| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第16話 やりたいことは

「どわわわわっ!!いった〜い!!」

「凛ちゃん!」

「全然ダメじゃない!よくこれでここまで来れたわね!」

「すいません...」

大地くんにお願いされて仕方なくμ‘sのコーチをやっている。
アイドルだから基礎くらいはできて当たり前...のはずなんだけど
あまりにも基礎がなっていなかった。
初めて見て呆れて何も言うことができないくらい

これが......これでμ‘sに惹きつけられるものなの?
形すらなっていないのに?『楽しそう』、『元気がもらえる』だけじゃダメなのよ?

ねぇ....大地くん。あなたは私に何を伝えようとしたの?

関われば答えが見つかるとは言ってたけど本当なの?

「昨日はバッチリだったんだにゃ〜!」

足元で倒れている...星空って子は言い訳をする

「基礎ができていないから、動きに無駄が出るのよ。足開いて」

「え?こ、こう?」

そのまま背中を押してあげる。

「い、痛いにゃ〜!!!」

「これで?あなた体が硬すぎるわよ。少なくとも足を開いた状態でお腹が床に付くぐらいにならないと」

星空さんを開放しみんなを見渡して宣言する

「柔軟性を上げることは全てに繋がるわ。まずはこれをみんな出来るようにして。このままだと本番は一か八かの勝負になるわよ!」

「嫌な予感的中〜....」

にこが愚痴を零す。


「じゃあやってみよう!」

高坂さんの掛け声と共に、みんなやり始める。

意外にも高坂さん、園田さん、南さんはしっかりとそれができていた。

「穂乃果先輩たちすごいにゃ〜」

「そうかな?μ‘s結成してからずっと大くんに扱かれていたからね〜」

そうなんだ....確かに彼は昔ダンスをやっていたからこれくらいは3人に叩き込んだのか。

さすがというか....でもやっぱり基本だから当たり前よね

「感心している場合じゃないわよ。みんなこれが出来るの?ダンスで人を魅了したいんでしょ!!これくらい出来て当たり前!!」



私はこの後もずっと基礎トレばかり続けた。いやこのままオープンキャンパスまで基礎トレばかりさせていくつもり。
いつか根を上げて「もういいです」と言うのを聞きたいから。彼女たちの覚悟はその程度だったんだと思いたいから。


ごめんね大地くん

やっぱり君の言うこと...全部理解できそうにないわ




〜☆〜

「ふぁぁぁぁ、やっと半分終わったぞ〜。生徒会って忙しいんだな....」

生徒会補助員となってから初めてのお仕事。
軽い気持ちで引き受けてしまったため、ここまで量が多いとは予想外だった。
こんな仕事ほぼ毎日やってたのかよ...
初めて絵里先輩のすごさに気づいたよ

あ、いや...生徒会のすごさ...かな?

「とと、休憩してる場合じゃないよな。次々っと....」


俺は夏休み明けに行われる文化祭の資料を手にし、作業を始めた。



ガチャッ


「お?やってるね〜大地くん」

そこに現れたのは東條副会長。相変わらず素晴らしい物を持っているな〜
ゲフンゲフン......

「こんにちは、副会長。あ、そっちの資料の整理終わりました。確認お願いします」

「はいはい、ありがとね」

東條副会長は席に座り、先ほど終わらせた資料に目を通す。

「えりち、頑張ってたよ」

「え?あぁ、コーチのことですか」

「うん...なんやかんや言って心配性やからね〜。ところで、大地くんはμ'sの意味を知ってるかな?」

「μ's.......9人の女神、でしたっけ?神話に出てくる」

「そうや、今μ'sは何人?」

「えと....7人、ですね」

「ふふっ、そうやね」

「.....何を言いたいのかわかりましたよ。副会長も素直じゃないですね〜」

「そ、そう?ウチはカードの言う通りにしてるだけやけどな〜」

「またカードですか....」


東條副会長はいつも通り胸元からカードを取り出してみせる。

9人.....あと2人。
きっとその2人とは誰のことを指すのか言わなくてもわかる。
てか、なんでそんなこと聞くんだ?
.....まさか....μ‘sの名付け親って.....


