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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜

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第四章 再開
  第30話 戻って来た日常



俺は.....夢を見た































生半可なものじゃなく、すべてがはっきりとしていた




コンクリートの地面を踏む感覚




夜の空気の味




どこかの家の犬の吠える声




自分が今どこにいるのか




これから何をしようとしているのか




何故...冷や汗をかいているのか




俺はある建物へとたどり着いた







現実か夢かわからないくらい....鮮明だった


































扉を開けた時、彼は戦慄した




外から漏れていた呻き声、鳴き声、怒声、意志のある声




今まで生きてきた世界はとても平穏で暖かいものだった




これから踏み入れる先のこと世界は常識なんて通じない




どんなに怖くても




どんなに辛くても




どんなに逃げ出したくても




尻尾を掴まれたらそれで終わりなのだ




助けてと叫んだところで誰も助けてくれるわけでもない




相手は待ってくれないのだから










古ぼけた建物....廃工場とでも言うべきか




コツ......コツ.......コツ......




彼はゆっくりと足を踏み入れる




パシャ.....




「っ!?......ぅ......あ」




彼は叫ぶ事すらままならなかった




初めての連発で気が動転している




辛うじて理性は保っているものの、ちょっと啄けばガラガラと音を立てて崩れ落ちるだろう




足元を赤で満たす《ソレ》は今現在どんな状況を示しているのか




たった10歳の彼の頭でも理解できた




視線を足元から正面へ変わり、ぐるりと360°見渡す




形、大きさは違えども《ガラクタ》は十数体はあったと思う




ゴロゴロと転がる《ガラクタ》は見るに耐えられない悲惨は姿へと変容している




彼から少し離れたところにある《ガラクタ》には立って歩くための《部品》が無かった




その近くに転がっている《ガラクタ》には物を掴んだりする為の10本の《部品》と世界を見渡す2つの《部品》が無かった




1番酷いと思ったのはその奥にある《ガラクタ》だった




四肢という《部品》がもぎ取られ中身が丸見えで

さらには《ガラクタ》で最も大切な《概念》は鈍器か何かでめちゃくちゃにされ原型を留めていなかった




込み上げる吐き気を抑えて、彼は唯一《ガラクタ》になっていない彼らの元へ歩み寄る







「........ようやく来たか」







彼らは待ちかねていたとでも言いたげな表情で俺を睨む




彼らが手にしていたものは......







「......だ....い.....くん....?」







彼らの側には縄で縛られ、顔に痣を作っていた彼の1番大切な少女が弱々しく倒れていた






「あ........ど....どうして......どうしてこんな」







彼自身もう頭がパニックになってしまい、呼吸が荒くなる




1対5でしかも彼はまだ子供




どう考えても勝ち目はない




だけど彼は《逃げる》という選択肢は最初から除外していた






















「......まもる」




彼女を守る




ただそれだけの決意が彼を動かしていた






















もしかすると腕一本吹き飛ばされるかもしれない




目を潰されて何も見えない世界に叩き落とされるかもしれない




下手すると命を落としかねない







もう彼女と会うことができなくなるかもしれない







だけど彼はもう一度あの頃の日常を取り戻す為に

大切な人を助けるために













彼は彼らにこう告げた

















































「.....おれのたいせつなひとをかえせ!!このクソヤロウが〜!!!!」































〜☆〜



















時の流れは早く、すでに9月に入った

緑の葉は茶色に変わり、趣を感じさせる




何もなくなった木の幹はもの寂しさを感じさせる




日本全国どこに行ってもその景色ばかりだろうか




6時間目の授業に集中できるわけでもなく、俺....笹倉大地(ささくらだいち)は目の前にあるセンター模試テキストと外の景色を交互に見ながら

「ふぅ.....」と溜息をつく







暇だな.......




ちらりと振り向くと、大抵の生徒は真面目に授業を受けている




先日、席替えをして俺は窓際になった

それはとても嬉しいことだった

それと同時に厄介な奴も近くなってしまった







高坂穂乃果(こうさかほのか).......




俺の隣でグースカピースカいびきをかいて寝てる奴がそうだ

コイツは1時間目からぶっ通しで寝ている気がする




起きていたのは昼休みと5時間目の体育だけじゃなかっただろうか...




