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遊戯王EXA - elysion cross anothers -
作者：月詠クレス
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ページ下へ移動PROLOGUE EDITION Volume.1
PE01-JP004《このカードはノンフィクションです》
―――― Turn.3 End Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/4000 HAND/1
◇《セイクリッド・オメガ》ATK/2400
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-1
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/4
◇《トラゴエディア》DEF/2400
◇set card/mo-0,ma-0
「私のターン、ドロー！」
Turn.4 Player/Aisia Elysion
1st/Saya Amakawa
LP/4000 HAND/1
2nd/Aisia Elysion
LP/ 800 HAND/4→5
……急に寒気を感じた。
嫌な予感がする。それも、思いっきりに凶悪な……！
「《トラゴエディア》の効果を発動！ 私の墓地のモンスターのレベルをエンドフェイズまでこのモンスターにコピーする！我、汝ノ無念ヲ嘆カン ！」
魔物の影に代行者の影が描かれる。……へえ、レベル調整効果って、こんな感じなんだ。
トラゴエディア
☆１０→２ DEF/？→3000
「そして、手札から《ジャンク・シンクロン》を召喚！」
彼女の場に、マフラーをした修理士が飛び出してきた。案外汎用性高いのよね、こいつ。
ジャンク・シンクロン ☆３Ｔ ATK/1300
「《ジャンク・シンクロン》が召喚に成功したとき、墓地にいるレベル２以下のモンスターを守備表示で特殊召喚できる！ この効果で、私はレベル２チューナー《神秘の代行者アース》を特殊召喚！」
アイシアの場に、再び例の男の娘が現れる。
神秘の代行者アース
☆２Ｔ DEF/800
「さらに手札の《ＴＧ ワーウルフ》の効果を発動、特殊召喚！」
「２枚目！？」
そして、さっきの半分機械な狼が並び立った。
ＴＧ ワーウルフ
☆３ DEF/ 0
……ここまで並んだところで、私は気づいた。
あいつの残り手札は３枚。その３枚は間違いなく現時点で既に正体が《創造の代行者ヴィーナス》《大天使クリスティア》《ＴＧ ストライカー》と確定している。
……つまり、《朱光の宣告者》はまだ手札に来ていない。さっきの"シェラタン"の効果も、無効にしなかったんじゃなくて無効にできなかったんだ。これは、大きな情報アドバンテージなのではないだろうか？
「……行くよ、沙耶ちゃん！」
……この後すぐに約束されるであろう、目の前の惨劇は別にして。
「レベル２となった《トラゴエディア》にレベル３《ジャンク・シンクロン》をチューニング！」
人 の歴史 は科学 と共 に、時空 を繋 ぐ奇跡 を紡 ぐ！
司 りしは人々 の歩 み、万象 を記 す歴史書 の主 ！
☆２＋☆３＝☆５
シンクロ召喚 ！ 解 き放 て、時 の氾濫 ！
「来て、《ＴＧ ハイパー・ライブラリアン》！」
ＴＧ ハイパー・ライブラリアン
☆５ ATK/2400
「続けて、レベル３《ＴＧ ワーウルフ》にレベル２《神秘の代行者アース》をチューニング！」
人 の歴史 は科学 と共 に、時空 を繋 ぐ奇跡 を紡 ぐ！
司 りしは人々 の想 い、理 を描 く魔術 の管理者 ！
☆３＋☆２＝☆５
シンクロ召喚 ！ 解 き放 て、幻創 の調 ！
「来て、《ＴＧ ワンダー・マジシャン》！」
ＴＧ ワンダー・マジシャン
☆５ ATK/1900
瞬く間に、速攻でシンクロ召喚が行われていく。一体目はその手に本を携えた司書。二体目は紅い法衣を纏った魔女。
「この瞬間、《ＴＧ ハイパー・ライブラリアン》と《ＴＧ ワンダー・マジシャン》の効果発動！ "ワンダー・マジシャン"に"ハイパー・ライブラリアン"の効果をチェーン！ チェーン２でデッキから１枚ドロー、チェーン１で沙耶ちゃんのセットカードを破壊！」
私のセットしていた《スターライト・ロード》が、魔法少女の放った光を受けて砕け散る。
……風が、吹き始めた。向かい風が、秒間隔で強くなっていく。
気づけば、風は澄みながらも突風となっていた。
「レベル５《ＴＧ ハイパー・ライブラリアン》にレベル５《ＴＧ ワンダー・マジシャン》をチューニング」
突風の中、少女の姿が消えた。そして、彼女の声が響き渡る。
魔術 と科学 がすれ違 う。 対極 の力 が調和 する。
心 に刻 んだ風景 は、描 くその人 の証 となる。
私 の景色 は途絶 えぬ世界 。かつて夢見 た春風 と共 に。
☆５＋☆５＝☆１０
共鳴疾奏 。今 ここに、全 てを解 き放 つ！
突風の中、緑色の戦士と共に再び少女が姿を現す。
……少女の瞳は、赤から金色に変わっていた。
「……行くよ、《ＴＧ ブレード・ガンナー》！」
―――共鳴疾奏 。
それは、無我の境地 に到った者だけが会得する、新たなる可能性……なんてことはなく、シンクロモンスター同士のシンクロ召喚全般のことを一般的にそう呼ぶ。
ＴＧ ブレード・ガンナー
☆１０ ATK/3300
……やばい。こいつの効果、覚えてない。急いで手元の水晶盤 を使い、カードテキストを確認する。
《ＴＧ ブレード・ガンナー》
シンクロ・効果モンスター
星１０/―属性/――族/攻----/守----
シンクロモンスターのチューナー１体＋チューナー以外のシンクロモンスター１体以上
system error!
