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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ドッキリ大作戦

 
前書き
レオンに毒されてちょっとずつシリルが黒く染まっていく感じを表した今回のお話。性格悪くなってるね、尻流ちゃん(笑)
シリル「いや、俺はそこまででもないだろ?」
レオン「こいつが腹黒いのは俺のせいじゃないでしょ?」 

 
シリルside

「シリル!!行ってくるね!!」
「お土産楽しみにしててね!!」

今日は一日オフの日!!なので今いる場所は家なのだが、玄関先にはエドラスで入手したお気に入りの洋服を着たウェンディと、ルーシィさんを思わせるようなヘソ出しルックのシェリアが出掛けようとしている。

「うん!!気を付けてね!!」
「転ばないようにね」
「お土産楽しみ~!!」
「行ってらっしゃ~い!!」

それを見送っているのは、俺とエクシードトリオ。時刻はまだ八時前だが、二人はクロッカスにあるショッピングモールに行くらしく、このくらいの時間に出ていかないと開店に間に合わないらしい。

「ところでレオンはどうしたのよ」
「まだ眠ってるよ~」
「昨日遅くまで起きてたみたいだもんね」

今この場にいない少年のことを話題に出すシャルルたち。レオンは昨日、俺に蹴られた部位が相当痛かったらしく、なかなか風呂に入れずいつもよりも遥かに遅い時間に眠っていた。そのため、同じくらいに目覚めるはずの彼は、まだベッドでスヤスヤと寝息を立てていた。

「いいよ、今日はお休みだし」
「ゆっくり寝させてあげて」

お見送りに姿を現さなかった少年を責めることなく、優しさを見せる天神と天竜。彼女たちの言葉に甘えて、レオンを起こすことはせずに見送りをする。

「じゃあ、私たちも行こうかしらね」

二人の背中が見えなくなったので家の中に入ろうとしたところ、シャルルがそんなことを言い出すので足を止める。

「行くって・・・どこに?」
「ちょっとね」
「僕もラウルも行くよ~」
「シリルはレオンのことお願いね」

一体どこに行こうとしているのかわからないが、(エーラ)を出して飛び立っていくシャルルたち。そういえば昨日もどこかに行ってていなかったよな?何かエクシードだけの秘密の集まりでもやってるのかな?気になるけど・・・あの状態のレオンを置いていくわけにはいかないでの、家へと入り少年の様子を見ることにした。

「スゥ・・・スゥ・・・」

そろそろ起きているのではないかと思い部屋に入ってみると、レオンは布団にくるまり寝息を立てている。
試しにほっぺを突っついたりしてみるが、柔らかいだけで目覚める兆しは一行にない。そんなに蹴られた場所が痛くて寝付けなかったのかな?でも大半はこいつが悪いんだから、絶対に謝らないからな。



















ガサゴソガサゴソ

それから一時間ほど経った頃、洗濯や掃除を済ませていると、部屋の方から少年がようやく動き出したような音が聞こえてくる。

ガチャッ

「おはよう、シリル」

眠たげに目を擦りながらリビングに入ってきた氷の神は、相変わらずパジャマの前をはだけさせ、それなりに鍛えられた肉体を見せつつ食事をするためにテーブルへと腰かける。

「おはよ、レオン。はい」
「うん、ありがと」

シェリアたちが作っておいた朝食を温め直し、彼の前に並べる。レオンはまだ寝惚けているようだったが、やっぱり食べることは好きなようで、食事を目の前にすると、開いているのかよくわからないままの目でモグモグと噛み締めながら食していた。

「あれ?みんなは?」

食べる手を休めることなく、テーブルに乗せられていたそれをみるみる減らしていた少年は、ようやく開いてきた目で周囲を見回しながらそう言った。

「セシリーたちは三人でどこかに飛んでいったよ」
「ふ~ん」

スープを飲みながらジュースを飲むというなかなか珍しい食事の仕方をしている少年の正面に腰掛けながらそう答える。

「じゃあシェリアとウェンディは?」

すると、少年は幼馴染みの少女と、彼女と最も仲の良い少女について訪ねてくる。

「ふ・・・」

普通に答えようとして、一つあることを思い付いた。昨日俺の心をズタズタにした少年に、もう少し制裁を加えたいと思い、ちょっとしたドッキリを仕掛けようと考えた。

「どうしたの?」

言葉を飲み込んだことで不思議そうに俺の顔を眺めているレオン。そんな彼に、俺は不敵な笑みを浮かべながら口を開く。

「レオン、びっくりさせてあげようか?」
「・・・お前、それは宣言しちゃダメじゃないか?」

もっともな彼の突っ込み。それはそうだ、どんなドッキリであっても事前に脅かしますよ、なんて言う人はいない。しかし、今回に限ってはこの言葉は大きな意味をもたらすのだ。

