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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜

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第29話 二つの存在(後編)



古代、ギリシア神話には様々な説がある











例えば《ゼウス》

古代ギリシア人は世界の始まりについて、他の民族と同様、それは原初の時代より存在したものであるとの素朴な思考を持っていた。しかし、ゼウスを主神とするコスモス(秩序宇宙)の観念が成立するにつれ、おのずと哲学的な構想を持つ世界の始原神話が語られるようになった。それらは代表的に四種類のものが知られるという説




これが世界の始まりである




例えば《プロメーテウス》

人間の起源について古代ギリシア人は、神々が存在した往古より人間の祖先は存在していたとする考えを持っていたことが知られる。これはヘーシオドスの『仕事と日々』にもそのような表現が存在する。他方、『仕事と日々』は構成的には雑多な詩作品を蒐集したという趣があり、『神統記』や『女傑伝』が備えている整然とした、伝承の整理付けはなく、当時の庶民(農民)の抱いていた世界観や人間観が印象的な喩え話のなかで語られている。古代よりギリシア人は「人は土より生まれた」との考えを持っていた。超越的な神が人間の族を創造したのではなく、自然発生的に人間は往古より大地に生きていたとの考えがあった。しかしこの事実は、人間が生まれにおいて神々に劣るという意味ではなく、オリュンポスの神々も、それ以前の支配者であったティーターンも、元々はすべて「大地(ガイア)の子」である。人間はガイアを母とする、神々の兄弟でもあるのだ。異なるところは、神々は不死にして人間に比べ卓越した力を持つ。神々は貴族であり、人間は庶民だと言える




これが人間の起源であるとされている







それでは.....音楽や芸術とはどうなのだろうか....







ヘーシオドスの『神統記』によれば、大神ゼウスとムネーモシュネーの娘で9柱いるとされる。別伝ではハルモニアーの娘とする説や、ウーラノスとガイアの娘とする説もある。古くはその人数は定まっておらず、デルポイやシキュオーンではウーラノスの娘であるアオイデー、ムネーメー、メレテーの3柱、レスボス島では7柱とされていたが、ヘーシオドスによって9柱にまとめられた。ピーエリア王ピーエロスの娘・ピーエリスたち(ピーエリデス)とも同一視された。




ここで語ったところで理解することは難しいだろう....




簡単にまとめると




カリオペ 叙事詩




クレイオ 歴史




エウテルペ 抒情詩




メルポメネ 悲劇




テルプシコラ 合唱舞踊




エラト 恋の詩




ポリュヒュムニア 聖歌




ウラニア 天文




タレイア 喜劇




9柱の女神たちは何らかの芸術分野を1つずつ担当している。女神たちの多くはギリシャ神話には欠かす事のできないものを司っているため、絶対に彼女達の存在をはずす事はできない.....ということだ







μ's....それと呼ばれる9人の女神は全員揃わないと意味を成さない




どんなに完成間近のパズルでも1つピースを失うと意味が無い

それと同じだ




そこで1つ疑問が浮かぶ




仮に最後のピースがカチリと音を立ててはまり、パズルが完成したとする







そこに......別のパズルの欠片をはめようとする




果たしてそこに意味はあるのだろうか.......




























答えは......『否』だ



















----------------------------

希side




























時は大地と穂乃果が仲直りする前日に遡る































「....そう...ええ、わかったわ....それじゃあことりの事をお願いね....」




ピッ




「どうやった?」




「まぁ.....問題無いと言えば問題無い....かしら」




「濁さんでよ......まぁ海未ちゃんやし大丈夫やね」




えりちが電話した相手は海未ちゃん

屋上での出来事以来穂乃果ちゃんと海未ちゃんは会話すらろくにしていない




ことりちゃんの出発、大地くんの転学も3日後に迫っているという非常事態をなんとかせんといけない




だが、今日まで何もいい案が浮かばない

えりちもウチも限界や.....

