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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十二話 夜の電話その八

「困った親父ですよ」
「お顔が笑っておられますが」
「はい、何かそうしないとです」
「かえってですね」
「親父じゃないですから」
 そうした突拍子もなくて悪戯好きでないとだ。
「やっぱりそれでこそって思ってます」
「そういうことですね」
「そうです、それなら」
「それならですか」
「来たら来たで迎えますから」
「この八条荘に明日に来られても」
「そう言うと本当に来そうですけれどね」
 そうした親父だからだ、とにかく破天荒だ。
「そうなってもいいです」
「そうですか、わかりました」
「まあ明日は部活ありますけれどね」
「そしてですね」
「いよいよです」
 僕は先を、ほんの少しにしても先を見て言った。
「合宿です」
「そして八条荘でも」
「はい、旅行に行きますね」
「その二つがありますね」
「本当にいよいよですね」
 僕は海、江田島にそれに長崎のことを思い出して言った。
「その時が来ますね」
「左様ですね」
「そっちの方もありますし」
「若し止様がそうした時に来られたら」
「その時は仕方ないですね」 
 僕自身がいないからだ、だから例え親父が来てもだ。
「そう割り切ります」
「左様ですか」
「はい、まあ明日来るなら来て欲しいですね」
 合宿でも旅行でもないからだ。
「今のうちに」
「それなら」
「何かそう言うと来そうですけれど」
「それなら」
「まあ来るなら来るってことで」
 僕は割り切って言った。
「その時はその時ですね」
「それでは」
 こうしたことを話してだった、僕はその日は夏休みの宿題をきりのいいところまでしてから寝た。そしてその次の日だった。
 部活を終えて学園を出ようとした僕の前にだった、まさかという感じでだった。
 親父がいてだ、僕に笑って右手を上げて言って来た。
「おお、元気そうだな」
「本当に来たんだ」
「仕事が早く終わってな」
「早くって」
「昨日までずっと手術だったんだよ」
 外科医のそれがというのだ。
「立て続けにな」
「それでその手術をなんだ」
「全部終わらせてな」
「それで時間が空いたんだ」
「今日と明日はな」
 その二日はというのだ。
「空いたんでな」
「帰国してきたんだ」
「イタリアからジェット機飛ばしてだよ」
 そうしてというのだ。
「一気に戻って来たぜ」
「そういえば親父ジェット機も操縦出来たね」
「ああ、だから超音速でな」
 そしてというのだ。
「帰って来たんだよ」
「手術が終わって」
「ああ、すぐにだよ」
 その足でもう、というのだ。
「大阪空港まで行ってな」
「神戸までなんだ」
「後は八条鉄道でなんだよ」
「特急で来たんだ」
「だからあっという間だったよ」
「全く、いつも急だね」
 僕はまだ日が高い中で親父に言った。 
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