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遊戯王EXA - elysion cross anothers -

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PROLOGUE EDITION Volume.1
  PE01-JP006《ようこそ、幻想の物語へ。》

―――― Turn.5 End Phase ――――

1st/Yumina Orihime
◇LP/ 200 HAND/0
◇《イビリチュア・ソウルオーガ》ATK/1400
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Ren Kazami
◇LP/3600 HAND/0
◇set card/mo-0,ma-0


 デュエルも終盤、デッキトップだけが命運を左右するこの状況。このターンで終わらせるべく、俺はデッキトップに手を掛けた。

「俺のターン、ドロー!」


Turn.6 Player/Ren Kazami
 1st/Yumina Orihime
  LP/ 200 HAND/0
 2nd/Ren Kazami
  LP/3600 HAND/0→1


 ……。

「ターンエンド」

 ……引いたのはいいんだけど、生憎ゆみなの場にいるのは《イビリチュア・ソウルオーガ》。手札から"リチュア"を切ることでフィールド上のカード1枚をデッキに飛ばす効果を持っている。今このカードは殆ど意味のないカードと考えていい。
 残りライフは3600。次のターンを耐えきることさえ出来れば、まだ勝機はあるはずだ……。


―――― Turn.6 End Phase ――――

1st/Yumina Orihime
◇LP/ 200 HAND/0
◇《イビリチュア・ソウルオーガ》ATK/1400
◇set card/mo-0,ma-1

2nd/Ren Kazami
◇LP/3600 HAND/1
◇set card/mo-0,ma-0


「私のターン……ドロー!」

 ゆみなのターン、勢いよくカードがドローされる。


Turn.7 Player/Yumina Orihime
 1st/Yumina Orihime
  LP/ 200 HAND/0→1
 2nd/Ren Kazami
  LP/3600 HAND/1


「……、ここでこれを引きますか……」

 ……どうやら、望み通りのカードは引かなかったらしい。

「バトルフェイズ、《イビリチュア・ソウルオーガ》で直接攻撃(ダイレクトアタック)海王水嶺弾(アクアメイル・シュトレイム)!」

 海魔の両腕から、再び渦潮が放たれる。遮るものはない、その竜巻は全て俺へとぶつけられた。

「くうっ……!」

 Ren LP/3600-1400=2200

「カードを1枚セットして、ターン終了です!」


―――― Turn.7 End Phase ――――

1st/Yumina Orihime
◇LP/ 200 HAND/0
◇《イビリチュア・ソウルオーガ》ATK/1400
◇set card/mo-0,ma-2

2nd/Ren Kazami
◇LP/2200 HAND/1
◇set card/mo-0,ma-0


 このターン、このドローで全てが決まる……!

「俺のターン、ドロー!!」


Turn.8 Player/Ren Kazami
 1st/Yumina Orihime
  LP/ 200 HAND/0
 2nd/Ren Kazami
  LP/2200 HAND/0→1


「……まさか、本当に引くなんてね」

 ゆみなの伏せカードは2枚。対して、俺の伏せは1枚。手数で言えばこちらが不利だ。

「……いくよ、ゆみな!」

 だけど、チャンスはきっと今しかない!

「《ドラグニティ-ドゥクス》、召喚!」

 俺の場に再び、翼人達の指導者が現れる。

 ドラグニティ-ドゥクス
 ☆4 ATK/1500→1700

「"ドゥクス"の効果で"ファランクス"装備、特殊召喚!」

 ドラグニティ-ドゥクス
 ☆4 ATK/1700→1900

 ドラグニティ-ファランクス
 ☆2T DEF/1100

「……やっぱり、風見君は凄いですね。このタイミングで《ドラグニティ-ドゥクス》を引くなんて……」
「うーん、そうなのかな。あまり考えたことはなかったけど」

 沙耶姉には、運が良いのか悪いのかはっきりしろとよく言われてる。引くときは引くけど、引かないときはもうデュエルにならないレベルだって。

「ですが、今回は……今回だけは、譲れないんです!」
「それは俺も同じ。俺達の命が掛かってるんだ、絶対に負けられない!」
「いつもそうやって、そこまで私の料理が嫌いなんですか!?」
「いやいやいや、あれ好き嫌い以前の問題だよね!?」
「それでも、今日こそは絶対に風見君に食べてもらいたいんです!」
「おい、やめろ馬鹿! 死ぬから! ムドオンカレーとか絶対無理だから!!」