これ以上考えたところで無駄足なだけ




えりちは口をきゅっとキツく締めてスマホを眺める




「ことりちゃんの事は海未ちゃんに任せて、ウチらは大地くんの転学についてなんとかしよう」




「ええ.....そうね」











































「いつかはここに来ると思っていました」




理事長はウチらがここに来ることは想定していたらしく、理事長室に入った瞬間理事長は笑みを浮かべてソファへ座ることを促す




えりちは「いえ、お構いなく」と丁重に断って理事長の机の前に立つ



















「単刀直入にお伺いします。大地くん....いえ、笹倉くんの転学に関して何故このような措置をとったのですか?」




えりちのその睨みつけるような顔はあの時と同じ顔をしていた







あの時.....μ'sを敵視し、彼女達の行動を邪魔していたあの時のえりちがここにいた




「理事会で話し合った結果なのです.....音乃木坂学院は来年度も生徒募集を行うことになりました。廃校を阻止するために採用した男子の特別受入.....試験生を必要としなくなったのです」




「そ、そんなことって!!」




バンッ




「えりち!落ち着いて」




机を叩いて苛立ちを露にする親友を取り押さえる

かといってウチだって平常心なわけやない



今言った事が本当なら、大地くんがここに来た意味がないんや

大地くんがどんな思いでここにやって来たのかはよくわからない




でも、μ'sの手助けをしている姿は決して嫌がっているようには見えない

穂乃果ちゃん達とファーストライブに向けて準備して




夢があるのに一歩先へ進めない花陽ちゃんの背中を押して




過去のトラウマから抜け出せず自信の無かった凛ちゃんを救い、




自分の夢を諦め押し殺し、両親の為に頑張ってきた真姫ちゃんに手を差し伸べて




孤独に耐えながら待ちわびていたにこっちにチャンスを与えて....










そして、自分に素直になれなかったウチの親友えりちを受け入れて
















廃校をなんとかしたいという思いは大地くんだって一緒やったはずなのに.....

どうしてこうなるんやろうな.....




「絢瀬さん」




「なんでしょうか?」













「あなたは笹倉くんにここにいて欲しいですか?」




「当たり前です」




理事長の問いに対して即答する




「それは何故?」




この時、理事長はえりちの事を試しているんやと感じ取った

《あの時》のえりちと、《今》のえりちを




「......」







「えりち....」










心配はしてへんよ。ウチの親友やもん♪

大丈夫や、《今》のえりちは













「私は大地くんと共に過ごしてきた毎日が大好きだからです」




「ふふ....」




「彼は教えてくれました....何をする時には何を《すべき》と思うのではなく、何を《したい》かという事を」




「それが《今》の絢瀬さんかしら?」




「はい。間違いなく私はやりたいことをやっています」




「そう......なら1つだけ方法はあります」




え?と2人して驚きの声を上げる

すると、理事長はパソコンを操作してある画面を見せる




「ここに行き、向こうの理事長と話し合ってきなさい」




「と、言いますと?」




すこし、間を置き




「笹倉くんを取り替えてしてきてください」




理事長は初めて不敵な笑みを浮かべた










これからウチとえりちの闘いが始まる













----------------------------

真姫side







そして、現在に至る






















「笑ってよ悲しいなら♪吹き飛ばそうよ♪」




私の今までの人生の中で1番居て楽しいって思えた場所




「笑えたら変わる景色♪晴れ間がのぞく♪」




普段から素直になれなくて、みんなと距離を置くことがあるけれど




「不安でもしあわせへと繋がる道が〜♪見えてきたよな青空〜♪」




それでも、みんなとこれからもずっと居たいって...μ'sの場所こそ、私の居場所なんだって.....




「時々雨が降るけど水が〜♪なくちゃ大変〜♪」




ことり、穂乃果....大地....