「シェリアをレオンが寝てる間に手紙で『大事な話がある』ってギルドの屋上に呼び出したよ。レオンの名前で」

レオンのことが大好きなシェリアなら、彼に大事な話があるなんて言われたら間違いなく大喜びで指定された場所に向かうだろう。まぁ、今日のこれはウソだから、意味はないんだけどね。

「・・・」

シェリアの気持ちに気付いていない鈍感な氷の神がどんな反応をするのかと思い観察していると、少年は持っていた箸を机の上に落とし、口を開けたまま固まっていた。

「え?寝てる間って・・・いつくらい?」
「八時くらいだったかなぁ」

唖然としたままなんとか絞り出した声で質問してくる少年。俺は意外といい反応をする彼をもう少しいじってみたくなってきたので、もう少し作り話で盛り上げてみることにしてみた。

「八時って・・・え?」

リビングにかけられている時計に視線をくれる氷の神。その針は九時半を少し越えた時間を指しており、少年の顔から血の気が引いていく。

「もう・・・かれこれ一時間以上も前じゃん!!シェリアをウソの呼び出しで一時間以上も放置!?」

真っ白になった顔でこの世の終わりでも来たのかというほどに慌てた様子のレオンを見て、ニヤニヤが収まらない。てっきり軽く受け流す程度に留めるのかと思っていたから、まさかここまでのリアクションをしてくれるとは・・・

「あぁ・・・これ絶対怒ってる・・・殺されるやつだ・・・」

脱力して背もたれに体を預けた少年は、ブツブツと絶望にも似たような発言を繰り広げている。さすがにそろそろいいかなと思い、ネタばらしをしようとした時・・・

「あばばばばばば」

レオンは口から泡を吹き出し始めた。

「ちょっ!!レオン!!冗談!!冗談だってばぁ!!」

意識を失ってすぐさま泡を吹き始めた彼を見て大慌てでネタばらし。てか泡って気絶してからしばらく呼吸してないと作られないんじゃなかったっけ?なんでそんなとこまで普通とは違うんだよこいつはぁ!!

完全に予想の遥か上を行く少年の姿に急いで治癒魔法をかけて無理矢理に元通りにする。ただ、意識を取り戻しても彼は気になって仕方がなかったのか、休みの日にも関わらず大急ぎでギルドへと向かっていったのであった。




















レオンが家を飛び出して二時間ほど経った頃、家でゴロゴロしていると、少年が自宅の扉を勢いよく開けて部屋へとやって来る。

「シリル、びっくりさせてやろうか?」
「え?」

部屋の扉をバタンッと音を立てて開けた金髪の少年は、ベッドでウェンディがこの間部屋に持ってきて忘れてしまった大きな枕を抱いてゴロゴロしている俺にそんなことを言ってくる。

「いや、いいよ」

たぶんこの子は相当さっきの仕返しをしたいのだろう。でも、何をしようとしているのかわかっているのにわざわざ乗っかる奴はいない。なのでダラッとしながらそう返し、また枕に顔を埋める。

「・・・シリル」
「んん?」

俺が眠っているベッドの脇に腰を降ろし、視線を向ける氷の神。俺はベッドに横たわっているせいか、ちょっと眠たくなりつつある目で彼の顔を見つめる。

「びっくりさせてやろうか?」
「・・・じゃ・・・じゃあお願いしようかな」

まさか拒否したりしないよな?という目でこちらを睨みつつ同じ言葉を繰り返したレオン。よほど悔しかったらしく、意地でも仕返しをしたいようだったので、ここは受けておくことにしようかな。

