八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十四話 お墓参りその十一
「あっちはな」
「そうなんだね」
「まあイタリアじゃそっちも楽しめるからな」
湯舟の方もだ。
「いいけれどな」
「親父お風呂も好きだしね」
「風呂道楽ってやつだ」
運転しつつだ、親父は笑って僕にこんな言葉も言った。
「つまりな」
「お風呂も楽しんでるってことだね」
「ああ、酒に女の子にな」
「お風呂もだね」
「全部楽しんでるさ、イタリアでも」
「本当に何でもも楽しむね」
「ああ、イタリアに戻っても楽しくやってるからな」
それでというのだ。
「御前も楽しくやれよ」
「日本でだね」
「何かあればな」
その時はというと。
「俺に電話かけるか畑中さんに聞け」
「畑中さんなんだ」
「あの人は頼りになるし絶対に信頼出来る」
親父の今の言葉は太鼓判を押したものだった。
「だからな」
「何かあった時はだね」
「俺でもいいしだ」
「畑中さんもなんだ」
「あんなにいい人はいないさ」
親父は運転している為顔を正面に向けて僕に横顔を見せていた。その横顔が暖かく微笑んでいた。
「八条家で働いてくれている人達にもな」
「そういえや畑中さんいつも親父のことよく言ってるよ」
「そうか」
「いい親父だってね」
「あの人にはガキの頃から世話になっててな」
「そうだったんだ」
「色々助けてもらってたんだよ」
そうだったというのだ。
「本当にな」
「それでなんだ」
「今でもな」
それこそというのだ。
「そう言ってもらってるんだな」
「どんな人の悪口も言わない人だね」
「それで嘘も言わないしな」
「確かに凄くいい人だね」
「だから俺がいなくてもな」
その場合でもというのだ。
「畑中さんがいるからな」
「あの人を頼れっていうんだね」
「いざって時はな」
「僕を支えてくれる人だね」
「実際助けてもらってるだろ」
「何かとね」
八条荘に入ることが決まった時、いや親父が急にイタリアに転勤になって最初にいた家を出ることになった時からだった。僕は畑中さんに助けてもらっている。
「そうしてもらってるよ」
「だからな」
「それでだね」
「何かあってもな」
「畑中さんはだね」
「信じられるからな」
「僕に何があっても」
「あの人はあいつの味方だ」
絶対にというのだ。
「だからな」
「あの人を頼るんだ」
「何かあったその時はな、いいな」
「うん、わかったよ」
僕は親父のその言葉に頷いた。
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