いくらクラスメートだからといって穂乃果の将来が心配になった

考えるより先に行動にうつす事が多々あり、ことりや海未だけでなくμ'sの、みんなに迷惑をかけてしまう。

だけど持ち前の太陽のような笑顔やサイドポニーをぴょんぴょん揺らしながら上目遣いをされると怒るに怒れない







そして俺の前の青みのかかったストレートの長い髪の大和撫子系女子は

園田海未(そのだうみ)という。




海未は頭もよく運動もなかなかやる万能な女の子である




しかも弓道部と《ある部》を兼部しているところがすごいと思う




海未は熱心に教師よ話を聞き、きちんとノートに自分なりにまとめている




前に海未のノートを見せてもらったことがあるが




それは素晴らしいものだった




この俺も絶賛したんだからな




でもこの子....すごく恥ずかしがり屋でいつも穂乃果やことりの後ろに隠れているんだよな

《ある部》で克服できればいいなと思っていつも見守っている

とかいいつつ、1人になると鏡の前で可愛く見える練習してたり、妄想の中で《ラブアローシュート》というものを編み出したアグレッシブなところもある。

だけど実際やったこともないので、よくわからない

PV内ではほぼ毎回の確率で投げキッスをしているのは事実だ
















そして、海未の隣で教科書こそ開いているものの、服飾系の雑誌を見てニコニコ微笑んでいる女の子は南ことりという。

マイペースでふわふわしていて俺の中では《天使》として崇めている

人に左右されることが多く、よく海未と穂乃果のなだめ役をしている

前に出ることは無いが、影でしっかり支えるいい子だ

ベージュっぽい髪にトサカが特徴




因みにことりの必殺技は『おねがぁい♡』だ。

それをされたら断ることなんて出来るわけない




天使だ天使だとか言ってるけど黒いところもあるのでが《堕天使》が一番正しい表現かもしれない。




ちなみにここの理事長の苗字も《南》であり、ことりの母親でもある
















さてさて.....ここで《ある部》について説明しておこう







アイドル研究部




アイドルに関する情報やグッズを集める....というのは建前で実はすごいことをやっている部活なのだ




それはスクールアイドル




近年スクールアイドルは全国的に人気を集め、スクールアイドルの甲子園ラブライブというものを開催するほど凄いのである




第一回ラブライブは全国ランキング第一位《A-RISE》の優勝によって終了し....日常は安定を取り戻していた




音乃木坂学院スクールアイドル......μ's




9人の芸術の女神という意味を込められた彼女達は19位という結果を残したものの、ちょっとしたアクシデントにより、辞退




たった結成して数ヶ月でここまでランキングを上げることは至難な技なのに.....




穂乃果、海未、ことり.....特に穂乃果が発起人として活動している

まだ6人メンバーいるが後で説明しよう







実はここ、《女子高》の音乃木坂学院は廃校の危機に直面していた

それを阻止しようと立ち上がった穂乃果たちの活躍により、廃校は免れたんだ




きっと来年度入学者が増えることを期待して......










さてさてもう一つ話があるから聞いてくれ







今さっき音乃木坂学院は《女子高》と言ったな?




じゃあ何故俺がここにいると思う?

そこ!!女装趣味とい言ってんなよ!!言わせないよ!!




とまぁ.....俺は音乃木坂学院の共学化試験生としてやって来たのだ




廃校を免れた今、俺はここにいちゃいけないと思うのだが

生徒会長と副会長の活躍により、ここに居残ることとなった
















みんなごめんね。実はもう一つ知ってもらいたいことがある
















俺は......記憶を失っている







小学5年生前の記憶が一切ないんだ。

どうして失ったのかすらもわからない

そんなに記憶が無くても日常生活に影響な無かった。

だが、ここに来てからやたら頭を締め付けるような痛みに襲われたり、知らない夢を見たり......記憶が戻りそうなんじゃないかと思っている




できれば戻したい

俺はどんな人間だったのか、どんな人生を送っていたのか知りたかった






















キーンコーンカーンコーン













「ふぁ〜.....眠い.....」







授業が終わると同時に先生が手を叩いて注目を集める




「それでは来週行われる生徒会選挙について各自誰を推薦するか考えておいて」




あ、そういえばそんな話前にしてたな

今の生徒会....絵里や希がいなくなったら誰が生徒会を担うんだろうな




俺には到底関係ないことだけど.....そういうのに優れた人がやってくれるだろう




人任せな考えをしてから俺は教科書とか適当にカバンにぶっ込み、

部室に向かおうかと立ち上がる




「........」




「くぅ......Zzzz......」




授業が終わっても尚穂乃果はヨダレの海に溺れながら爆睡していた




つーかよくそんなに寝れるよな.....

そのまま放置するのもアレなので起こすことにした




しかし....普通に起こすのもつまらない

なにかいい案は.....