カードの参照は拒否されました
……うん、これはどういった了見なんだろうね？
「バトルフェイズ、《ＴＧ ブレード・ガンナー》で《セイクリッド・オメガ》で攻撃！」
深緑の機動戦士が、手に持つ銃剣を構える。
「実体剣－原子崩壊 ！」
その速度は、高速を超越し光速へと到る。
急激な接近に構えることさえ許されず、その星鎧に銃剣が突き立てられた。
「爆散 ！」
そして、爆風。その衝撃が、戦闘ダメージとなって私に襲いかかる。
「くうっ……！」
Saya LP/4000－ 900＝3100
「カードを１枚セットして、私はこれでターン終了だよ」
―――― Turn.4 End Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/3100 HAND/1
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-0
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/3
◇《ＴＧ ブレード・ガンナー》ATK/????
◇set card/mo-0,ma-1
……参ったわね。とても１ターン前までは私の優勢だったとは思えない光景だわ。
「……私のターン、ドロー！」
Turn.5 Player/Saya Amakawa
1st/Saya Amakawa
LP/3100 HAND/1→2
2nd/Aisia Elysion
LP/ 800 HAND/3
……あ。
「……なるほどね、こう来るのか」
このターンで終わらせられるカードを簡単に引けるほど、私は運がいい方じゃない。蓮かゆみなだったらあっさり引いてると思うけど。
……だけど、そこまで悪いカードでもなかった。大丈夫、このターンは戦える！
「《セイクリッド・ハワー》、召喚！」
私の場に描かれたのは蛇使い座。黄道十二星座の、隠された十三番目。そこから飛び出したのは、小さな魔法使い。蛇をかたどった杖を取り出し、構えをとった。
セイクリッド・ハワー
☆２ ATK/900
「《セイクリッド・ハワー》の効果。自身をリリースし、手札か墓地の"セイクリッド"を特殊召喚！」
魔法使いの体が一筋の光となって、天空へと昇っていく。光はやがて新たな形を作り出す。
「墓地から《セイクリッド・レオニス》を特殊召喚！」
作られたのは、獅子座の紋章。私の場に、蒼き獣が舞い戻る。
セイクリッド・レオニス
☆３ DEF/1800
「レオニスの効果を適用し、手札から《セイクリッド・カウスト》を通常召喚！」
そして、私の場に再び現れる、半人半馬の弓兵。
セイクリッド・カウスト
☆４ ATK/1800
「……どうするの？」
「ん、何が？」
「だって、レベルが違うでしょ？」
「ああ、そういうことね？」
"レオニス"のレベルは３、"カウスト"のレベルは４。確かに、今この状況では何もできない。だけど……
「簡単よ。レベルが違うなら、揃えればいい！」
光の矢が、天に向けて放たれた。真紅の矢は天に至り、やがて重力に引かれて降り注ぐ。光は弓兵の頭上で拡散。彼を包み込むように収束した。
セイクリッド・カウスト ☆４→３ ATK/1800
「！ レベルが……！？」
「これが《セイクリッド・カウスト》の効果。１ターンに２回まで、"セイクリッド"のレベルを１つ動かす。今みたいに下げてもいいし、逆に上げてもいい」
当然ながら、カウストはシンクロ素材に使えない。効果が効果だから仕方ないんだけども。
「いくわよ。光属性レベル３《セイクリッド・レオニス》《セイクリッド・カウスト》の２体をオーバーレイ！」
我 刻 みしは聖 なる剣 、悪 しき骸 への裁 きの光 ！
希望 を束 ねし星騎士 よ、虚 ろをかき消 す標 となれ！
☆３×☆３＝★３
エクシーズ召喚 ！ 捕縛 せよ、天蓋 の星鎖 ！
「《セイクリッド・ヒアデス》、光臨！」
二つの光が天に昇り、光の道を描きだす。
それを辿り現れたのは、両手に巨大なクナイを構えた騎士。白い鎧には金色と緋色が走り、彼の得物には紅光の輪がついていた。
セイクリッド・ヒアデス
★３／２ ATK/1900
「《セイクリッドの星痕》の効果で１枚ドロー！ そして、《セイクリッド・ヒアデス》の効果発動！拘束する緋刃の光鎖 ！！」
二本の剣、その片方が敵陣に投げつけられる。それぞれに付けられた真紅の光輪が共鳴し、剣の軌跡は緋色の鎖に具現した。
セイクリッド・ヒアデス
★３／２→１ ATK/1900
投擲された剣は不規則な軌道を描いていく。鎖は敵陣の上空を覆い、不規則な網状を描いた。
やがて、投げられたそれは騎士の手元に戻る。同時に、光の網は敵を地に墜とす鎖となった。
「……っ、"ブレード・ガンナー"！！」
ＴＧ ブレード・ガンナー
☆１０ ATK→DEF/2200
「《セイクリッド・ヒアデス》の効果。相手のモンスターを、全て表側守備表示にする」
……よかった。守備力は２２００、これなら"あいつ"で突破できる！
深呼吸し、心を落ち着ける。
特に意味はないけど、なんとなく……ね。