素直になれない副会長を見てげんなりと溜息をつく

「はぁ.....まったく....めんどうな2人ですね」

「ふふっ、そうやね。でもな、μ‘sってのは9人揃って初めて輝くんよ。だから....えりちを頼むよ?優しい優しい生徒会補助員さん♪」



「........わかってますよ。」






ガチャッ



続いて入室してきたのは絵里先輩だ。

「絵里先輩お疲れ様です。やっぱり生徒会ってのは忙しいですね。多分絵里先輩がやった方が効率いいですよ、はは」

「そう......」

少し元気の無い絵里先輩を見て不審に思った


「えりち?どないしたん?」

「μ's...彼女たちは全然基礎がなってないわ。2年生は基礎が良かったけど他は全然だめ、バランス、柔軟性どちらか欠けている子もいればどっちも欠けている子がいる。よくこれでやって来れたわね」

「すいませんね....2年生以外にはなかなか基礎を叩き込む時間がなくて...」

「でも、どうしてそんなに表情暗いん?」

「.......」

絵里先輩は黙り下を向くだけ。なにかあったのだろうか

「お礼を言われたわ.....」

「お礼?」

「ええ、私はこのままオープンキャンパスまでずっと基礎ばかり続けさせるつもりよ。いつか根を上げると思うから。でも、根を上げるどころかやる気に満ちた目をしていて.....」

「えりち......」

なるほど....絵里先輩の性格ならいくら嫌な事でも意味のない事はしないはず。だから彼女たちに足りない基礎ばかりやらせて絵里先輩の指導はもういらないと言わせたいのだろう.....


「絵里先輩はやっぱり彼女たちの事をなにも分かってないみたいですね」

「え?どういうこと?」

「その証拠に今言ったじゃないですか『根を上げる』って。あいつら...絶対根を上げたりしませんよ」

「.....そう。でも私はこのまま続けるわ、いいね?」

「絵里先輩のご自由に」

そう言って、資料に目を戻す。









「お疲れ様でした」

作業が終わったのは6時を過ぎてからだった。あたりは薄暗く校舎には誰も残っていないのかしんと静まり返っていた。

生徒会室を出て、階段を降りかけたところで端に誰か立っているのが見えた。



「.........ことり?」

「大地くん、一緒に帰ってもいい?」

「あ〜今急いで帰りたいから、また今度じゃダメか?模試が近いんだ。」

「一緒に帰ってお話していい?」

「いやだから急いで--」

「おねがぁい♡」

「........わ、わかりました」

「ふふっ、大地くん優しいね。ありがと♪」




ことりは天使.....じゃなくてもしかすると小悪魔かもしれないと思った。






「え?俺の夢はなにか?」

「うん、大地くんはどんな夢を持っているのかな〜って」

夕方の住宅街に男子生徒女子生徒が2人で帰る姿。傍から見るとカップルに見えてしまう。そんなことを考えている最中、ことりは俺の夢はなにか...と尋ねてきた。

「夢....かぁ。あんまり考えたことなかったな〜」

「そうかぁ〜。聞きたかったな〜大地くんの夢。」

「ごめんね、もし夢を見つけたら真っ先にことりに教えるよ」

「ほんと?楽しみにしてるね」

ことりは笑っていた。でもそこはかとなく寂しげな目をしていた。
なにかあるな.....と直感で感じた。

「私ね、夢があるんだ。それも小さい時から憧れていた夢」

「よかったら聞かせてもらえるか?」

「.....私はね、将来服飾の仕事に就きたいんだ〜」

ことりはどこか遠くをみてゆっくり語り出す

「衣装作りしているからもしや、とは思ったけど..そうだったんだ」

「うん。でもその仕事に就くのに乗り越えなきゃいけない壁がいっぱいあるんだよね〜」

「.....どんな仕事に就くにしても壁なんてたくさんあるさ」

「..........」

やはり今日のことりはどこかおかしい。笑ってはいるのだが心からの笑顔ではない。なにか迷っているような....そんな感じだった。

「大地くんは」

「え?」

ことりは立ち止まり、俺を真剣に見つめる。ことりのその真剣な表情は初めてで、少し驚いてしまった。

「大地くんはこれから出す質問にどう答えますか?あなたは自分の叶えたい夢より今の時間、場所、友達を大切にしたいですか?それとも自分の叶えたい夢に向けて全てを犠牲にして追いかけますか?」


