八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十四話 お墓参りその四
「相手が痛いだけだよ」
「ヤクザじゃないんだからな」
「だからだよね」
「確かに人間圧倒的な暴力を受けたら黙るさ」
この現実もだ、親父は言った。
「何も抵抗しなくなるさ、けれどな」
「それでもだね」
「それでその人を納得させてるか」
暴力の対象のその人をか。
「恨むだよ」
「そうなるね」
「それでその恨みがその人からじゃなくてもな」
「それでもだね」
「巡り巡ってやがてな」
「自分自身にだね」
「返って来るんだよ、因果応報ってやつだ」
親父は冷めた目と顔で僕に言った。
「報いは絶対に受けるものだからな」
「暴力のそれは」
「弱い奴になって報い受けるなんて馬鹿な話だろ」
「そうだね、確かに」
「それ以上に相手を傷つける、俺の手はそうしたことの為にはないんだよ」
「じゃあ何の為にあるのかな」
「手術と遊びの為にあるんだよ」
その二つの為にあるというのだ。
「そんなことの為にはないんだよ」
「そういうことなんだね」
「ああ、だからな」
それで、というのだ。
「俺は絶対に暴力は振るわない様にしてるんだよ」
「誰に対しても」
「手も足も口もな」
「どれもだね」
「そういうことさ、それは御前もだな」
「暴力振るう先生見てね」
学校でだ、本当にこうした先生は多い。体罰とか言うけれどそれ以前に一般社会じゃ通用しない暴力を抵抗出来ない生徒に振るう先生はどうしてあんなに多いのだろう。
「絶対に嫌だって思ったから」
「ああはなるまいだな」
「うん、心からね」
本当にそう思った。
「だからね」
「ああ、そう思うことはいいことだ」
「そうだよね」
「そんな奴になったら終わりだ」
暴力振るう様な人間には、というのだ。
「そういう奴は自分より弱い奴にしかしないだろ」
「暴力を振るうことは」
「自分より腕力や立場の弱い奴にしかな」
「それ自体が弱いってことだよね」
「そうだ、一番弱い奴だ」
暴力を振るう人間こそがというのだ。
「病院にいると来るんだよ、患者で」
「暴力を振るわれた人が」
「多いのが親にやられたりな」
「児童虐待だよね」
「彼氏や旦那に殴られたりな」
「DVなんだ」
「大切な人を殴ってどうするんだ」
忌々しげにだ、親父は言った。
「それは最低だよ」
「それこそですね」
「そうだ、御前がそう思うんならな」
「絶対にですね」
「ならないようにしろ、いいな」
「そうだよね」
「俺もそれはしないしな」
それで、というのだ。
「御前にもして欲しくないからな」
「暴力を振るう様な人には」
「世の中案外そうした奴は多いにしても」
ここで僕は思った、今僕は暴力を振るう人は男の人だけだと思っていた、けれどそれは女の人も同じなのだ。
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