「大地」




「うん?」




「穂乃果のことお願いします。私とことりは先に行きますので」




「あ、あぁ....わかった」




そう言い残し海未とことりはさっさと行ってしまった




可哀想に穂乃果.....幼馴染みに見捨てられた彼女を見て哀れみの感情を表す







そうだ......




俺は穂乃果の耳元に近づき、そして.....




「....ふぅ〜......」










息を吹きかけた



















「ふわぁぁぁんっ♡♡」




めちゃ艶めかしい声を出して穂乃果は目を覚ました

その声を聞いてちょっぴり興奮したのは秘密だ







「......へ?あれ?大くん......」




「おはよう穂乃果、お前寝すぎな」




「えへへ.....ちょっと昨日夜更かししちゃって」




ペロッと舌を出して眠気眼を擦る




「ほら、海未とことりはもう部室に行ったぞ?穂乃果もモタモタしてないで準備しろ」




「う〜ん......」




未だにぼ〜っとする穂乃果はゆっくりゆっくり荷物をまとめる

それが終わったのはチャイムが鳴って30分後の話だった



















〜☆〜







ガチャ













「あ〜やっと来た!遅いわよ〜」




俺と穂乃果がやって来た頃にはすでに全員揃っていた

来た瞬間俺達に文句を言ってきた見た目は中学生と何ら変わらない黒髪ツインテールの3年生




矢澤にこ







身長154cm、B74、W57、H79と貧相なこの先輩は我がアイドル研究部の部長を務めていてしかもアイドルにかなり詳しい。というか一種のアイドルオタクである




穂乃果達に対して偉そうな態度をとるも、結局どこかで失敗するドジなお方。でも何故か時々見せる表情がお姉ちゃん的存在に見えるのは何故だろうか....

前に確か妹だか弟だかいると聞いているが.....それが影響あるのだろうか







彼女には持ちネタがある



それもいずれかにこ自身が見せてるれると思うからここでは触れないでおく




え?何故BWHを知っているかだって?




それはにこの隣に座る紫髪のツインテっぽくして、さらには男を惑わす巨乳の3年生が俺に教えてくれたからだ







東條希







《μ's》の名付け親であり、穂乃果達3人だけで活動していた時から影でサポートしてくれた3年生




とてもマイペースで似非関西弁で話す、とにかくスピリチュアルな人

包容力があり、μ'sのみんなを包み込むような雰囲気を持っているが.....

とにかく胸をWASHIWASHIしたがる変態な思考を持つ




実は希とは中学1年の時、数ヶ月だけであるが一緒の中学だった時がある

そして、俺の事を好きと言ってくれた女の子でもある










「まぁまぁにこっち、大地くんに会えたのが嬉しいのはわかっから少し落ち着きな」




「なっ///そんなわけないでしょ!!いい加減なこと言わないでよ希ぃ〜!」




希とにこがやり取りを放置して俺はいつもの席にどかりと座る




俺の目の前で忙しなくペンを握った右手を動かして、頭を抱えながらテキストとにらめっこする赤髪の1年生がいる




「ねぇ......ここどうやって解くのか教えて欲しいの」




前と比べると随分丸くなったような気がする

昔は『お願いします』すら言えなかったが、今は積極的に質問してくるあたり慣れてきたのか....あるいは別の理由か




別の理由なんて知らないけど




「ん〜?どれどれ....」




彼女.....西木野真姫のテキストをひったくり、指し示された問題に目を通す




両親が《西木野病院》という大病院を経営しているお嬢様で、プライドがかなり高く、素直になれないことがよくある

そこが可愛いんだけどな.....ツンデレ属性だし




想像通り頭もよくもっと上の高校目指せただろうにと思ったこともある




因みに俺は真姫としか勉強を真面目にするつもりはない




またピアノを幼少期からやっていて、μ'sの大半の曲を作曲しているのもコイツだ




「あ〜はいはい....これな。1番大切なのはこの一文、これが出たら---」
















「と、いう事だ。OK?」




「なるほどね.....ありがとう。さすが大地ね」




「まぁな。俺は天才だから......」




「ナニソレイミワカンナイ」




うわぁ出たよ....真姫の口癖




ふと、思い出したことがあったのでここの生徒会長に聞いてみることにした




「なぁ絵里......さっき先生言ってたけど....新生徒会長、本当に《アイツ》でいいのか?」




金髪で青い瞳、さらにはグラビアレベルの体型の持ち主である《絢瀬絵里》は口篭る

彼女は音ノ木坂学院生徒会長であり、μ'sに加入前までは俺達を敵視していたラスボスだ

なんども穂乃果たちの前に立ちはだかり、あまつさえ俺の頬をフルビンタした恐ろしい人だけど、

いざ加入する角が取れて丸っこくなり、本心をさらけ出すようになった

一見常識人のように見えるけど、どこか抜けていて過去の生徒会長の威厳はどこにもない......