ことりはあくまで笑顔を崩さず、質問する。

「ん〜.....そうだな〜。俺は友達とかあまり多い方ではないから前者よりも後者を優先するかな〜。俺だったらだよ!」

「.....そう..ですか」

「ダメだよことり!俺の今言ったこと気にしちゃ!俺は友達が少ないからって理由で後者を優先しただけだからな!」

「大地くん大丈夫だよ〜。もしこんな状況だったらどう答えるのかな〜と思っただけ。今のは例えばの話しだよ。ふふっ....///」

一瞬俺の前からいなくなるんじゃないか......と思ったけど俺をからかうために質問したらしい

「なんだよびっくりしたな〜おい。確かにそんな映画や漫画みたいなこと現実に起こるわけないよな〜。さて、すっかり暗くなったし帰るぞ〜」

「あ!待ってよ大地くん〜。帰りにアイス買って〜」

ことりはいつもの心からの笑顔に戻り、俺の右腕に彼女の腕を絡めてくる

「ちょっ!///それはヤバイって!」

「んん〜?なにが?」

「いや!胸当たってるって!少しは気にしろや〜」






どうしてこの時....気づかなかったのだろうか
どうしてあの顔を見てなにも疑問に思わなかったのだろうか

後悔してもしきれないってこういう事を言うんだな.....

自分の不甲斐なさに......頭が壊れそうだった




〜☆〜

同時刻



今日は私が考えたオープンキャンパスの生徒会長の言葉を聞いてもらおうと亜里沙とその友達に家に来てもらった

「お姉ちゃん!」

「亜里沙、お帰り」

とてとてと私の元に駆けつけてぎゅうっと抱きしめる。
お返しとばかりに私も抱きしめ返す

「お姉ちゃんに言われたとおりに友達連れてきたよ」

亜里沙の後ろには1人の女の子が立っていた。
友達のお姉さんに初めて会うってことで少し緊張した顔つきをしている

「初めまして、亜里沙の姉、絢瀬絵里と言います。いつも亜里沙と仲良くしてくれてありがとう。よろしくね」

と言って、手を差し出す

「こ、こちらこそいつも亜里沙ちゃんと仲良くしてます。こ、高坂雪穂と言います」

そう言って私の手を握り返す

「高坂.....雪穂?」

聞いたことある苗字ね...しかも顔がどことなく似ている気がする

「雪穂にはね、お姉ちゃんがいるんだよ。しかもお姉ちゃんと同じ音乃木坂の2年生に」

ああ..やっぱりね、あの子の妹さんだったのね...


「そう....それじゃあさっそくだけどそこに座ってもらえる?」

2人に椅子に座るように促して準備を始める








「---このように音乃木坂学院の歴史は古く、この地域の発展にずっと関わってきました。さらに当時の学院は音楽学校という側面も持っており、学院内はアーティストを目指す生徒に溢れ、非常にクリエイティブな雰囲気に包まれていたといいます。」

私は準備してきた原稿に目を通しながら「修整したらしっかりこれを頭にいれておかないとね...」とぼんやり考えながら読みすすめる。


「そんな音乃木坂ならではの--「うわっ!!!体重増えた!」



............いきなり雪穂ちゃんの声にびっくりした私は読むのを止めてしまった。

体重が....増えた?もしかして居眠りしちゃってた?

それはつまり.......私の言葉に何も魅力がなかったってこと?