「俺が作ったスーパーびっくり箱だ!!」
「・・・は?」

どこからか取り出してきた人の顔ほどはある大きな正方形の箱。自信満々の表情をした金髪の少年は、意味がわからず固まっている俺に押し付けてくる。

『スーパーびっくり箱、起動します』

箱の中から聞こえてくる機械音。それを引き金に箱の蓋が開かれると、定番のバネつきの人形や鳩、紙ふぶき、効果音を発しながらいかにも驚かせようとしている仕掛けがばんばん出てくる。しかし、びっくり箱は不意を突くから効果があるのであって、事前に備えることができた俺には全く効果がなく、一切驚くことなく終わってしまった。

「・・・で?これが何?」

一体何がしたかったのかわからず、仕掛けた少年に視線を向ける。すると、その少年は不発だったにも関わらず、不敵な笑みを浮かべていた。

「え?まだ何かあるの?」

まるで今からが本番と言わんばかりの表情に箱を見ながら念のため身構えておく。しかし、いつまで経っても箱から何かが起きることはなく、改めてレオンに目を向けると、彼の口からとんでもないことが知らされた。

「それを作らせるために闇ギルド一つ潰してきた。さっきの時間で」
「・・・ハァ!?」

少年のありえない言葉にびっくりしました。

「どうだ?驚いただろ?」
「そりゃ驚くわ!!」

誇らしげにびっくりしている俺を指さしながらそう言う氷の神。しかし、これは普通に考えて驚かないわけがない。だってこいつが自宅を開けていた時間は二時間程度。てっきりその時間にこのびっくり箱を作っていたのかと思ったら、まさか闇ギルドを潰してからそいつらに作らせるという行動に出ていたなんて・・・何考えてんだよこいつ。

「なぁシリル」
「何?」

彼のあまりの行動力に言葉を発せないでいると、あちらの方から声をかけてくる。

「俺ら二人だけでドッキリするのは味気ないから、誰かにドッキリ仕掛けない?」

唐突な提案。でも、レオンの行動力があれば面白いドッキリができるのではないだろうか?

「誰にドッキリするの?」

だけど、問題点もある。一体誰にドッキリを仕掛けるかだ。蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の誰かに仕掛けるにしても、レオンが一度ギルドに行ったのだから、推測される可能性がある。そうなると、面白い反応が期待できないのではないのだろうか?

「大丈夫、ちゃんと考えてあるから」

親指を立ててニコッと笑みを見せた彼を見て、俺は首を傾げる。彼は誰にドッキリを仕掛けようとしてるんだ?

「ねぇ、誰にドッキリするの?」
「お前も納得してくれるのは、あいつしかいないだろ?」

そう言って手招きをし、家の外に出るように指示する彼の後を追いかける。それからドッキリの準備のために、俺たちは人物の元へと向かった。




















『な・・・なんだお前!?やめ・・・来るんじゃな・・・うわあああああああ!!』

マーガレットの街から離れ、ある人物を訪れている俺とレオン。その人物は、俺とレオンが準備してきたビデオを静かに鑑賞している。

「・・・え?これが何?」

一通り見終わった紫髪の青年、グラシアンさんが不思議そうな顔でこちらを見る。今回のターゲットはグラシアンさん!!・・・ではない。

「それにグラシアンさんの魔法で怖いモンスターの幻を入れてください!!」
「もう今まで見たこともないような奴を!!」

さっき彼に見せたのは俺がただ怯えているだけに見える映像を録画したビデオ魔水晶(ラクリマ)。その映像に、グラシアンさんの魔法で凶悪なモンスターを登場させ、相手を驚かせようという魂胆だ。

「別にいいけど・・・誰にやるんだ?それ」

了承を得るのは簡単だった。しかし、グラシアンさんは一応誰にこの映像を見せるのか気になっているらしい。

「ソフィアにやろうと思ってます」
「シリルもシェリアも被害に遭いまくってるからな」

今回のドッキリのターゲットはソフィア・バルザック。彼女には日頃、セクハラなどをされて大変辛い目にあっているので、ここらでお灸を据えなければとレオンが提案し、俺も乗っかったわけだ。

「あいつか。ちゃんと驚いてくれるかね?」

標的の名前を聞いたグラシアンさんは腕を組み、う~んと頭をひねり始める。ソフィアは日頃から見知らぬ女性にもボディタッチを繰り返しているとあって、度胸があると思う。なので、そんなにうまく驚いてくれるか彼は疑問を持ったようだった。

