八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十四話 お墓参りその十四
「博士とも何回か会ってても」
「そうしたことを確かめる機会がなかったんだ」
「それでなんだよ」
「あの人のそうしたことはなんだ」
「確かに言えないからな」
「そうなんだね」
僕もそう聞いて納得した。
「親父は確かめてないんだ」
「そのことはな」
「まあ少なくとも百歳はだよね」
「超えてるな」
このことは間違いなくというのだ。
「それは確実だよ」
「普通百歳超えてたら」
もうそれこそだ。
「お家で楽隠居だよね」
「大抵の百歳以上の人はそうだよな」
「大学に出て勤務とかね」
「講義も普通してたな」
「それも今もだよね」
「俺が聞いた限りじゃそうだな」
「有り得ないね」
僕は心から言った。
「それは」
「俺もそう思うさ、何か噂だとな」
「噂っていうと」
「実際は江戸時代から生きていたとかな」
「江戸時代って」
「そんな話もあるんだよ」
「それじゃあ仙人じゃない」
僕は思わずこうも言った。
「江戸時代からって」
「何かずっとこの大学にいるらしいからな」
「うちの大学古いけれどね」
明治の初期に設立された、そう思うと確かにかなり古い大学だ。
「その大学より昔から生きているとか嘘だよね」
「あくまで噂だけれどな」
「本当かな」
「だから噂だよ」
噂は噂というのだ、そうした話をしてだった。親父が運転する車は高等部普通科の正門まで来た。そこで二人で車から降りて。
親父は僕にだ、こう笑顔で言った。
「じゃあまたな」
「今度は帰って来る時はちゃんと連絡してね」
「気が向いたらな」
「気が向いたらじゃないから」
「俺はそういう人間なんだよ」
「全く、とにかくイタリアに戻ってもね」
僕はそんな親父にやれやれといった顔で返した。
「元気でね」
「御前もな」
親父は優しい微笑みでこう応えた、これが今の別れの挨拶だった。僕達はお墓参りの後で別れて今のそれぞれの場所に戻った。
第七十四話 完
2016・1・1
ページ上へ戻る