ポンコツ生徒会長降臨である




「えぇ、私は適任だと思っているわ」




「そっか....まぁ誰でもいいけど」




俺はペンを回りながらさも、どうでも良さそうに天井を仰ぐ







音乃木坂学院の生徒会選挙のやり方は前の高校と少し違う




俺が前に通っていた高校は立候補制で、立候補した中から生徒に投票で決めてもらうというメジャーなやり方だった。




だがここのやり方は前期生徒会...つまり絵里と希が数名推薦し、推薦された生徒が了承したのち、演説、投票という変わった方法なのだ







ただ選ばれた生徒のうち、数名は意外すぎる奴ばっかりなのだ




責任感の強く、全て自分で解決しようと1人で頑張っていたあの頃の絵里とは思えない奴が選ばれたのだ




























「きっと大丈夫よ......穂乃果ならやってくれるわ」







「.....それはまだいい。どうして俺まで選ばれたんだよ、どう見えもそんな柄じゃないだろ〜よ」







「それはウチが推薦したんよ?」




「希が?なんでまた」




希はぼよんと胸を揺らしてドヤ顔で語る




「大地くん、中学の時ダンス部の部長やってたやろ?ちゃんとまとめられていたから向いてると思うんよ」




「それとこれとは別だ。俺はしたくない」







そう......生徒会長の穂乃果、副会長に俺が何故か選ばれたのだ

ついでに言うと書記に海未、会計にことりだ




まだ決定事項ではないとはいえ、面倒くさいことはしたくなかった

しかも前に補助員として生徒会の仕事をしていたから尚更嫌だった







「私としては貴方達4人にやってもらいたいなと思ってる」




「つか、男性の俺が副会長やってていいのか?女子高で男子が副会長やるって前代未聞だが....」




「そもそも女子高に男子がいること自体前代未聞だにゃ〜♪」




「あ?うっさいぞ猫」




「あ〜!うっさいとは酷いにゃ〜!!!」




「まぁまぁ落ち着いてよ凛ちゃん」




俺の発言にツッコミをいれる猫語の少女は星空凛(ほしぞらりん)




μ'sの中で1番運動神経のある子で、足も速くてダンスを覚えるのも1番速い

穂乃果の同レベルのハイテンションさについていけない時も多々あるが

それも凛の魅力

3バカトリオの1人(その中に穂乃果とにこが含まれる)

だが意外とコイツ毒舌なんだよな

今だってグレーなツッコミ入れやがったし

.......貧乳なのは言わないでおこう

でも...俺の目で判断するとにこよりは大きいかな?




「なんか大地くん失礼なこと考えてる顔してるにゃ」




「な!?んなわけねぇだろ」




どうやら、表情に出ているらしい。気をつけよ







μ's一の大天使《小泉花陽》は騒ぐ凛を宥める

普段は甘々な声で俺の事を誘惑してくる(無自覚であるが)

お米とアイドルに対する愛情は人一倍で語らせると軽く数時間は話を聞かざるを得ないレベルだ




普段は引っ込み思案なのに....まぁそのギャップがめちゃくちゃ可愛くてたまらないんだけどな!!!




「とにかく!俺は断固拒否する!穂乃果は?」




「.......絵里ちゃんはどうして穂乃果を推薦したの?」




不安げな表情で絵里を見上げる

穂乃果が推薦されたことにはわけがある筈だ




μ'sのリーダーとして引っ張っているから....

いや、絵里がそんな安易な考えで推薦なんてするわけない




.......そもそもが愚問だったよ。




コイツが.....人を惹き付けるからだろうな




どんなに失敗しても、どんなに大きな壁にぶち当たっても

めげずにポジティブに考えるコイツだからこそ







生徒会長として....絵里の跡を継ぐものとして選ばれるのに相応しい

からだろうな




「それは......貴方が1番適任だと思ったからよ」




「そ、そうかな....?」




「穂乃果ならできるわ。私達のリーダーだもの。」





























































〜☆〜




「ねぇねぇ真姫ちゃん!今日凛ね、かよちんの家に泊まりに行くんだけど真姫ちゃんもどうかな?」




「え?でも急だから花陽に迷惑じゃない?」




「あ、私は大丈夫。真姫ちゃんも一緒に泊まりにおいで?」







「ねぇ大地くん」




ん?どうした絵里」







練習後、何やらお泊り会の約束をする1年組を他所に帰ろうとする俺を絵里が呼び止める




「少し話がしたいの。場所を移してもらっていい?」




真剣さを察し「ん、わかった」と簡潔に返答する




「希、一緒に来る?というか来て欲しい」




「え?ウチも来ていいん?大事な話のような気がするけど?」




俺に何を話そうというのだろうか......さっきの生徒会のやつか?