「あ.......ごめんなさい」

意識が戻った雪穂ちゃんは小さくなって謝る

「ごめんね、退屈だった?」

怒ることはなく、静かに聞いてみる。

「いいえ!すごく面白かったです!後半すごく引き込まれました!」

初対面の人、しかも友達の姉である私を批判できないよね....
しかも居眠りしてたから尚更よね

ちょっぴりショックは受けたけどそれは私のやり方が間違っていんだ

「オープンキャンパス当日までに直すから遠慮なくなんでも言って」

それしか私には言えなかった

「亜里沙はあんまり面白くなかったわ」

「ちょっと!」

亜里沙の発言に雪穂ちゃんは止めに入るも亜里沙は止まることなく続けた

「なんでお姉ちゃんはこんな話しているの?」

「なんでって...学校を廃校にしたくないからよ」

亜里沙の問いに少し苛立ちを覚えてしまった

「私も音乃木坂はなくなって欲しくないけど、でも.....








これがお姉ちゃんの『やりたいこと』?」





『絢瀬会長は廃校を阻止するために......何がしたいですか?』








私は亜里沙の質問に答えることができなかった。








〜☆〜




「ぐわぁぁぁぁぁっ!あと2週間も生徒会の仕事しなきゃいけないのかよ〜!!!」


絵里先輩にμ'sのコーチを頼んでから1週間後の水曜日。
溜りに溜まった資料の山に目を通し続け過ぎて頭がクラクラしてきました。ダレカタスケテェッ〜!!

「そんなこと言ってないで〜。ほらこの資料もちゃんとやっておくんよ〜」


そんな俺に東條副会長は追加資料をドサドサと積み上げていく

「....鬼副会長(ボソッ)」

「ん〜?大地くんなにか言った〜?」

「い、いえ..何にも」

「そう....それじゃあウチはえりちの様子を見に屋上行ってくるわ」

「りょ、了解っす......」

ドアが閉まるのを確認して俺は大きな溜息をつく


「生徒会の仕事を引き受けると言ったものの...まいったな〜」






少し廊下に出て気分転換するかな





〜☆〜




おかしい.......これはおかしい.....
あれから1週間経つのに一向にやる気を失うことがない。むしろ、日々やる気に満ちた目をするようになってきた。
一度も辛いとか、苦しいとか聞くことがなかった。
彼女たちは何故そこまでしてアイドルにこだわるの?



「はぁ.....はぁ.....」

みんな身体的に限界が来ている。それでもやめたいとは言ってこなかった

「休憩時間終わりよ、次のメニューをしなさい」

「はい!宜しくお願いします!!」

「「「「「「お願いします!!!」」」」」」


私は我慢できずに聞いてしまった


「あなたたち...辛くないの?」

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

質問に対しての返答は何故そんなことを聞いてくるのっというような表情だった。


「1週間ずっと同じことをしてきてこれからも同じことを続けていくのよ?私が続けさせるのよ?第一、上手くなるかどうかもわからないのにこんなことやって何の意味が--「やりたいからです!!」

ズキン


「え?」

やりたい.....から?この基礎トレばかりの練習をやりたいから?
そんな一言で済ませちゃうの?

「確かに練習はキツいです、体中痛いです!でも!廃校をなんとかしたいと思う気持ちは生徒会長にも負けません!!!」





高坂穂乃果の言葉は私の心をグサグサと突き刺していった。
それと同時に本当に理解してしまった



μ'sの魅力と.....私の、本当の気持ち


途端、その場にいることができなくなり、屋上から出てしまった


「せ、生徒会長!!」













『これがお姉ちゃんのやりたいこと?』


『絢瀬会長は廃校を阻止するために....何がしたいですか?』


『やりたいからです!!』


『私ね...μ‘sを見ていると胸がカ〜って熱くなるの。一生懸命でめいいっぱい楽しそうで』


頭から離れることのない3人の口から告げられた言葉。


いつからか、そんなことを忘れていた

気がつけば『責任』という二文字を自ら背負い始めていた。

気がつけば、やりたいことを素直に出来なくなってしまった。

気がつけば、自らか孤高の存在でありたいと思っていた


気がつけば




μ‘sに入りたいと、思ってしまった


あの忌み嫌っていたμ‘sに入りたいだなんて.....