「乾いちゃダメだよ♪みんなの夢の木よ育て〜♪」




戻ってきてよ....みんなとラブライブに出場するんじゃなかったの?




あれは....嘘だったの?




違うわ!




大好きだと....ここにいてよかったと思いたいの




私達は.....始まったばかり.....







「あ.....」




考えことをしながら弾いていたのでピアノを間違えてしまった

普段の私なら間違えるなんてないのに.....




それだけ、ショックだったのかもしれない




ここ数日ダンスはやってない

放課後はずっと音楽室に篭って、無心でピアノを引き続ける毎日




明後日まで....もう時間が無いのに

仲間の為に何もしないでお別れなのだろうか.....




私には何もできない....




ことりと穂乃果には海未が付いてる




大地のことは絵里と希が....




にこちゃんと凛、花陽はアイドル続けると練習




「......振り出し......か」




結局のところ、私にとってμ'sというのは私の夢を叶える為の《道具》でしかないのかもしれない

仲間が嫌いではない。むしろ、大好き

心配もしてる.....




でも、この胸に残るわだかまりは一体.....







〜♪〜〜〜〜♪♪〜♪




直後着信音が音楽室に響き渡る




私は立ち上がり、スマホを片手に画面を覗く










「.......!?嘘っ!?」







思わずスマホを落としてしまった

その衝撃で画面にヒビが入るけど気にするほど

今の私には余裕がなかった










「.......さすが........さすがスピリチュアルな方ね....」







やっぱりμ'sはただ《道具》なんて思ってた私は大馬鹿者ね

助け合う仲間がいるということはどれだけ素晴らしい事なのか

実感してきたはずなのに




レールに乗った道を辿ることが得意な私にとって

復活するこの転機は嬉しかった










「まったく....しょうがない人ね....」

涙は.....ここ最近流していなかったわね.....

























To 希












μ'sは絶対に無くならへん!




心配せんでもちゃんとみんな揃ってまた前に進もう!

ウチらならできるよ!




真姫ちゃんもくよくよ悩んでないで、ちょっとはポジティブにな?




大丈夫や




みんな一緒やから!!!





































----------------------------

穂乃果side













.....今日はことりちゃんが日本を発つ日




穂乃果はもう決めたんだ。

大くんと一緒に帰ったあの日.....




ちゃんとことりちゃんと仲直りしようって




ごめんね?って




ことりちゃんと一緒にスクールアイドル続けていたいんだって




ちゃんと伝えるんだ




でもその前に....もう一人の幼馴染みに伝えなきゃね




誰もいない講堂で穂乃果の足音、呼吸音のみが響く




ガチャ......

























講堂の片方の扉が開く







今度は誰も悲しませない事をやりたいと思っていた

自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、沢山の人を笑顔にして、頑張ることができて........そんなものあるわけないよね?










「海未ちゃん.....」







やって来た海未ちゃんと対峙する




「ごめんね?急に呼び出したりして」




「いえ....」




「ことりちゃんは?」




「今日、午後2時45分の便で発つそうです」




後3時間.......か




「穂乃果ね....ここでファーストライブやってことりちゃんと海未ちゃんと歌った時思った.....もっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたいって!」




「穂乃果......」




「辞めるって言ったけど、気持ちは変わらなかった。学校のためとかラブライブの為とかじゃなく穂乃果は好きなの!歌うのが!踊ることが!仲間と一緒にスクールアイドルやることが!!これだけは譲りたくない。だから......ごめんなさい!!!!」






















これが....高坂穂乃果の出した答え




スクールアイドルを続けることがなによりも一番なんだって




「これからもきっと迷惑をかける、夢中になり過ぎて誰かが悩んでいるのに気づかない時もあると思う、入れ込み過ぎて空回りすると気もあると思う!だって穂乃果、不器用だもん!




























でも!!追いかけていたいの!!!!」














































「.......くす」










え?海未....ちゃん?