「ほほぅ、何やら面白そうなことをしておるな」

グラシアンさんが頭を悩ましていると、その後ろから中華風の衣装に身を包んだお団子ヘアの女性がやってくる。

「お嬢」
「ミネルバさん」

その人物とは、剣咬の虎(セイバートゥース)の前マスターの娘、ミネルバさんだった。

「メイク薄くなりましたね?」
「そんなことを言うのはこの口か!?」

会って早々に失礼な発言をぶちこんだレオンの頬を左右に引っ張るミネルバさん。少年は引っ張られて痛そうにしているが、ほっぺが伸びること伸びること、そんなにダメージはないんじゃないかと思ってしまうほどに伸びている。

「何?お嬢もやる?」

グラシアンさんからそう言われ、レオンを痛め付けて満足したミネルバさんは彼の頬を離す。

「うむ。楽しそうなイベントだからな。妾もぜひ参加させてほしいものだ」
「「オオッ!!」」

こういうのは好きじゃなさそうな人だと思っていただけに、この申し出は大変嬉しい。もしかしたらソフィアが跳び跳ねるくらいの代物が完成するかもしれないぞ!?

「おい、お嬢にやらせていいのか?」
「ソフィアが大変なことになりそうだな」
「お嬢は結構エグいからな」

何やら後ろでコソコソと内緒話をしている皆さん。彼らはどうやらミネルバさんがこのドッキリに参加するのが不安で仕方がないらしい。

「何か言ったか?」
「「「「「何でもありません!!」」」」」

しかし、そんな彼らを彼女が一睨みすると、瞬く間に事態は終息する。よほど怖いんだろうな、ミネルバさんのこと。

「よし!!そうなればすぐに準備しよう!!皆が驚くものを作ってみせる!!」
「「オオッ!!」」

いつの間にか仕切り出したミネルバさん。ただ、こんなにやる気になっている彼女を見て、俺とレオンも同じようにやる気に満ち溢れていた。

「なんか・・・嫌な予感がするけどなぁ・・・」

ただ、肝心要な役を担当するグラシアンさんだけは、不安そうにしていたが、俺たちは気にすることなくドッキリのための映像を撮影したのであった。























ソフィアside

「ソフィア!!これ二番テーブルに持っててくれ!!」
「は~い!!」

時刻は夕方、ソフィアは今日は指名の依頼がなかったから、予定通りギルドと一体になっているレストランでウェイトレスをしてるよ。

「お待たせしました!!ナポリタンとペペロンチーノです!!」

今日はメイドさんのような衣装に身を包み、ウェンディちゃんみたいなツインテールに髪を結ってロリータ感を出しつつおもてなしをしてます。ただし視線はお客さんの衣服から見える太ももや谷間に行ってるから、癒されてるのはこっち側なんだけどね♪

「ソフィア、あまりお客を変な目で見るなよ」
「考えておきます」

カウンターの前まで戻ってくると、今日は厨房係のカグラさんに注意されちゃった。でもそれは無理な話だよ、だって今は夏だから、女の子たち薄着なんだもん!!

ピピピピピピピ

ちょっと休憩と思い厨房の方に入っていくと、突然通信用魔水晶(ラクリマ)にどこかから通信が入ったため、音が鳴り響きます。

「キターッ!!」
「ん?何がだ?」

ソフィアが叫んだことでカグラさんが驚きながらこちらを振り向きます。

「ソフィアの美少女センサーが反応してる!!これは女の子からの連絡だよ!!」
「・・・なんでそんなことがわかるんだ?」

大体、なんとなくで可愛い女の子の気配は察知することができる。なので、ソフィアは誰よりも早く通信用魔水晶(ラクリマ)の前に行き、どこからの連絡か確認します。

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)?」

発信先はシェリアやレオンが所属するギルド、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)だった。この美少女センサーが反応するってことはシェリアかな?それとも女装したレオン?はたまたシェリーさんかな?

