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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十七話 江田島その九

「何ていっても海軍だからね」
「それで幹部候補生学校は」
 一年の子の一人が僕に聞いてきた。
「史跡研修で行くんですよね」
「そうだよ」
「どんな場所ですか?お話は聞きましたけれど」
「実際に見るとだよね」
「はい、どんな場所なんですか?」
「奇麗なんだよね」
「写真にある通りですか」
「うん、建物も草木もグラウンドもね」
「全部ですね」
「映画に使われたこともあるし」
 帝国海軍の映画でだ、実際に舞台として使われている。その映画でもかなり奇麗な状況だったのを覚えている。
「いつも奇麗に掃除されててね」
「整ってるんですね」
「掃除のチェックも厳しいらしいんだ」
「チェックする人いるんですね」
「掃除は学生さん達がしてるけれど」
 幹部候補生学校のだ、この人達が毎日朝夕と掃除をしているのだ。
「幹事付って人達がチェックしているんだ」
「幹事付ですか」
「そう、若い幹部の人がなるんだ」
「それでお掃除をですか」
「他には学生さん達の生活全般をね」
 何でも幹部候補生学校で一番有名な教官さん達らしい、階級こそ幹部の中ではまだ若いこともあって低いけれどだ。
「見て指導しているんだ」
「そうした人ですか」
「二人いてね」
 僕は幹事付の人達の数も話した。
「物凄く厳しいチェックをしているんだ」
「うちの風紀部の先生よりも」
「いや、うちの風紀部なんてね」
 それこそとだ、僕はその子に言った。
「もう比べものにならないから」
「そこまで厳しいんですか」
「そうなんだ、相当にね」
「それでなんですか」
「それこそ塵一つ見逃さない位にいつもチェックしているらしいから」
 冗談抜きでそこまでチェックしているらしい。
「それでね」
「あそこは奇麗なんですね」
「あんな掃除が行き届いている場所ないだろうね」 
 実際にそう思った、僕も。
「あそこはね」
「そうなんですね」
「ただ建物や景色が奇麗なだけじゃないから」
「清潔でもある」
「そうした場所だよ」
「何か見るのが楽しみになってきました」
 一年の子は僕の話を聞いて期待する目になって言った。
「本当に」
「実際に期待出来るからね」
「はい、期待させてもらいます」
「歴史の資料としてもいいしね」
「海軍のですね」
「この人は陸軍だけれど」
 こう前置きしてだ、僕はこの人の名前を出した。
「森鴎外の書もあるよ」
「あの文豪の」
「うん、あの人お医者さんだったね」
「軍医さんでしたよね」
「しかも軍医で一番偉い人だったんだ」
 森林太郎、鴎外の本名としてである。森鴎外は今は文豪として有名だけれどあくまで本職は医師それも軍医の中でもエリートだったのだ。
「軍医総監だったんだよ」
「確か東大出てましたね」
「東京帝国大学ね」
 当時の名称ではこうだ。 
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