「今引いた２枚目の"星痕"を発動するわ」
天空に描かれた星痕が、さらに輝きを増す。
……時は満ちた。全力を以って、対象を駆逐する！
「"セイクリッド"ランク３《セイクリッド・ヒアデス》、オーバーレイ再 構 築 」
星痕の描かれた、紺碧の空。描かれたのは、何重にも重なった魔法陣。そこから降り注ぐ、光。
我 刻 みしは聖 なる剣 、悪 しき骸 への裁 きの光 。
天 に祀 られし希望 の龍 よ、運命 を砕 く奇跡 となれ。
★３＞ Re-Birth ＞★Ｘ
氾濫 せよ、救済 の光 。 "覚星転界 "。
「……《セイクリッド・トレミスＭ７》、光臨 ！」
光、光、光、光。私の視界を飲み込んでいく、白。
……私が視界を取り戻した時、目の前には星騎士 の聖鎧に覆われた、黄金と白銀の翼龍が。
強い意志が作り出した奇跡―――星嵐の救世龍 が、そこにいた。
セイクリッド・トレミスＭ７
★６／２ ATK/2700
「覚星転界 ……！？」
「あれ、知らなかった？ ……ごめん、説明は後でするから。とりあえず"星痕"の効果で１枚ドロー」
デッキから、１枚のカードをドローする。……ああ、こう来たか。悪くはないけど、今欲しいカードではなかった。
「バトルフェイズ。《セイクリッド・トレミスＭ７》で《ＴＧ ブレード・ガンナー》を攻撃！」
光の龍が、天空へと舞い上がる。開かれた口に、星の光が集まっていく。
「悠久守護す星龍の咆哮 ！！」
集められた輝きは、光条となって降り注ぐ。それは、まさに流星群の如く。鎖に縛り付けられた緑の機兵を、瞬く間に飲み込んでいった。
……ちょっと待て。
「セットカードが、消えている……！？」
慌てて私の場を確認する。……しかし、変化はどこにも見られない。アイシアの発動したカードが、全く予想できない。
「《セイクリッド・トレミスＭ７》が攻撃してきたとき、私は２ 枚のカードを発動していたの」
……こんどは"発動していた"かよ。それに、２枚って……
「まさか、"ブレード・ガンナー"の効果も同時に発動したってこと！？」
「うん！ １枚目は《ＴＧ ブレード・ガンナー》の効果。相手のターンに墓地の"ＴＧ"を除外することで、私のスタンバイフェイズまで除外する！」
ああ、やっと思い出した。こいつのテキスト、全部……！
「そして、２枚目はリバースカード《ガード・ブロック》！」
ちょ、遊戯王２次小説の便利カードじゃない！ 採用率少ないのに何故か小説では多用される謎カード！
「戦闘ダメージを０にして、デッキからカードを１枚ドローする！」
そう言って、アイシアはデッキから１枚のカードをドローした。
「……カードを１枚セットして、ターンを終了するわ」
やばい、ろくに反撃も出来なかった……！
―――― Turn.5 End Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/3100 HAND/0
◇《セイクリッド・トレミスＭ７》ATK/2700
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-1
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0
「私のターン、ドロー！」
Turn.6 Player/Aisia Elysion
1st/Saya Amakawa
LP/3100 HAND/0
2nd/Aisia Elysion
LP/ 800 HAND/5→6
……さて、私のセットしたカードは。間違いなく、この世界では利用価値のないものだろう。少なくとも、こんな大詰めの場面で使っていいようなカードじゃない。
「スタンバイフェイズ、《ＴＧ ブレード・ガンナー》は私の場に特殊召喚される！」
第一、制限でもないのにデュエル中に１回程度しか使えない。このカードは、それ相応の覚悟を持って発動しないといけない。この世界では、特に。
「戻ってきて、"ブレード・ガンナー"！」
それに、さ。
Saya LP/3100－2000＝1100
……空気、読めてないじゃない？
「……"ブレード・ガンナー"？」
「戻ってこないわよ」
……そう、戻ってくるはずがない。次元の狭間に囚われたまま、戦線に復帰することは二度とない。
私の場で、１枚のカードが表になっている。きっと、この世界で生きる人には見覚えのないカードなんだろう。
……いや、転生者ならば前世でたくさん見てきたはずだ。【ＴＧ代行】を使っている彼女が、このカードを知らないはずがない―――！
「《神の警告》……！？」
「Ｅｘａｃｔｒｙ．《ＴＧ ブレード・ガンナー》の特 殊 召 喚 す る 効 果 を 無 効 に し た わ。２０００ライフをコストに、ね」
ああ、だから嫌だったんだ。
こうなることぐらい、目に見えてたはずなのに。
そして、このターンで終わってしまうってことも……！
「……メインフェイズ、カードを２枚セットします」
……あれ、メイン１にセット？ということは、このターンの攻撃は無し……？
「……そして、手札から魔法カード《天よりの宝札》を発動！」