「ふふ....あははははっ!!」







真面目な話をしたいるのに何故か海未ちゃんは笑い出した

そのせいでちょっと顔が赤くなる




「なんで笑うの!?海未ちゃ〜ん!」







「あはは....ご、ごめんなさい」




謝るけど、お腹を抱えて笑っている




「でもね、はっきり言いますが.......穂乃果にはずっと前から迷惑をかけるかけられっぱなしですよ?」







「え?」







そうだっけ?記憶にないので辿ってみる....けど、やっぱり覚えてない




「ことりとよく話していました。穂乃果と一緒にいるといつも大変な事になると。」




話しながらゆっくり階段を降りてくる

その表情はとても嬉しそうにしていた




「どんなに止めても夢中になったら何にも聞こえてなくて。大体スクールアイドルだってそうです.....私は本気で嫌だったんですよ?知ってましたか?」




「海未ちゃん.....」




「どうにかして辞めようと思っていました。穂乃果の事恨んだりもしましたよ?もちろんあそこで背中を押した大地にも、ですけど」




「ご、ごめんね......」




嫌そうにしていたのは知っていたけど、いつもの照れかなと思ってあんまり気にしていなかったな〜




「ですが、穂乃果は連れていってくれるんです」







「どこに?」










「私やことりでは勇気が無くて行けないようなすごいところに!」




ニコリと微笑む海未ちゃんはステージに上がり

まっすぐ穂乃果のことを見つめる




「私が穂乃果を叩いたのは穂乃果がことりの気持ちに気づかなかったからじゃなく、穂乃果が自分の気持ちに嘘をついているのがわかったからなんです.....穂乃果に振り回されるのはもう慣れっこなんです♪」




楽しそうに語る様子を見て穂乃果も嬉しくなる

そうなんだ......穂乃果の事をそうやって支えてくれてたんだね?




「だからその代わりに連れていってください!わたし達の知らない世界に!!!!」






















ポロリ.........










目が滲み、それは涙を零していることを意味していた




「それが穂乃果のすごいところなんです!!」







「海未......ちゃん.......」



















「さぁ!ことりを.....迎えに行ってきてください!!!」

























「.....(ゴシゴシ)うん!!!!!」

















































Attention please.....Attention please







後10分でことりちゃんの搭乗する飛行機が出発する

それまでに伝えないと




穂乃果はこれからどうしたいか




誰と.....何をしていくか




そう、もうわかりきっていたこと

穂乃果と海未ちゃんとことりちゃん、大くんと初めてスクールアイドルをやってきてからその瞬間から....




だからことりちゃん、大くんが穂乃果の前からいなくなるってわかった途端、怖くなった




みんながいなくなって....その責任が穂乃果にあるって....




みんなが『そうじゃない』って言っても




穂乃果がやってきた事はきちんと自分で責任を取る




ことりちゃんの事をよく見てこなかったこと




大くんが穂乃果を連れ戻してくれたこと




─────だから、今度は穂乃果の番!!










「ことりちゃん!!!」







今度は穂乃果の想いを....意志をことりちゃんに伝えるんだ







「え?」







「ことりちゃん待って!」




ことりちゃんの表情は『どうして...ここに穂乃果ちゃんが?』と言うような顔のソレだった




「.......」




「........なんで....来たの?私、もう行かないと───」




「穂乃果ね、ことりちゃんは凄いなっていつも思ってるんだ」




「え?」




「前に神社でことりちゃんはこう言ったよね?《私は穂乃果ちゃんや海未ちゃんと違って何も無い》って.....」




それは、大くんがメイド喫茶でことりちゃんと遭遇した次の日、神社でことりちゃんが告白した内容だった




「確かにことりちゃんは穂乃果の様に何でもかんでも突っ走っちゃって、みんなに迷惑をかけるようなことはしない。海未ちゃんの様に穂乃果を叱るようなこともしないね。だけど、それでも、ことりちゃんは凄いなって思うんだ」




「私.....が?」




「うん!優しくて明るくてお裁縫ができて....周りをよく見てるところとか....穂乃果だけじゃない、海未ちゃんも大くんもみんなみんなことりちゃんの作る衣装大好きなんだよ!!」




「っ!!」







衣装を作ることりちゃんの姿はとっても楽しそうでついも花歌を歌いながらせっせと繕っている




ことりちゃんがいるから穂乃果達は頑張れるんだよ?