「……だから、こんなところで負けられないんです―――!」

 ゆみなの感情に呼応するように、目の前に立ち塞がる海魔が咆哮をあげた。

「《無力の証明》、発動!」

 《無力の証明》。自分の場にレベル7以上のモンスターがいるときに発動できるフリーチェーン型の罠。その効果は……

「風見君の場のレベル5以下……全モンスターを破壊します!」

 そう。後出しこそ出来ないものの、相手の展開をほぼ確実に無力化する。それはまさに、旧世代から新世代へのメタカード。

「だろうね」
「えっ……!?」
「大体予想はついてた。そして……」

 俺の場、前のターンにドローし、セットしていたカードが表になる。描かれたのは神聖な槍……。

「俺の勝ちだ、ゆみな! 《禁じられた―――」
「やっぱり、そのカードでしたね」

 Yumina LP/ 200÷2= 100

 俺の発動宣言は、しかしゆみなの言葉に遮られる。俺の手元に出かかっていた銀の槍が、時を止められ色を失っていた……!

「《神の宣告》です!」

 俺は悟った。ここまでか、と。
 海魔がその両腕から想像を絶する大津波を作り出す。抵抗することも許されぬまま、俺の場は激流によって荒らされていった。
 ……それはまるで、俺達が殺人料理の前には無力でしかないということを証明するかのように………。

「……ターンエンド」

 ……てか、あのタイミングで神宣引くってどういうことだよ……。


―――― Turn.8 End Phase ――――

1st/Yumina Orihime
◇LP/ 100 HAND/0
◇《イビリチュア・ソウルオーガ》ATK/1400
◇set card/mo-0,ma-0

2nd/Ren Kazami
◇LP/2200 HAND/0
◇set card/mo-0,ma-0


「私のターン、ドロー」


Turn.9 Player/Yumina Orihime
 1st/Yumina Orihime
  LP/ 100 HAND/0→1
 2nd/Ren Kazami
  LP/2200 HAND/0


「……《月の書》を発動。《イビリチュア・ソウルオーガ》を選択、裏守備にします」

 ゆみなの手に、装飾の施された蒼い本が呼び出される。魔導書から淡い光が発せられ、魔物を包み込む。

「そして、反転召喚!」

 蒼光を取り込み、魔物は再び咆哮をあげた。さっきとは比べ物にならない程の威圧感に、思わず後ずさってしまう。

「《月の書》によって《リチュアに伝わりし禁断の呪術》による拘束は解かれ、《イビリチュア・ソウルオーガ》の攻撃力は本来のものに戻ります」

 イビリチュア・ソウルオーガ
 ☆8 ATK/1400→2800

「……はは」

 乾いた笑い声が、ふと零れ出る。

「やっぱり、ゆみなは強いね」
「そう、でしょうか……」
「強いよ。俺や沙耶姉とゆみなの遊戯王は本質が違ってるからさ」

 俺の言葉に、ゆみなが首をかしげた。

「本質……ですか?」
「うん、本質。ゆみなのデュエルは、この世界でもきっと通用する」

 勝つことの延長線として、そのデュエルを楽しむ。デュエルを楽しみ、その延長として勝利する。
 前者が俺達で、後者はゆみな。遊戯王世界の登場人物も、きっと後者。結果が変わらないだけで、その本質は根本から違っている。
 もし前者と後者が対峙すれば、後者に軍配はほぼ確実に上がらないと言っていい。相手を勝たせないデュエルを前者はするのだから。

「……よくわかりませんが、これで最後ですね。バトルフェイズ、《イビリチュア・ソウルオーガ》でダイレクトアタック!」

 ……まったく。

海王水嶺弾(フラッドメイル・シュトレイム)!!」


 これだから、遊戯王はやめられないんだ。


 Ren LP/2200-2800= 0


―――― Turn.9 Battle Phase ――――

1st/Yumina Orihime
◇LP/ 100 HAND/0
◇《イビリチュア・ソウルオーガ》ATK/2800
◇set card/mo-0,ma-0

2nd/Ren Kazami
◇LP/ 0 HAND/0
◇set card/mo-0,ma-0

 Yumina WIN

 ― ― ― ― ― ― ― ―


「あー、やっぱり悔しいな……」
「私のセリフですよ! なんですかこの結末は!?」
「……え?」

 そう言われ、ゆみなが指差した方向を見ると……。

「あなた達がデュエルをしているとき、実は私とクレナで晩御飯を作っていたのよ! きりっ☆」
「「"(キリッ"じゃない!」」
「蓮とアイシアがゆみなを足止めして、その間に私とクレナで晩御飯を作る……完璧な作戦でしょ?」
「いや、俺聞いてないんだけど」
「だろうね。教えてないもん」
「確信犯!?」