…………はい？
え、いや、ちょっと待て？
あの壊れカード！？ あれを発動するって言ったのか！？ いやいやいやいや、ちょっと待ちなさいよ！？ いくら劣勢だからって…いや劣勢なのって、むしろ私じゃないの！？ って、そうじゃない！ 私は"この世界にはＯＣＧになったカードしか存在しない"って、そう思い込んでいただけってこと！？ だとしたら、この世界は―――
「手札とフィールドのカードを全て除外し、デッキからカードを２枚ドロー！」
《天 よりの宝札 》
通常魔法（ＯＣＧ効果）
自分の手札と自分フィールド上に存在する全てのカードをゲームから除外する。
自分の手札が２枚になるようにカードをドローする。
……ごめん。なんか、ごめん。
「ＯＣＧかよ！？」
「え！？ ＯＣＧって……他に何かあるの？」
「え？ ……あー。いや、知らないならそのままでいて。お願いだから」
「う、うん……。それじゃ、２枚ドロー！」
そういって、アイシアがデッキから２枚のカードを引く。
「……ありがとう、来てくれて」
ありがとうごさいました、いいデュエルでした。
「墓地の《ＴＧ ワンダー・マジシャン》と《トラゴエディア》を除外！」
光と闇が混ざり合う。その狭間、時空を歪めて一人の剣士が降り立った。
凛々しいその姿に、私は神々しい威光を錯覚した。
「来て、《カオス・ソルジャー －開闢の使者－》……！」
カオス・ソルジャー －開闢の使者－
☆８ ATK/3000
「バトルフェイズ！ "開闢の使者"で"トレミスＭ７"を攻撃！」
混沌の騎士が、その剣を天にかざす。聖なる光が剣に宿り、鋼よりも鋭い刃を成す。
「天地開闢 ・天聖奏覇斬 ！！」
光の剣閃が大きく弧を描いた。その刃は一撃で星龍の首を両断し、生じた衝撃波は巨体をバラバラに切り刻んだ。
Saya LP/1100－ 300＝ 800
そして、流れるように放たれる第二撃。その返しの刃が、今度は斬撃を私に向け……。
Saya LP/ 800-3000= 0
―――― Turn.6 Battle Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/ 0 HAND/0
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-0
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/1
◇《カオス・ソルジャー －開闢の使者－》ATK/3000
◇set card/mo-0,ma-0
Aisia WIN
― ― ― ― ― ― ― ―
ソリッドビジョンが役目を終え、星痕の映える星空は夕焼けに戻った。
……てか、いつの間にこんな時間経ってたんだ。全く気がつかなかったわ……。
「……ふう。やっぱりライフ４０００は少ないわね……」
《神の警告》のコストが重すぎたわね……。いや、無くても終わってたけど。
初期ライフ４０００、その半分は２０００。開始時点で既に《神の宣告》にコストが並び、以降はほぼ確実にコストはそれを凌駕する。こっちの世界では、間違いなく採用されてないだろう。
「沙耶ちゃん、本当に面白いカード使うんだね」
「え、そう……よね。こっちは初期ライフ４０００だもんね」
「だって、みんな《神の宣告》入れてるよ？」
「……うん。どっちも入れてるわ、私」
「ええ！？」
うーん、そこまで驚くことか……？
「だったらアイシアこそ。ビックリしたわよ、《天よりの宝札》なんて……」
「え、３枚積み必須カードだよ！？」
「はあ！？」
原作では最高６枚ドローという壊れカード、一転してＯＣＧではとても宝 札 とは言えない弱カード。本当に、どうしてああなったのか……。
「そうだ。沙耶ちゃん、さっき"おーしー"がどうとか…」
「ああ、それね。それは―――」
そう口を開いたところで、別の声によって遮られた。
「……エリュシオン様？」
「あっ！ ありがとね、クレナちゃん！」
声の主は、私達をこの世界に召喚した黒髪の少女だった。
「……あんたの名前、クレナっていうのね」
「あれ？ クレナちゃん、自己紹介してなかったの？」
「申し訳ありません。実は……」
そう断りを入れ、クレナはこれまでの経緯を語り始め「先輩！」しかしそれは、ゆみなによって遮られた。おい、説明させてあげろよ。
「夜神さんが私の目の前で消えてしまいました！」
「あ、やっぱり消えちゃった？」
ゆみなの発言は、アイシアにとってはあたかも予想していたかのように返される。
「アイシア、"やっぱり"って……？」
「うん。神様的には、なんとしてでも原作に介入させたかったんじゃない？」
「だったら……なんで消えたのよ？」
「私達が夜神さんを拘束するとでも思ったんでしょうか……？」
「それもあるかもしれないけど、今回は違うんじゃないかな。だって―――」
この直後に放たれた一言に、私とゆみなは言葉を失ってしまった。
「アカデミアの受験、今日だもん」
………うん、ちょっと待て。
to be continued...