穂乃果はぎゅっと、ことりちゃんを抱きしめる






















「穂乃果はずっと....これからもことりちゃんの衣装を着たい!ことりちゃんの作る可愛い衣装でスクールアイドルを続けたい!!!ことりちゃんと一緒に!!!!」










ボロボロと涙を流し始めた




トパーズ色の瞳から大きな雫が1つ、また1つこぼれ落ちる

穂乃果はそれを手で拭い、こう告げる







──────お願いことりちゃん....行かないで?













と。
















「うっ....ううっ.....」




「え?ことり......ちゃん?」




ことりちゃんは穂乃果から離れ、手でゴシゴシも涙を拭う




「....穂乃果ちゃんのバカぁ...」




「ふぇ?」




「私だって....私だってみんなとずっとずっといたいよぉ〜。離れ離れなんて嫌だよぉ〜!ごめんね....ごめんね穂乃果ちゃん!私、私ぃっ!!」



















穂乃果はことりちゃんの想いが聴けて嬉しかった

だから、飛行機が飛び立っても尚、その場で2人で泣き続けたんだ....
















ねぇ....大くん




大くんは今、何を考えてるの?




穂乃果はね.....

























〜♪♪







「穂乃果ちゃん、連絡きたよ」




「え?あ、ほんとだ」




緑の連絡アプリが反応を示していた




こんな時になんだろうと思い、スマホを起動する



















希ちゃんからだ







To 希ちゃん







早く戻って来ないとオシオキや♪




みんな待ってるで〜!!!




あ、ちゃんとことりちゃんも一緒にね!




思った以上にお客さんいるんよ!

早く始めよ!




μ'sのライブを!

























「「......え?」」




























----------------------------










To 絵里さん







ことりはもう大丈夫よ




あなたは?

