「ウチな」

後ろから声がした


「っ!?希....」


「えりちと友達になって、生徒会やっきて、ず〜っと思ってたことがあるんや」

「.......思ってたこと?」



「えりちは....『本当は何がしたいんやろう』って」

「っ!!!!!」


希も亜里沙や大地くんと同じことを言った
あまりの衝撃的な発言に言葉を失う



「一緒にいると、わかるんよ?えりちが頑張るのはいつも誰かのためばっかりで、だからいつも何かを我慢しているようで、全然自分の事は考えてなくて!」

図星ばかり言われて耐えきれなかった。


私は希を無視して去ろうとする

「学校を存続させようっていうのも、生徒会長からの義務感やろ!だから理事長はえりちの事を認めなかったと違う?」

希はいつになく強い口調で私に問いかける。
核心を突かれ、戸惑っていることが自分でもわかる


「........」



「えりちの.......えりちの本当にやりたいことは?」

その言葉を聞いたのは何度目なのだろうか。



「......っ」


私のやりたいこと......そんなもの今更....できるわけないじゃない!



「......くっ」


私は希の方に翻し、睨みつける

「なによ......なんとかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!!!!!!!」


私は希に.......唯一の親友に怒鳴りつけた。

静かな廊下に怒鳴り声が響く


「私だって、好きなことだけやってそれだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよ!!!!!!」

「っ!え、えりち.....」

初めて打ち明けた私のストレートな想い。
怒鳴り声がしかも声が震えてしまった。でも、叫ばずにいられなかった
頬に暖かい涙がおちるのがわかる。
泣いているんだ....私


「自分が不器用なのはわかってる!......でも!今更アイドルを始めようなんて私が言えると思う?」

この言葉を最後に私は希から逃げ出した

「あっ!えりち!」



私は.......どうしたらいいの?
















「あれ?絵里先輩なにしてるんすか?」




「え?」

二階へ降りる階段の途中、窓を見ながらスマホを手にしている大地くんに声をかけられる

今の顔を見せたらまずいと思い、涙を拭う

「な〜んか上から怒鳴り声が聞こえたな〜と思ってたんですけど、絵里先輩だったんですね」

聞かれたとわかった瞬間顔が赤くなる

「う、うるさいわね...それより、生徒会の仕事はどうしたのよ。」

「ん〜...まぁいわゆるサボリってやつですね、はは」

「サボリって....あなたね〜」

さっきのことを忘れて少し気分が軽くなった気がした





「大丈夫ですよ、ちゃんとやりますから。.......でも










難しいコトですよね......どうしたらいいのかって」


「な、なによいきなり.....」


「ん〜?別になんでもありません。」

「そ、そう.......大地くんは何があったのか聞かないのね」

きっと大地くんはその話についてしたいのだろう
だから遠回りに私から話させようとしている
まったくずるい人ね

「聞いて欲しいって言うなら喜んでお聞きします」

「.....そう、じゃあお言葉に甘えて」

私はさっきの出来事を簡単にではあるが説明した。




「.........ははは。なんだ絵里先輩も結局わかってるじゃないですか。μ‘sの魅力。先輩はμ‘sに入りたいんですよね?」

「....ええ、でもあんなに否定してるし、ましてや生徒会長よ?私は」

「でも.....やりたいこと、見つかったじゃないですか。それでいいんですよ。俺だってもし女の子だったらμ'sの一員として一緒にいたいって思ったことありますから」

「.........」

「俺は絵里先輩...........『絵里』に笑って欲しいんですよ。」

え?今なんて言った?

「ちょっと!どうしていきなり呼び捨てに--「これ、実はみんなに言ってることなんですよ。初めて絵里の笑顔を見たとき不覚ですがドキッとしました。そんな良い笑顔を持ってるのにず〜っと仏頂面なんて、勿体無いです。もっと笑ってください、きっと....その方が自分のためになりますよ」