ページ上へ戻る1st/Saya Amakawa
◇LP/4000 HAND/1
◇《セイクリッド・オメガ》ATK/2400
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-1
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/4
◇《トラゴエディア》DEF/2400
◇set card/mo-0,ma-0
「私のターン、ドロー！」
Turn.4 Player/Aisia Elysion
1st/Saya Amakawa
LP/4000 HAND/1
2nd/Aisia Elysion
LP/ 800 HAND/4→5
……急に寒気を感じた。
嫌な予感がする。それも、思いっきりに凶悪な……！
「《トラゴエディア》の効果を発動！ 私の墓地のモンスターのレベルをエンドフェイズまでこのモンスターにコピーする！
魔物の影に代行者の影が描かれる。……へえ、レベル調整効果って、こんな感じなんだ。
トラゴエディア
☆１０→２ DEF/？→3000
「そして、手札から《ジャンク・シンクロン》を召喚！」
彼女の場に、マフラーをした修理士が飛び出してきた。案外汎用性高いのよね、こいつ。
ジャンク・シンクロン ☆３Ｔ ATK/1300
「《ジャンク・シンクロン》が召喚に成功したとき、墓地にいるレベル２以下のモンスターを守備表示で特殊召喚できる！ この効果で、私はレベル２チューナー《神秘の代行者アース》を特殊召喚！」
アイシアの場に、再び例の男の娘が現れる。
神秘の代行者アース
☆２Ｔ DEF/800
「さらに手札の《ＴＧ ワーウルフ》の効果を発動、特殊召喚！」
「２枚目！？」
そして、さっきの半分機械な狼が並び立った。
ＴＧ ワーウルフ
☆３ DEF/ 0
……ここまで並んだところで、私は気づいた。
あいつの残り手札は３枚。その３枚は間違いなく現時点で既に正体が《創造の代行者ヴィーナス》《大天使クリスティア》《ＴＧ ストライカー》と確定している。
……つまり、《朱光の宣告者》はまだ手札に来ていない。さっきの"シェラタン"の効果も、無効にしなかったんじゃなくて無効にできなかったんだ。これは、大きな情報アドバンテージなのではないだろうか？
「……行くよ、沙耶ちゃん！」
……この後すぐに約束されるであろう、目の前の惨劇は別にして。
「レベル２となった《トラゴエディア》にレベル３《ジャンク・シンクロン》をチューニング！」
☆２＋☆３＝☆５
シンクロ
「来て、《ＴＧ ハイパー・ライブラリアン》！」
ＴＧ ハイパー・ライブラリアン
☆５ ATK/2400
「続けて、レベル３《ＴＧ ワーウルフ》にレベル２《神秘の代行者アース》をチューニング！」
☆３＋☆２＝☆５
シンクロ
「来て、《ＴＧ ワンダー・マジシャン》！」
ＴＧ ワンダー・マジシャン
☆５ ATK/1900
瞬く間に、速攻でシンクロ召喚が行われていく。一体目はその手に本を携えた司書。二体目は紅い法衣を纏った魔女。
「この瞬間、《ＴＧ ハイパー・ライブラリアン》と《ＴＧ ワンダー・マジシャン》の効果発動！ "ワンダー・マジシャン"に"ハイパー・ライブラリアン"の効果をチェーン！ チェーン２でデッキから１枚ドロー、チェーン１で沙耶ちゃんのセットカードを破壊！」
私のセットしていた《スターライト・ロード》が、魔法少女の放った光を受けて砕け散る。
……風が、吹き始めた。向かい風が、秒間隔で強くなっていく。
気づけば、風は澄みながらも突風となっていた。
「レベル５《ＴＧ ハイパー・ライブラリアン》にレベル５《ＴＧ ワンダー・マジシャン》をチューニング」
突風の中、少女の姿が消えた。そして、彼女の声が響き渡る。
☆５＋☆５＝☆１０
突風の中、緑色の戦士と共に再び少女が姿を現す。
……少女の瞳は、赤から金色に変わっていた。
「……行くよ、《ＴＧ ブレード・ガンナー》！」
―――
それは、
ＴＧ ブレード・ガンナー
☆１０ ATK/3300
……やばい。こいつの効果、覚えてない。急いで手元の
《
シンクロ・効果モンスター
星１０/―属性/――族/攻----/守----
シンクロモンスターのチューナー１体＋チューナー以外のシンクロモンスター１体以上
system error!