 うん、我ながら完璧な作戦だったわ。

「あはは……。ごめんね、ゆみなちゃん」
「アイシアさん……」
「でも、質問は本気だったんだよ? 私の知らない戦い方だったから」

 あれ、そうだったの? 転生者だから、てっきりわざと質問してたんだと思ってた。

「……さて、と」

 切りがいいところで、私は話を切り出すことにした。


「説明してもらいましょうか。この世界、"遊戯王ELYSION"について……」
「……了解致しました、天河様」

 私の問いに応えたのは、私達をこの世界に連れてきた少女。しかし、先程のような年相応の面影は消え、代わりに機械的な表情が浮かんでいた。


「その前に、まずは私の自己紹介を。私の名は Clenna=Ratatoskr=Hydranger 。DEMによって遣わされた精霊(スクリプト)で、この世界では主をアイシア=エリュシオンとしています」

 さっそく手を挙げる私。

「はい質問。"でぃーいーえむ"って何?」
「干渉機構型次元矯正概念 "Deus_Ex_Machina" のことですね。詳しいことは秘匿情報なので説明できませんが、簡単に言ってしまえば神様の上位互換です」

 機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)。収拾のつかなくなってしまった物語を無理やり大団円へと導く舞台装置。……なるほど、もし名前通りの役割を持つのなら、舞台上への乱入者(メアリー・スー)へも簡単に処理できるだろう。

「ん、了解。説明を続けて?」
「了解致しました、説明を続けます。この世界の呼称は"遊戯王ELYSION"。主人公は前世界"遊戯王CONNECT"から引き続き桜井(さくらい)遊人(ゆうと)。あなた方の世界では"遊戯王GX"における主人公遊城(ゆうき)十代(じゅうだい)が最も近い存在ですね。舞台は国立デュエルアカデミア日本校、通称アカデミアです」
「質問です」

 次に手を挙げたのはゆみなだった。

「GXみたいに色別なんですか?」
「はい。ですが、ランクの優劣が色ごとに固定されているわけではありません。学期末に行われるクラスの成績順によって、合計5つの設備が毎回入れ替わります。この点に関しては、そちらの世界でいう"バカとテストと召喚獣"に近いものがありますね」

 おお、バカテスか。

「……はい、把握しました」
「ごめん、今度は俺が質問」

 ゆみなの質問を引き継ぐ形で蓮が手を挙げる。

「5つってことは、バカテスでいうとAクラスからEクラスの設備ってこと?」
「はい。10年ほど前にはFクラス並の設備もあったそうですが、さすがに廃止されたそうです。ですが、この点に関しては転生者の影響ではありませんね。単に世間体の問題かと」

 ですよねー! まあ、流石にそうよね。あんなクラスが日本中にあってたまるかと。

「うん、ありがと。続けていいよ」
「では、説明を続けますね。この世界に来る前に説明しましたが、"遊戯王CONNECT"の時点で転生者が大量に流れ込み、"CONNECT"後半には水咲(みずさき)凍夜(とうや)を筆頭とした"転生者狩り"が現れ始めました」

 水咲凍夜……どっかで聞いたような。

「ああ、あのかませ役?」

 ああ、そいつか。ワンキルお疲れ様、蓮。

「はい。彼一人によって、転生者のおよそ9割が闇のゲームの犠牲者にされています」

 え、なに? そいつ、そんなに強かったの?