「笑顔が....自分のため?」

「はい、絵里は今まで人の為に頑張ってきました。もういいんですよ、少しぐらい肩の力を抜いて生きてみたっていいんですよ」


そんな彼の瞳には微塵も迷いなんてなかった。ただ『私に笑っていてほしい』が為にそこまで言ってくれた。

あなただって...自分の事を後回しにしているくせに.....
誰かのために頑張って損をする大地くん
失敗を恐れずやりたいことを突き通す大地くん


なんだ...違うけど、私と同じ境遇の人、こんなに近くにいるじゃないの


「ねぇ....大地くん。私に何ができるの?」

私はそんな彼に向けて質問をした。
彼の答えを聞きたかった

「そうですね........それは俺が答える質問じゃないって答えておきますね」

大地くんは私と背中合わせになるようにして答える。

「それじゃあ答えになっていないわ」

「いえいえ、これも立派な答えですよ。じゃあ今度は俺が質問しますね。絵里はこれから笑っていたいですか?」

表情はわからないが至って普通の声で質問してきた

「...えぇ、笑っていたいわ」

「それじゃあ、第2問!絵里が笑っていられそうな場所、それはどこですか?」



私が....笑っていられそうな場所。それは.....

「μ‘sと一緒にいられる場所.......かしら」

「2問目の質問に答えなんてありません。でも.....あなた自身の答えは見つけられましたね。まったく....ほんとに堅物なんですから絵里は....」

きっと彼は笑っている。そんな気がした


「でも...私は生徒会長としてのせきn--ひゃうっ!!!!」



背中から前にかけて暖かいものが覆い被さった感じた。
人の温もりを感じた。



大地くんに....抱きしめられた




「ちょ!ちょっと!いきなり何をするのよ!」

振り解こうとしても微動だにせず、むしろ抱きしめる力が強くなっている


「生徒会長だから〜とかμ‘sを嫌っていた〜とか言って、自分のやりたいことを棒に振るなんて勿体無さ過ぎだ。やってみればいいんだよ。特に理由なんて必要ない。やりたいからやってみる。......本当にやりたいことってのは....そんな感じで始まるんじゃねぇの?」