カードの参照は拒否されました
……うん、これはどういった了見なんだろうね？
「バトルフェイズ、《ＴＧ ブレード・ガンナー》で《セイクリッド・オメガ》で攻撃！」
深緑の機動戦士が、手に持つ銃剣を構える。
「
その速度は、高速を超越し光速へと到る。
急激な接近に構えることさえ許されず、その星鎧に銃剣が突き立てられた。
「
そして、爆風。その衝撃が、戦闘ダメージとなって私に襲いかかる。
「くうっ……！」
Saya LP/4000－ 900＝3100
「カードを１枚セットして、私はこれでターン終了だよ」
―――― Turn.4 End Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/3100 HAND/1
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-0
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/3
◇《ＴＧ ブレード・ガンナー》ATK/????
◇set card/mo-0,ma-1
……参ったわね。とても１ターン前までは私の優勢だったとは思えない光景だわ。
「……私のターン、ドロー！」
Turn.5 Player/Saya Amakawa
1st/Saya Amakawa
LP/3100 HAND/1→2
2nd/Aisia Elysion
LP/ 800 HAND/3
……あ。
「……なるほどね、こう来るのか」
このターンで終わらせられるカードを簡単に引けるほど、私は運がいい方じゃない。蓮かゆみなだったらあっさり引いてると思うけど。
……だけど、そこまで悪いカードでもなかった。大丈夫、このターンは戦える！
「《セイクリッド・ハワー》、召喚！」
私の場に描かれたのは蛇使い座。黄道十二星座の、隠された十三番目。そこから飛び出したのは、小さな魔法使い。蛇をかたどった杖を取り出し、構えをとった。
セイクリッド・ハワー
☆２ ATK/900
「《セイクリッド・ハワー》の効果。自身をリリースし、手札か墓地の"セイクリッド"を特殊召喚！」
魔法使いの体が一筋の光となって、天空へと昇っていく。光はやがて新たな形を作り出す。
「墓地から《セイクリッド・レオニス》を特殊召喚！」
作られたのは、獅子座の紋章。私の場に、蒼き獣が舞い戻る。
セイクリッド・レオニス
☆３ DEF/1800
「レオニスの効果を適用し、手札から《セイクリッド・カウスト》を通常召喚！」
そして、私の場に再び現れる、半人半馬の弓兵。
セイクリッド・カウスト
☆４ ATK/1800
「……どうするの？」
「ん、何が？」
「だって、レベルが違うでしょ？」
「ああ、そういうことね？」
"レオニス"のレベルは３、"カウスト"のレベルは４。確かに、今この状況では何もできない。だけど……
「簡単よ。レベルが違うなら、揃えればいい！」
光の矢が、天に向けて放たれた。真紅の矢は天に至り、やがて重力に引かれて降り注ぐ。光は弓兵の頭上で拡散。彼を包み込むように収束した。
セイクリッド・カウスト ☆４→３ ATK/1800
「！ レベルが……！？」
「これが《セイクリッド・カウスト》の効果。１ターンに２回まで、"セイクリッド"のレベルを１つ動かす。今みたいに下げてもいいし、逆に上げてもいい」
当然ながら、カウストはシンクロ素材に使えない。効果が効果だから仕方ないんだけども。
「いくわよ。光属性レベル３《セイクリッド・レオニス》《セイクリッド・カウスト》の２体をオーバーレイ！」
☆３×☆３＝★３
エクシーズ
「《セイクリッド・ヒアデス》、光臨！」
二つの光が天に昇り、光の道を描きだす。
それを辿り現れたのは、両手に巨大なクナイを構えた騎士。白い鎧には金色と緋色が走り、彼の得物には紅光の輪がついていた。
セイクリッド・ヒアデス
★３／２ ATK/1900
「《セイクリッドの星痕》の効果で１枚ドロー！ そして、《セイクリッド・ヒアデス》の効果発動！
二本の剣、その片方が敵陣に投げつけられる。それぞれに付けられた真紅の光輪が共鳴し、剣の軌跡は緋色の鎖に具現した。
セイクリッド・ヒアデス
★３／２→１ ATK/1900
投擲された剣は不規則な軌道を描いていく。鎖は敵陣の上空を覆い、不規則な網状を描いた。
やがて、投げられたそれは騎士の手元に戻る。同時に、光の網は敵を地に墜とす鎖となった。
「……っ、"ブレード・ガンナー"！！」
ＴＧ ブレード・ガンナー
☆１０ ATK→DEF/2200
「《セイクリッド・ヒアデス》の効果。相手のモンスターを、全て表側守備表示にする」
……よかった。守備力は２２００、これなら"あいつ"で突破できる！
深呼吸し、心を落ち着ける。
特に意味はないけど、なんとなく……ね。