「水咲凍夜……あの夜神さんがやけに慕っていましたね」
「どうせニコポとかナデポとかされてたんじゃないの?」
「うん、そうだと思うよ?」

 ゆみなの疑問に蓮が仮定を導き、その解にはアイシアが同意した。

「あんな性格悪いのに、なんでみんな好意的なのか全然わからないよ……」
「あれは一種の洗脳です。転生するときに神を自称するものから与えられたものと考えられますね……」

 洗脳、ねえ……。ニコポとかナデポとか、普通あり得ないわよね。それさえやれば悪事もお咎め無しとか。むしろ同情されるとか。ねーよ。あってたまるかよ。

「……あれ? じゃあ、なんでアイシアは効かなかったのよ?」
「あ、そういえばそうだね」

 まさかの無自覚。なんとなく予想はしてたけど。

「それはアイシア様の転生方法が極めて異質なものだったからだと思います」
「「「「異質?」」」」

 クレナの答に私達の声が重なった。

「はい。いわゆる憑依転生だったというのもありますが、一番の要因は原作において死ぬはずだった人間に憑依してしまったからでしょう。"CONNECT"においてアルバート=エリュシオン教授が蘇らせようとしていた一人娘、それが原作のアイシア=エリュシオンです。もっとも、原作では桜井遊人らの説得によって失敗に終わっていますが」
「……そういえば、起きた場所がガラスの中だったっけ」
「え、何それは……?」

 アイシアの放つ、衝撃の告白(カミングアウト)。……どうせ遊戯王ならよくあることだと、私は考えるのをあきらめた。

「話を戻しますね。その転生者……狩りの方も含めてですが、その殆どが転生の際に現実離れしたものが提供されています。物語の鍵となるものを含めた全てのカードだとか、一生を遊んで暮らせるほどの大金だとか……」

 うん、転生ものの二次小説にはよくありすぎる設定よね。

「それと、カードの精霊だったりとか……たまに、それに付随した超能力だったりですね」

 うわ、あるある過ぎる……。

「転生者狩りには特に顕著です。嘘を見抜く能力や、相手の能力を無効にする能力だとか……夜神桜が前者の、水咲凍夜が後者の能力を持っていましたね」

 ……何よ、その「ぼくのかんがえたさいきょうののうりょく」みたいなの。

「……一度そいつら相手に"メアリー・スー"テストやってみたいわ」
「ああ、それわかります」

 あいつら、何点とれるのかしらね。

「リリカルなのはの管理局アンチだとか、ゼロ魔の貴族アンチとか……」
「ISの一夏アンチとかも顕著よね。あの公式鈍感を一目惚れさせるオリヒロインとか、同じ境遇のはずなのに一夏を一方的に無視する男オリ主とか」
「当の書いてる本人はそれでかっこいいとか思い込んでるから酷いですよ。あれ絶対作者の自己投影ですよね」
「貴様は歪んでいるっ!」
「それね。こんな作品書く奴が原作好きなわけないだろっての」
「嫌なら見るなは免罪符じゃない。こんなものを俺達に読ませるな。自覚してるならチラシの裏に―――」


「……あの、話を戻してもよろしいでしょうか?」
「「「あ、ごめん」」」

 ついつい話がヒートアップしちゃった。……アイシアの目が点になってるような気がした。二次小説のサイトを回ってると、どうしてもね……。

「あと、何故かはわかりませんが……誰もが皆アカデミアに入学します」
「だろうね」

 この言葉には私が即答。

「……と、言いますと……?」
「だって、原作に介入しやすくなるじゃない。あわよくば、自分が主人公になろうとしてる奴も多いはずよ?」
「……ああ、なるほど。そういうことだったんですね」

 どうやら、この点に関してクレナ側は把握していなかったらしい。

「……沙耶姉」
「ん?」

 クレナの話をさえぎらないように、小声で蓮が話しかけてきた。

「この世界さ、もろにGXと同じじゃない?」
「そうみたいね。どうせ、そのうちミサワ系転生者とかも出てくると思うわよ」
「……三沢(エアーマン)系?」
「そっちじゃなくて、地獄のミサワ系。「うわー介入したくないのに介入しちゃったわー」的なあれよ」
「……あー、いるいる」

「―――界に転生した人は、総じて運に異常ともいえる補正がかかっています。これはアイシア様も例外ではありません」
「え、私も?」
「……アイシア様、自覚なかったのですか?」
「え? あ……うん……」

 ないのかよ。……と思っていたら、クレナが私に目をやった……なるほど、そういうことね。

「……アイシアも自覚がなかったんじゃなくて、この世界の生き物が誰もかも運がいいんでしょう。それはつまり、外の世界から来た私達にとっては必然的に不利……そういうことでしょ?」
「はい、その通りです。事前に渡したそれによって、多少は運に補正を掛けていますが……」
「……とどかないのね」
「申し訳ありません……」