「大丈夫よ」




「そ、ならウチもいく。てっきりえりちと大地くんの密会かと思ってたんよ」




「なっ!!」




この巨乳の人は何言ってんだろうな

おかけでほら、絵里なんか真っ赤にして口パクパクさせてんじゃんか




それこそ、陸に上がった魚みたいにさ




「んなわけ!真面目な話だっつーの」




「いたっ!なにすんのよ大地くん」




デコピンをぶちかまして、大人しくさせてから近場の公園に足を運ぶ




「希、後で覚えておきなさい」




絵里が希を呪っていたのはスルーすることにした




























やってきた公園はあの時.....絵里に1発叩かれた時の公園だった

怒りと辛さ、叩かれた痛みを感じた出来事だったはずなのに、

不思議と微笑ましく思える




絵里も同じようなことを考えていたらしく、微笑を浮かべている




少しだけいじってみることにしよう




「あの時の絵里怖かったな〜」




「え?ちょ!いきなり!?」




予想通りの反応をしてくれて俺は嬉しいよ




「穂乃果達を馬鹿にした挙句俺にビンタだもんな〜家に帰ったら親にかなり心配されたよ〜はっはっは〜」




「そういえばえりちのバレエみたのその後やったね。」




「そんな事言って!あの時の大地くんの口調不良みたいだったわよ!」




はて.......そうだったかな




「え?」




「え?」




あれ?何故か噛み合わない




「俺の口調が.......不良?」




「そ、そうよ」




「??」




希はやはり現場にいなかった為、イマイチ把握できず頭の上に疑問符を浮かべて俺らの様子を伺う




「いや、俺ちゃんと絵里に敬語でキレたよな?」




「な、何言ってるのかしら.....暴言使いまくりだったわよ....」
















.........そうだったかな?










よくわからないけどこれ以上話し続けると本題を忘れかねないので

早々切り上げよう




「ところで、話って一体?」




直後、少しだけ顔を曇らせる絵里

またなにか問題が発生したのか?




最近やたらとアクシデント多いからな




俺といいことりといい穂乃果といい.....




「遠まわしに言っても仕方ないから単刀直入に聞かせてもらうわ。あなた最近.......悩んでない?」




「.....は?」




悩み......ねぇ.....




「あると言えばある、ないと言えばないってとこかな」




「それじゃあよくわからないわ」




「ンなこと言われても唐突過ぎて答えようにもこれしか答えられない」




あると言っても最近成績伸びないだとか、

授業に参加しなくてもいい方法ないかな?とかそんな程度だ




「えりちね、ず〜っと言ってるんよ。『大地くん、最近遠くをずっと見てる』って」




「ちょっと!それは言わないでって約束したでしょ!」




希にいじられる絵里を余所に、俺は自覚のあるその様子を思い出す




やっぱりかなりの頻度で考えてるんだな......




忘れたい過去.......今となってはクソみたいな生活




成績に縛られて何処にいっても勉強、勉強、勉強......




別に嫌いなわけじゃない

ただやりたい勉強ができなくて息苦しかった




そして..........







ズキン




「.........」




まずい、思い出すな......嫌なら忘れるんだ




「まったく希は....あれ?大地くん?」




「どないしたん?顔色悪いよ」






俺は選択肢を間違えた....せっかく手を差し伸べてくれた仲間がいたにも関わらず、それを振り払い孤独を選んだ




その結果がこの俺だ




「いや.......ちょっと昔のことを思い出してね」




「昔のこと?」




「あぁ、ここに来る前の事さ.....前の学校の」




それを聞いて、はっとした2人は顔を背ける




「....理事長から話は聞いてるけど....,詳しくはわからへん。大地くん、教えてくれへん?」




「私からもお願い.....高校1年生の時の貴方に何が起こったの?」




「........」
















俺は深く深呼吸をし、ゆっくりゆっくり....それこそ、童話を語る保母のように話し始めた













俺の黒くて淀んでいる、抜け出すことの出来ない泥沼のような1つ目の過去
















それは......話せば長くなる




高校1年生の春.........それは全国トップの高校に進学した事を後悔した季節だった 
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