「今引いた２枚目の"星痕"を発動するわ」
天空に描かれた星痕が、さらに輝きを増す。
……時は満ちた。全力を以って、対象を駆逐する！
「"セイクリッド"ランク３《セイクリッド・ヒアデス》、オーバーレイ
星痕の描かれた、紺碧の空。描かれたのは、何重にも重なった魔法陣。そこから降り注ぐ、光。
★３＞ Re-Birth ＞★Ｘ
「……《セイクリッド・トレミスＭ７》、
光、光、光、光。私の視界を飲み込んでいく、白。
……私が視界を取り戻した時、目の前には
強い意志が作り出した奇跡―――
セイクリッド・トレミスＭ７
★６／２ ATK/2700
「
「あれ、知らなかった？ ……ごめん、説明は後でするから。とりあえず"星痕"の効果で１枚ドロー」
デッキから、１枚のカードをドローする。……ああ、こう来たか。悪くはないけど、今欲しいカードではなかった。
「バトルフェイズ。《セイクリッド・トレミスＭ７》で《ＴＧ ブレード・ガンナー》を攻撃！」
光の龍が、天空へと舞い上がる。開かれた口に、星の光が集まっていく。
「
集められた輝きは、光条となって降り注ぐ。それは、まさに流星群の如く。鎖に縛り付けられた緑の機兵を、瞬く間に飲み込んでいった。
……ちょっと待て。
「セットカードが、消えている……！？」
慌てて私の場を確認する。……しかし、変化はどこにも見られない。アイシアの発動したカードが、全く予想できない。
「《セイクリッド・トレミスＭ７》が攻撃してきたとき、私は
……こんどは"発動していた"かよ。それに、２枚って……
「まさか、"ブレード・ガンナー"の効果も同時に発動したってこと！？」
「うん！ １枚目は《ＴＧ ブレード・ガンナー》の効果。相手のターンに墓地の"ＴＧ"を除外することで、私のスタンバイフェイズまで除外する！」
ああ、やっと思い出した。こいつのテキスト、全部……！
「そして、２枚目はリバースカード《ガード・ブロック》！」
ちょ、遊戯王２次小説の便利カードじゃない！ 採用率少ないのに何故か小説では多用される謎カード！
「戦闘ダメージを０にして、デッキからカードを１枚ドローする！」
そう言って、アイシアはデッキから１枚のカードをドローした。
「……カードを１枚セットして、ターンを終了するわ」
やばい、ろくに反撃も出来なかった……！
―――― Turn.5 End Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/3100 HAND/0
◇《セイクリッド・トレミスＭ７》ATK/2700
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-1
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/5
◇set card/mo-0,ma-0
「私のターン、ドロー！」
Turn.6 Player/Aisia Elysion
1st/Saya Amakawa
LP/3100 HAND/0
2nd/Aisia Elysion
LP/ 800 HAND/5→6
……さて、私のセットしたカードは。間違いなく、この世界では利用価値のないものだろう。少なくとも、こんな大詰めの場面で使っていいようなカードじゃない。
「スタンバイフェイズ、《ＴＧ ブレード・ガンナー》は私の場に特殊召喚される！」
第一、制限でもないのにデュエル中に１回程度しか使えない。このカードは、それ相応の覚悟を持って発動しないといけない。この世界では、特に。
「戻ってきて、"ブレード・ガンナー"！」
それに、さ。
Saya LP/3100－2000＝1100
……空気、読めてないじゃない？
「……"ブレード・ガンナー"？」
「戻ってこないわよ」
……そう、戻ってくるはずがない。次元の狭間に囚われたまま、戦線に復帰することは二度とない。
私の場で、１枚のカードが表になっている。きっと、この世界で生きる人には見覚えのないカードなんだろう。
……いや、転生者ならば前世でたくさん見てきたはずだ。【ＴＧ代行】を使っている彼女が、このカードを知らないはずがない―――！
「《神の警告》……！？」
「Ｅｘａｃｔｒｙ．《ＴＧ ブレード・ガンナー》の
ああ、だから嫌だったんだ。
こうなることぐらい、目に見えてたはずなのに。
そして、このターンで終わってしまうってことも……！
「……メインフェイズ、カードを２枚セットします」
……あれ、メイン１にセット？ということは、このターンの攻撃は無し……？
「……そして、手札から魔法カード《天よりの宝札》を発動！」
…………はい？
え、いや、ちょっと待て？
