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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十四話 お墓参りその三

「原発爆発させた奴だのその前の奴だの」
「ああ、あの人達」
「あいつ等は駄目だったな」
「首相の器じゃなかったんだね」
「俺が見る限りな」 
 あの人達はというのだ。
「論外だった、けれどな」
「日本の総理大臣もだね」
「それなり以上の器が必要なんだよ」
「世界に影響を及ぼすだけあって」
「小物がやったらな」
 それこそとだ、前に進みはじめた車の中で親父はまた言った。
「ああなるんだよ」
「器が出てなんだ」
「自分の小ささと馬鹿さ加減を出すんだ」
「そうなるんだね」
「まあ馬鹿でもな」 
 それでもとも言う親父だった。
「器があるとな」
「いいんだ」
「まだな」
「そうなんだ」
「馬鹿でも器があるといいんだよ」
「そういうものなんだ」
「そうさ、まあうちの総帥さんは頭もいいがね」
 あの人はというのだ。
「周りにもいい参謀とか多いしな」
「参謀っていうと」
「軍師な」
 その立場の人だというのだ。
「軍師役にいい人も多いし実行部隊長も揃ってて」
「だからやっていけてるんだ」
「あの人のところには人が集まるんだよ」
「総帥さんのところには」
「何しろ俺みたいな奴にも公平に怒って気を回してくれるんだ」
 一族の中で歴代最悪の跳ねっ返りとさえ言われている親父にもだ。
「俺がガキの頃からな」
「総帥さんに可愛がってもらってるんだ」
「俺がガキの頃あの人はまだ総帥に就任したところだったさ」
「八条家、八条家の」
「まだな、けれど器は凄くてな」
「それで親父もなんだ」
「よく怒ってくれて一番認めてくれたよ」
 親父が悪いことをした時もいいことをした時もというのだ。
「冷たいものは感じなかったさ」
「そうなんだね」
「俺はやんちゃでもな」
 それでもというのだ。
「人として曲がってはいないって言ってくれてな」
「そうだね、確かに親父は破天荒だよ」
 極端な女好きでお酒好きでしかも遊び人だ、その桁外れっぷりから一族の中でも歴代最悪の不良と言われているのだ。
「けれど人としてはね」
「曲がっていないか」
「僕から見てもね」
「総帥さんと同じ意見か」
「女好きでも彼氏いる人や旦那さんいる人には手を出さないよね」
「小さな娘にもな」
「そこを守ってるし」
 常識と言えば常識にしてもだ。
「あとギャンブルしないし借金も絶対にしないし」
「それで暴力もか」
「絶対に振るわないよね」
「ああいうのは弱い奴が出すんだよ」
「暴力は」
「弱いから相手を自分の思うままにしたいって思ってな」
 従わせること自体にだ、親父は嫌そうに言及した。
「相手を認めなくてな」
「そして従わせようとしてだね」
「殴ったり蹴ったり罵ったりするんだよ」
「そうしたものだからなんだね」
「俺は強くなりたいからな」
 運転しつつ正面を見ながらの言葉だ。
「そんなことはしないんだよ」
「暴力を振るうことは」
「御前も自分が自分で暴力を振るいたいとは思わないだろ」
「うん」
 僕もその通りだと答えた。 
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