あんたたちより大きくなっちゃったのね」
「お姉ちゃんって読んでいいよ~!!プププッ」

勝ち誇ったような笑みで見下したように俺らを見ているシャルルと、口に手を当て、バカにしたような笑いを発するセシリーを見て、ウェンディは泣きそうになり、俺は腸が煮えくり返りそうになっていた。

「セシリー!!シャルル!!もっとちっちゃくなってよ!!」
「そうだよ!!二人とも私たちより小さくなってよ!!」
「絶対にイヤよ」
「二人が大きくなれば~?」ニヤニヤ

彼女たちの頭を押して縮めてみようと試みるが、数㎝身長が違うだけでうまく攻撃ができない。エクシードたちは、自分たちよりも小さくなった俺たちを嘲笑うかのように身長の大きさを比べてくる。

「いいじゃん二人とも、小さいと可愛いよ」
「うんうん!!二人は小さくてもいいよ!!」
「シェリア、ラウル、それフォローになってない」

フォローのつもりなのだろうか、小さいを強調してくるシェリアとラウルに、事の元凶(レオン)がそんなことを言っていて、余計腹が立ってきた。

「牛乳だ!!今から身長伸ばす!!」
「みんなより絶対大きくなって見せるもん!!」
「あらあら、頑張ってね」
「無理だと思うけどな~」
「「うるさい!!」」

その後、俺とウェンディは冷蔵庫にある牛乳をすべて飲み干すまでリビングから離れることはなかった。だけど、飲み干した後にレオンとシェリアに「それ、あまり意味ないよ?」と言われ、ガッカリと床に手をつき、ショックを受けたまま明日に備えて眠りについたのであった。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
わりと早めにシャルルとセシリーに変身魔法を覚えてもらいました。実際どのくらいに覚えたのかわからないから、別にいいよね?
次は宣言通り人魚の踵(マーメイドヒール)でのお話です。ちょっとお色気系にしようと思ってますので悪しからず。 
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