 御都合主義(マテリアル・トランサー)補正を掛けても、私達の幸運度には限度があった……自分で考えて悲しくなってきたわ。
 あるいは、そもそも幸運度そのものが運命に反するものだから、台本(うんめい)を司る舞台装置にはそれ関連が総じて苦手なのかも。……うん、私はそう考えましょう。こっちの方がいい。

「さて、私から話すべきことは以上です。質問がなければ、DEMとの通信を終了し、第1正常モードから第2正常モードへと移行します」
「通信してたの!?」

 ああ、だから機械的な表情になってたのか……。

「……じゃあ、最後に質問」
「はい、天河様」
「今は原作……"ELYSION"で言うとどの辺になってるの?」

 ここを一番聞いておきたかった。

「そうですね……今は"ELYSION"の第1話が終わった頃だと思います。今テレビをつければ、それに関連したニュースを見られると思いますよ」

 それを聞き、アイシアが即座にテレビのリモコンをとって電源を入れた。

『……て、今年の受験生はどのような傾向がありますか?』
『そうですね……今年は、自分のデッキに愛されたデュエリストが例年に比べて比較的多く感じましたね。今年の新入生は、きっと一波乱起こしてくれると思います』
『そうですか。というわけで、本日はデュエルアカデミア日本校試験総監督の武藤零次さんにお越しいただきました。本日は、誠にありがとうございました!』
『いえいえ、こちらこそ』
『以上、ラメイソンホールより浮橋(うきはし)がお送りしました!』
『では、次のニュースです。……』

「……2人とも、とりあえず質問は大丈夫よね」
「あ、はい」
「大丈夫だよ」
「よし。お疲れさま、クレナ」
「了解しました。"Deus_ex_Machina"との通信を終了、これより第2正常モードへと移行します……」

 役目を終え、開かれ続けていた瞳がようやく閉じられていく。

「……寝ちゃったね」
「えー……?」

 第2→第1は起きたままだったのに、なんで第1→第2だと寝ちゃうのよ……。


『……と、ここで速報です。 本日13日未明、御瀬路自然公園において、謎の焼死体が発見されました』


「……あ」

 忘れてた。あの死体、公園に放置したままだった。

『焼死体の左腕に鎖の付いたデュエルディスクがついていたことから、警察は殺人事件として捜査を進めています』

「……とりあえず、明日は私達の分のデュエルディスクを集めることになるのかしら?」
「うん、そうなるね。さすがに決闘展装(デュエル・トランサー)を大っぴらに使うのはまずいよ」
「じゃ、決まりね!」

 蓮が殺人をしたという事実には触れないでおこう。味方の古傷をえぐっても、いいことなんて1つもない。

「それじゃ、沙耶ちゃんとクレナちゃんで作ったお鍋食べよっか!」
「「了解!」」
「……了解です」

 ゆみなが落ち込んでしまっていた。自分で作ってた料理が一品も並んでないんだもの。

「あー……ごめん、ゆみな」
「いえ、風見君のせいじゃないですよ……」
「クレナちゃん、起きて。晩ごはんできてるよ」
「んぅ……おはようございます、アイシア様」

 こうして、異世界1日目の夜は幕を閉じていく。
 ……遊戯王が世界の中心となった、そんな世界。これから先、私達はきっと面白い体験をすることになる。現実では味わえないような、そんな素晴らしい体験を。

 そう。

  ―――それはきっと、奪われた台本を取り戻す物語。



    to be conti「「あ」」「「……え?」」


「忘れてました! お母様に連絡を……っ!」
「ちょっと待って、忘れてた! 大学の期末試験これからなんだけど!?」

「ああ、どのみち俺達は死ぬのか。社会的に……」
「ご、ごめんなさい………」

 ……早く終わらせて私達の世界に戻りましょう。
 だって、死ぬ! 死んでないけど私達の将来が死んじゃうから―――!


 PROLOGUE EDITION Volume.1
 NEXT : TRICLE STARGAZER


  go to th"E" ne"X"t ch"A"pter ... 
 

 
後書き
プロローグはこれにて終了。
この後からは第1章"TRICLE STARGAZER"の始まりです。 
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