絵里さんからの通知に返信せず、俺は電源をきってポケットの奥に無理矢理押し込む




放課後の教室には俺一人

妙に孤独感を感じながら窓を眺める




無事彼女達は再結成を果たした

安堵しているはずなのに辛さは消えない




もうこれ以上彼女たちの羽ばたく姿を近くで見ることができない




まだここにいたい




ガキじゃあるまいし、いい加減立ち去るべき




な、はずなのに教室を出たり入ったりを繰り返してる




「諦め悪いよな....」




自虐気味に呟く




講堂に人集りが出来ている

その中にここの生徒だけじゃなく、大人は子供、中学生がちらほら




「あれは....雪穂ちゃんと亜里沙ちゃん?」




とてもワクワクした表情で中へ入っていくのを見かけた

そもそも何故ここに一般人がいるのかわからない




「.....関係ないか」




どうせもうここから居なくなる身

ここでイベントが起ころうが関係ない




「あら?笹倉くん」




「へ?」




理事長がドアの横で心配そうに見つめる




「見に行かなくていいのですか?」




「何をやっているんですか?」




「ライブよ」




ライブ.......その言葉を聞いた途端、ドキンと胸の鼓動が高まる




わかってるさ、俺のやりたいことなんて




俺自身がよくわかってる
















絢瀬絵里――――不器用な彼女は俺に《優しさ》を教えてくれた













東條希――――影から支えてくれる彼女は《素直》を教えてくれた













矢澤にこ――――孤独と闘ってきた彼女は《根性》を教えてくれた













小泉花陽――――内気の中に夢を持つ彼女は《情熱》を教えてくれた













星空凛――――女の子になる夢を持つ彼女は《元気》を教えてくれた













西木野真姫――――素直になれない彼女は《努力》を教えてくれた













園田海未――――真面目すぎる彼女は《勇気》を教えてくれた













南ことり――――後ろから支えてくれる彼女は《愛情》を教えてくれた





































高坂穂乃果――――みんなを引っ張る彼女は《前進》を教えてくれた














































俺の......俺のやりたいことは――――――――








































悲しみに閉ざされて♪泣くだけの君じゃない♪




熱い胸きっと未来を切り開くはずさ♪




喜びを受けとめて〜♪君と僕繋がろう♪




迷い道〜やっと外へ♪抜け出したはずさ♪




喜びを受け止めて〜♪君と僕進むだろう♪




それは(それは)♪遠い(夢の)♪カケラ(だけど)♪愛しいカケラ♪




彼方へと...僕はDASH!!♪



















「.......始まりの...歌」







当初の頃と比べて格段と成長したと思った




初めて3人でライブしたときの顔を今でもよく覚えている




特に穂乃果なんか、今のも泣き出しそうな表情をしていた




それが今はどうだ?




.....笑ってる




みんな楽しいと感じている




その楽しいと感じることが.....この講堂を《満員》にしている




サイリウムの色彩の数がそれを示している










「みなさん!今日はありがとうございました!」




穂乃果の挨拶と共にサイリウムの色が消え、静まり変える




「μ'sのファーストライブ、この講堂でした!その時、穂乃果は思ったんです!いつか、ここを満員にしてみせるって!!」




あの時言い放った言葉




それは単なる絵里さんへの言い返しだったのかもしれない

でも、ホントにそうしたい、そうありたいと穂乃果だけじゃく、3人の願いだったのかもしれない




「一生懸命頑張って今、私たちがここにいる。この想いをいつかみんなに届けるって!その夢が今日、叶いました!!だから私達はまた駆け出します!新しい夢に向かって!!!!」



































































「.......」







気がつけば正門前にちょこんと1人立っていた




講堂からこっちに移動した覚えがない




初めてここに来た時は桜が満開に咲いていた

桜並木に誘われて、俺と穂乃果は出会った




「出会い方が衝突っていうね」




くすりと思い出し笑いをする

これを誰かに見られたら恥ずかしい




でもそれだけどれもこれも思い出深いという事だったのかもしれない













《START:DASH!!》




それは始まりの歌




産毛の小鳥が空に羽ばたくため、諦めずに必死になる

自分の強い翼をいつか使って飛ぶ為に




諦めちゃいけないんだとその日が絶対来ると信じて




できないから、悲しいからって泣いていたってダメなんだ




明日よ希望に変われ




そう願う熱い胸がきっと未来を切り開く




自分を信じて.......




























「待ってーーーーーーーー!!!!!」










まだ諦めたくない




みんなと歩く道を!!