ストン




私の心の中の何かが落ちた。軽くなった気がする
私は......やりたいことを...やってよかったんだ



窓を見た。そこには生徒会長として凛々しい顔をして私を見つめている『私』が立っていた。彼女は私に微笑んだ後、どこかへ消えていった




「....ふっ.....ふぇっ......ふぇ.......うぁあああああああああっ!!!!」



私は大地くんの腕の中で泣きじゃくった。
嬉しくて嬉しくて嬉しくて....
私を助けてくれた彼に感謝して....
私は別れを告げた





じゃあね、生徒会長の『私』



















〜☆〜



「ふぇ.....ひっく.....」

「絵里先輩、落ち着きましたか?」

俺はポッケに入っているハンカチを使って涙を拭いてやる。

「ご、ごめんなさい...みっともない姿を見せてしまって」

しゅんと縮こまった絵里先輩は俺に顔を向けず謝罪の言葉を述べる

「そんなこと気にしないで。それよりほら、行きましょう。みんなの元へ」

「ま、待ってよ大地くん」

スタスタと先に行く俺を追いかけてくる絵里先輩は
隣にくるとぎゅっと俺の手を握ってくる。

「ちょっ///絵里先輩なにをやってるんですか」

「お願い.....今だけ....お願い....」

顔を真っ赤にして上目遣いでお願いする絵里先輩。
...絵里先輩にそんなことされたら断れじゃねぇかよー


「わ、わかりましたよ。その代わりμ‘sの所に行ったら離しますからね」









「おいっすみんな!!!」

まだ屋上で基礎トレやってたみたいだ。よかったよかった

「だ.....大地....さすがの私も....結構キツいです」

「お?海未が弱音なんて珍しいな〜。穂乃果〜生きてるか〜?」

「う、う〜ん...まだ大丈夫〜ちょっと休憩中〜」


「真姫〜。髪の毛クルクルいじってないで練習しろ〜」

「ゔぇえっ!私サボってない!」

「あれ?大地くん。どないしたん?」

ドアの側には何故か東條副会長がいた。

「あ〜副会長。いえいえ、ちょっと迷子の子猫ちゃんを拾ったのでμ‘sで預かって欲しいんですよ」

「迷子の子猫ちゃん?大地先輩それは一体どういうことかにゃ〜?」

猫というワードに反応した凛は駆け寄ってくる
みんなも気になるのか疲れた体を無理矢理起こし、俺の元に集まってくる

「お〜い、俺の後ろで恥ずかしがってないで出てきてくださいよ〜迷子の子猫ちゃん〜♪」

「だって....あなたが迷子の子猫ちゃんとか言うから恥ずかしくなって出るに出られないもの....」

顔を真っ赤にしてブツブツと文句を言う絵里先輩はゆっくりと俺の前に現れる。


「え....絵里先輩?」

「大地くん...これはどういうこと?」

「ふふっ...大地くんさすがやね」





絵里先輩の登場にみんな目を凝らす。
どうして?といった表情もあればまさか?という表情もあった

「絵里先輩、みんなに言わなきゃいけないことがあるんでしょ?」

「.....わかってるわ」

決意をした目で絵里先輩は一歩前に出る


「あの......今までごめんなさい!私も......私もμ‘sの仲間にしてください!!」



「絵里先輩........」

頭を下げる絵里先輩をみんなはどう思うのだろうか
ちょっとばかし俺も緊張する




「絵里先輩、これから宜しくお願いします!」

最初に言葉を発したのはリーダー穂乃果だった

「待ってましたよ。絵里先輩がμ'sに入ってくれるの」

「まったく...入りたいのなら素直に言いなさいよね〜」

「にこ先輩に言われたくないけど〜」

「私、絵里先輩のダンス見たいです!」

「凛も凛も〜!!」

「これで8人ね!海未ちゃん!穂乃果ちゃん!」


それぞれ思う事はあっただろうけど最終的にはこうなった。



「あなたたち......」

否定されるとばかり思っていた絵里先輩はすごく嬉しそうだった

「ことりちゃん、それは違うよ」

「え?」

「ウチを含めて9人や」

「希先輩も..?」


まぁ...俺の予想通りだな

「占いで出てたんよ、このグループは9人になった時未来が開けるって。だから付けたん。9人の歌の女神、『μ‘s』って」

「「「「「「「え?えええええっ!!!」」」」」」」

俺と絵里先輩、東條副会長を除いた7人は驚きのあまり飛び上がった

「じゃ、じゃあ!あの名前をつけてくれたのって希先輩だったんですか!」


「やっぱり...東條副会長だったんですね」

「え?大地くん。その発言からして前から知ってたの?」

ことりは俺の発言に反応してくる

「まぁ...ちょっと前にそんな話を東條副会長としたからね」

「大地くん?いい加減その呼び方やめれへん?ウチには希って名前があるんよ」

「...わかりましたよ、『希』先輩」

「ふふっ、素直でよろしい♪」

「希.....まったく呆れるわ....」

絵里先輩は希先輩の顔を見たあと屋上を立ち去ろうとする。それを穂乃果が呼び止める

「絵里先輩、どこへ?」


こちらに振り向いた時の絵里先輩の顔には、かつて生徒会室で見せたあの時の笑顔があった






「決まってるでしょ.......練習よ!!!!」



















遂にμ‘sの完成が訪れた。
入学してからこの日を迎えるまで毎日が慌ただしく過ぎていった。
充実して楽しかった


その日を境に絵里先輩に笑顔が増え、本当に楽しそうだった













2週間後





俺はというと








「それでは....試験を始めてください」


試験監督の指示のもと、模擬試験を始めた

今頃彼女達は....オープンキャンパスの真っ最中。
見に行きたかったけどこっちも大事だから....
それにあいつらなら大丈夫だと思う。
なんてったってμ‘sだぜ?音乃木坂学院スクールアイドルμ‘sだぜ?

え?なに?μ‘sを見てどう思うかって?そうだな.....
確かに一緒にいて楽しいよ。活き活きしているあいつら見て飽きない毎日送ってるよ。

だけどな、俺の本音はそれだけじゃないんだ....
ずっと言ってきた事なんだけどμ‘s完成記念として最後にもう一度言わせてもらいたい









なんでこんなにめんどくさいメンバーばっかりなんだよ!!!!!


まったくもう....はははっ

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