あの壊れカード！？ あれを発動するって言ったのか！？ いやいやいやいや、ちょっと待ちなさいよ！？ いくら劣勢だからって…いや劣勢なのって、むしろ私じゃないの！？ って、そうじゃない！ 私は"この世界にはＯＣＧになったカードしか存在しない"って、そう思い込んでいただけってこと！？ だとしたら、この世界は―――
「手札とフィールドのカードを全て除外し、デッキからカードを２枚ドロー！」
《
通常魔法（ＯＣＧ効果）
自分の手札と自分フィールド上に存在する全てのカードをゲームから除外する。
自分の手札が２枚になるようにカードをドローする。
……ごめん。なんか、ごめん。
「ＯＣＧかよ！？」
「え！？ ＯＣＧって……他に何かあるの？」
「え？ ……あー。いや、知らないならそのままでいて。お願いだから」
「う、うん……。それじゃ、２枚ドロー！」
そういって、アイシアがデッキから２枚のカードを引く。
「……ありがとう、来てくれて」
ありがとうごさいました、いいデュエルでした。
「墓地の《ＴＧ ワンダー・マジシャン》と《トラゴエディア》を除外！」
光と闇が混ざり合う。その狭間、時空を歪めて一人の剣士が降り立った。
凛々しいその姿に、私は神々しい威光を錯覚した。
「来て、《カオス・ソルジャー －開闢の使者－》……！」
カオス・ソルジャー －開闢の使者－
☆８ ATK/3000
「バトルフェイズ！ "開闢の使者"で"トレミスＭ７"を攻撃！」
混沌の騎士が、その剣を天にかざす。聖なる光が剣に宿り、鋼よりも鋭い刃を成す。
「
光の剣閃が大きく弧を描いた。その刃は一撃で星龍の首を両断し、生じた衝撃波は巨体をバラバラに切り刻んだ。
Saya LP/1100－ 300＝ 800
そして、流れるように放たれる第二撃。その返しの刃が、今度は斬撃を私に向け……。
Saya LP/ 800-3000= 0
―――― Turn.6 Battle Phase ――――
1st/Saya Amakawa
◇LP/ 0 HAND/0
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇《セイクリッドの星痕》 CONTINUOUS
◇set card/mo-0,ma-0
2nd/Aisia Elysion
◇LP/ 800 HAND/1
◇《カオス・ソルジャー －開闢の使者－》ATK/3000
◇set card/mo-0,ma-0
Aisia WIN
― ― ― ― ― ― ― ―
ソリッドビジョンが役目を終え、星痕の映える星空は夕焼けに戻った。
……てか、いつの間にこんな時間経ってたんだ。全く気がつかなかったわ……。
「……ふう。やっぱりライフ４０００は少ないわね……」
《神の警告》のコストが重すぎたわね……。いや、無くても終わってたけど。
初期ライフ４０００、その半分は２０００。開始時点で既に《神の宣告》にコストが並び、以降はほぼ確実にコストはそれを凌駕する。こっちの世界では、間違いなく採用されてないだろう。
「沙耶ちゃん、本当に面白いカード使うんだね」
「え、そう……よね。こっちは初期ライフ４０００だもんね」
「だって、みんな《神の宣告》入れてるよ？」
「……うん。どっちも入れてるわ、私」
「ええ！？」
うーん、そこまで驚くことか……？
「だったらアイシアこそ。ビックリしたわよ、《天よりの宝札》なんて……」
「え、３枚積み必須カードだよ！？」
「はあ！？」
原作では最高６枚ドローという壊れカード、一転してＯＣＧではとても
「そうだ。沙耶ちゃん、さっき"おーしー"がどうとか…」
「ああ、それね。それは―――」
そう口を開いたところで、別の声によって遮られた。
「……エリュシオン様？」
「あっ！ ありがとね、クレナちゃん！」
声の主は、私達をこの世界に召喚した黒髪の少女だった。
「……あんたの名前、クレナっていうのね」
「あれ？ クレナちゃん、自己紹介してなかったの？」
「申し訳ありません。実は……」
そう断りを入れ、クレナはこれまでの経緯を語り始め「先輩！」しかしそれは、ゆみなによって遮られた。おい、説明させてあげろよ。
「夜神さんが私の目の前で消えてしまいました！」
「あ、やっぱり消えちゃった？」
ゆみなの発言は、アイシアにとってはあたかも予想していたかのように返される。
「アイシア、"やっぱり"って……？」
「うん。神様的には、なんとしてでも原作に介入させたかったんじゃない？」
「だったら……なんで消えたのよ？」
「私達が夜神さんを拘束するとでも思ったんでしょうか……？」
「それもあるかもしれないけど、今回は違うんじゃないかな。だって―――」
この直後に放たれた一言に、私とゆみなは言葉を失ってしまった。
「アカデミアの受験、今日だもん」
………うん、ちょっと待て。
to be continued...
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