「ほの......か.....みんなも..」




「はぁ....はぁ.....行っちゃ....ダメだよ」




「え?」




「大地、私達には貴方が必要なのです」




「私は別にどっちでもいいけど、みんなにとっては死活レベルなの」




「あ〜!真姫ちゃん素直じゃないにゃ〜」




「う、うるさい///」




「でもみんな気持ちは1つです。大地さんにずっとわたし達の側で見守って欲しいです」




俺はゆっくりとみんなを見渡す




俺に残って欲しい




私達のことを支えて欲しい、と




私達の頑張る姿を一番近くで見て欲しいと




言葉にしなくても、表情、目、雰囲気がそう語っている




「....俺だって」




「え?」




「俺だってずっとみんなと居たいんだ!ここを離れるなんて絶対嫌だ!」




穂乃果がいて




海未がいて




ことりがいて




花陽がいて




凛がいて



真姫がいて




絵里がいて




希がいて




にこがいて










9人の女神を俺は間近で支えていたい







「でも!!もう....無理だ....遅すぎる」




物語のエピローグというのは




時にはハッピーな終わり方もあれば、バッドな終わり方もある




後者の俺は嫌なわだかまりを残したままこの場を立ち去る




きっとそんな運命だったのかもしれない






















「......でもな、そんな終わり方、嫌だとおもわへん?変えたいとおもわへん?」




「は?」




希が俺の思考を読み、さらには意味不明な言葉をさらりと言いのけた




「変えたいって....今更何を----」







突如
















誰かのスマホに着信が入った







「.....ほらね?これからがウチらの本当のスタートなんよ?」







希はポケットからスマホを取り出して、耳を傾ける










「はい、音乃木坂学院生徒会副会長東條希です......はい.......そうですか.....ありがとうございます......宍戸理事長に本当に感謝しますか」







どうやら、どこぞのお偉いさんからの着信が入ったらしい




宍戸理事長......どこかで聞いたことある気がする名前だ




「はい、大地くん♪」




「え?俺が?」




希は着信をオンにしたまま、それを俺によこす




「大地くんと話がしたいんやって」




宍戸って人が?




「わ、わかった」




何故かみんながニヤニヤと笑っているが何故だろうか




どこにニヤつく要素があるのか知らないがとりあえず待たせるのも悪い



「.....はい、お電話変わりました。笹倉.....です」































「初めまして、笹倉大地くん。私は京都府〇〇〇高校理事長の宍戸勝仁と言うものです」










「.......へ?....あ....」







まさか.....俺の転学先の高校の理事長だったとは!!!!!







待て!思い出した!!

確か南理事長から頂いた学校案内パンフレットに顔写真が記載されていたはず!!




すごく無精髭の濃かった方だというのは今でも鮮明に覚えている




「あ、し、失礼しました!宍戸理事長」




「はっは!そんなに畏まらなくてもよい。さっそくだが、簡潔ではあるが報告とこれからのことについて話そう














































音乃木坂学院在学、笹倉大地くん。君の転学に関する事案を見送りとさせてもらう」





































「...........はぇ?り、理事長今....今なんと?」




「ん?これでは伝わらんかの?君は無理してこっちに転学せんでもええと言うことじゃよ」




俺が馬鹿なのか...失礼だが宍戸理事長が馬鹿なのか.....

言ってる意味がわかりません




「それは....どうしてそうなったのでしょうか?経緯を説明してもらいたいです」




「ふむ...そちらの会長..絢瀬と申したかのう?あと、副会長の東條がわざわざこっちに来てくれたんじゃよ」




絵里さんと希が向こうに!?

なんでまた...そんなとしてるんだよ




「彼女達の真剣に訴える眼差しに圧倒されてな〜音乃木坂で君の存在が必要なんだと言っておったのじゃ。スクールアイドル《μ's》の事はよく存じておる。うちの学生も君達のファンが多いからの」




「し、しかし!それでは貴校の--「君の能力には目を見張るモノがある。全国模試毎回トップ10に入る事は至難の事じゃ。確かに君がその成績をコチラで発揮してくれると我が校の認知度はさらに上がる」




