八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十四話 お墓参りその十二
「今もそうだけれどね」
「あの人は御前を絶対に裏切らない」
親父はまた言い切った。
「絶対にな」
「そのことは僕もわかるよ」
「そうだろ、あの人はそうした人だよ」
「親父も助けてもらってて」
「そのことがよくわかってるからな」
畑中さんがどうした人かだ。
「あの人を頼るんだぞ」
「親父と同じだけなんだ」
「むしろ俺以上だな」
「親父以上になんだ」
「頼れよ」
「それじゃあな」
こうしたことを話しながらだった、僕達は。
親父が運転する車で八条学園に入った、そして。
その学園の中も車で進んだ、いつも思うけれど広い学園だ。
学園の中を徐行の速度で進みながらだ、親父は僕に目を細めさせて言って来た。
「俺もこの学園に通ってたからな」
「そうだったね、親父も」
「保育園からこっちだった」
「ずっとこの学園の中にいたんだったね」
「ああ、大学までこっちだったさ」
八条大学医学部までというのだ、尚八条大学は医学部と法学部は国公立の旧帝大クラスの偏差値がある。
「それで動物園や水族館もよく行ったな」
「博物館とか美術館も」
「それで植物園とかな」
「あそこもよく行ってたんだ」
「あそこは美術館と並んで人気があったんだよ」
「人気?」
「デートスポットなんだよ」
微笑んでの言葉だった。
「そこに行ってたんだよ」
「デートなんだ」
「ああ、そうだよ」
その通りという返事だった。
「それでいつも通ったな、動物園は少なかったな」
「あっ、動物園はなんだ」
「どうしても動物の匂いがするだろ」
動物園はというのだ。
「あそこは」
「うん、どうしてもね」
動物がいる場所だからだ、その匂いがするのは当然だ。
「ライオンとか象とかいるからね」
「そのこと自体はよくてもな」
「匂いが苦手で」
「若い女の子は遠慮する娘もいてな」
「それで動物園はなんだ」
「あまりデートでは入らなかったな」
「成程ね」
僕も親父のその話を聞いて納得した。
「そうなんだね」
「そうさ、それでな」
「植物園や美術館にはよく行ったんだね」
「その次に博物館だったな」
「鉄道博物館は」
「ああ、鉄ちゃんの女の子と行ったな」
鉄道マニアの女の子と、というのだ。八条グループは日本全土に路線を持つ私鉄である八条鉄道を主要企業の一つに持っているのでそうした博物館もあるのだ。
「あそこも」
「全部行ったんだね」
「それで歩き回ったな」
「どの場所もだね」
「ここには二十年位いたな」
保育園から大学卒業までだ。
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