「はいはい!!こちら人魚の踵(マーメイドヒール)!!」

魔水晶(ラクリマ)のスイッチをオンにして顔を覗き込む。誰が出てくるかな?と見ていると、そこにいるのは予想には出てこなかった人物だった。

『そ・・・ソフィア・・・』

水色の髪をした男装好きの天使、シリルちゃんだった。なぜか血まみれの。

「ちょ・・・どうしたのシリルちゃん!?」

なぜラミアからシリルちゃんが連絡してきたのかという疑問が頭からぶっ飛ぶほどの強烈な格好に思わず絶叫する。その声を聞き付けたギルドのみんなが、ソフィアの後ろから魔水晶(ラクリマ)を覗き込む。

『お願い・・・たす・・・うわっ!!来た!!』

息も絶え絶えの少女は必死に助けを求めてくるが、ガタッと音が聞こえた方角を見ると、恐怖に顔を歪める。

『シャアアアアア!!』

慌てたように画面からいなくなったシリルちゃんと入れ替わるように画面に現れたのは、たくさんの足が生えた見たこともないような魔物。

「えぇ!?何あれ!?」
「あんな魔物見たことないよ!!」
「き・・・気持ち悪い・・・」

見たことのない生物の登場に騒ぎ出す人魚たち。てかあんなのレオンなら何とでもできるんじゃないの!?なんであの子は美少女のピンチを助けないの!?

「ミャア!?あれレオンじゃない!?」

すると、画面の端を指さしてミリアーナさんがそう叫ぶ。まさかと思いながらそこを見てみると、そこには確かに血まみれになった氷の神が倒れていた。

「レオン死んだ!?」
「ウソ~ん!!」

頼れる魔導士がやられたことに動揺を隠しきれない。見ている全員が言葉を失っていると、魔物が画面からフィードアウトしたかと思うと、その直後シリルちゃんが悲鳴をあげながらギルドの出入口だと思われる方角に走っているのが見えた。

『シャアアアアア!!』
「キャアアアアアアア!!」
「逃げてシリルちゃ~ん!!」

彼女の後ろから襲いかかろうとしてくるモンスター。今にも取り殺されそうな少女を全員が祈るように手を合わせて見ている。だが・・・

グサッ

シリルちゃんの背中に、モンスターの巨大な爪が突き刺さった。

『シャアアアアア!!』

背中を貫かれたシリルちゃんはその場に倒れると、魔物は動くことのできない少女を次から次へと攻撃を加え、血まみれにしていく。

「え・・・ちょ・・・シリルちゃん?」

人魚の踵(マーメイドヒール)でこの映像を見ている全員の顔から血の気が引いた。無惨に食い潰されている少女の姿を見て、誰も口を開くことができない。

「もう・・・無理・・・」

そしてソフィアは見てられなくなって、その場で気絶してしまった。
















シリルside

『シャアアアアア!!』

次から次へと俺に攻撃を加えているモンスター。その映像を見ている俺とレオンは、ソフィアがどんな顔をしているのか想像しただけで笑いが止まらない。

「そろそろいいんじゃない?」
「だな。もういいだろう」

充分彼女にダメージを与えられただろうと思った俺たちはグラシアンさんとミネルバさんの協力によって作ったビデオ魔水晶(ラクリマ)のスイッチを切り、【ドッキリ大成功】と書かれた看板を担ぎ、通信用魔水晶(ラクリマ)の前に姿を現す。

「イェーイ!!びっくりした!?」
「レオンとシリルからのドッキリでしたぁ!!」

きっと心臓をバクバク言わせているであろう少女に真実を告げる。だが、そこに広がっていたのは、予想を遥かに上回る光景だった。

「あ・・・これヤバイ」

思わずそんな言葉が漏れた。なぜなら、魔水晶(ラクリマ)から見える人魚の踵(マーメイドヒール)の皆さんが、顔を真っ青にして気絶していたからだ。

「全部シリルが悪いよ」
「えぇ!!レオンが提案したんじゃん!!」

ちょっとやり過ぎてしまったらしく、ターゲット以外も気絶させてしまう珍事を起こした俺とレオンは互いに責任を擦り付けあっている。

『貴様ら・・・』

その時、向こうから怒りを露にしている女性の声が耳に届き、恐る恐るそちらを向く。

『この忙しいときに・・・なんてことをしてくれたんだぁ!!』
「「ごめんなさ~い!!」」

夕食時だったらしく、人魚の踵(マーメイドヒール)が経営するレストランは大忙しだったらしいのだが、俺とレオンのせいで全員が気絶してしまい、接客ができなくなってしまった。

その後、カグラさんがお客さんたちに謝罪をし、店を閉じたのだが、今回の責任を取らねばならなくなった俺とレオンは、翌日人魚の踵(マーメイドヒール)にお手伝いしに行くことになったのだった。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルとレオンによるやりすぎドッキリでした。
次は一話挟んでから人魚の踵(マーメイドヒール)でのお話をやろうと思います。 
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