「で、でしたら尚のこと!」




「だがな」







宍戸理事長は俺の言葉を遮り、間を置いて俺に質問する




「笹倉くんはこっちにきてやりたいことはあるのか?」




「っ.....!」




「どうなのじゃ?」




俺が向こうに行けば勉強一本に時間を注ぐことができる

だけどそれは恐らく去年と同じ結果になるだろう




お互いをライバルと見なし、敵同士距離を置く




お互いを見下し、お互いを蔑む




妬み、憎み、そしてお互いを信用しなくなる世界













それが嫌で耐えられなくて逃げ出したんじゃないか










ここは平和だった




独学の道を選んだのも俺だし、なにより暖かった

みんなが音乃木坂の為に廃校をなんとかしようと立ち上がり、

一心で物事に立ち向かう姿勢




それこそ、俺の居たいと思った世界










そんな中で、俺が見つけた




俺自身の居場所、やりたいこと













..........俺は感謝しなきゃいけないな




俺を救ってくれた《9人の女神》に































「俺のやりたい事は、ここで....音乃木坂学院の一生徒として、学校生活を送り、《μ's》の支えとしてみんなと共に有ることです」







見つけた.....俺のやりたい事










「.....笹倉の意志を確認した!」




「宍戸理事長、ありがとうございました.....」




「頑張りまたえ若過ぎる若者よ!君を目標に頑張る生徒がこっちにはいるから負けないようにな!」




「....もちろんです!今度こそ!日本トップになってやりますよ!」











































宍戸理事長から通話が切れ、スマホを持ち主へ返す




「....まったく、面白い事やってくれるよな...絵里さん...いや、絵里、希」




「ウチは知らないよ〜?なんもしてへんよ」




「希ったら『面白そうやん♪』って言って張り切っちゃうんだから....それと、や〜っと私のこと呼び捨てで呼んでくれたわね」




「えりち〜!それは言わん約束や」




あはは、と笑い声を響かせるその風景はいつ以来だろうか




「ありがとう....絵里、希....みんなも」




「.......」




「?穂乃果?どうしたのです?」




穂乃果は1人、俯いて肩を震わせている




「どうしたの穂乃果ちゃん、具合悪いの?」




「.......か」




穂乃果が何かを言っているようだが全然聞こえない

地獄耳のはずなんだけど最近聞き取れない事が多くなった気がする




年かな?




「大くんのバカ!!」




「うわぁっ!?」




いきなり顔をあげた穂乃果に抱きつかれ、耐えきれなくなった俺の体はそのまま後ろへ倒れ込む




「...穂乃果?」




「心配した.....心配したんだからぁ!!!!!」




再び顔をあげた穂乃果の目尻に波が光っていた




「また離れ離れになるんじゃないかって!!やっと会えたのに!ずっと側にいて欲しかったのに!もう失いたくなかったのに!!!穂乃果の気持ちも知らないで!バカバカ!!うわぁ〜〜〜んっ!!!!」










穂乃果がここまで心配してくれていたとは....

申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちでいっぱいの俺は

胸で泣きじゃくる穂乃果をそっと抱きしめる




「ごめん.....穂乃果.....大丈夫だ...どこにも行かない....みんなとずっと一緒にいるって決めたから」



































































〜☆〜































君達は《スクールアイドル》って言葉を知ってるか?




近年日本全国の高校に存在するその名の通り学校直属のアイドルの事なんだけどさ




俺は最近までその事詳しく知らなかったんだよな




テレビにちょくちょく出てくるな〜程度で

関わりが無いし、興味も無かった




ほら、やっぱりアイドルになる子って《可愛い子》という絶対条件みたいなものがあるじゃん?




つまり、『私は可愛い』ってナルシストの集まりみたいで避けてきたんだ







でも、そんな集まりだけじゃないってのをとある高校のスクールアイドルに教えてもらったんだ




彼女達は自分達の学校を守ろうとして立ち上がったんだ




その学校が大好きだから




母、祖母の母校だから




アイドルに憧れていたから




様々な想いがあって1つのスクールアイドルが結成された




音乃木坂学院スクールアイドル《μ's》




彼女達が俺のイチ押しのスクールアイドルだ







歌が上手いか、ダンスが上手いか、可愛いか




そんなことはどうだっていい




《彼女達のどこに魅力を感じるか》










俺は夢を持つ彼女達1人1人に魅力を感じている










俺はスクールアイドルが大好きだ




俺はμ'sが大好きだ










μ'sのファンとして




μ'sの良き理解者として




μ'sのマネージャーとして




彼女達と前進していきたい




だって可能性感じたんだ.....そうだ進め




後悔したくない目の前に僕らの道がある































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