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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十二話 夜の電話その七

「そうしておられるんだよ」
「やれやれだな、とにかくな」
「戻るんだね」
「そうするかもな」
「かもなんだ」
「今はまだな」
「まあ帰って来たら」
 僕は親父が帰って来る前提で親父に言葉を返した。
「少しは大人しくしてね」
「酒に女の子をか」
「そう、総帥さんが怒らない位にね」
「それが一番難しいな」 
 親父はまた笑って言った。
「俺には」
「全く、本当に相変わらずだね」
「これが俺の生き方だからな」
「今度は僕がやれやれだよ」 
 さっきの親父の言葉を返した。
「よくそんな生き方が出来るよ」
「これでも借金はしてないし至って健康だからな」
「そのことはいいと思うよ」
 何だかんだでだ。
「まあ戻って来たら八条荘にも来てね」
「何が食いたい?」
「別にいいよ」
 親父の作る料理についてはだ、僕はこう返した。
「そうした気遣いは」
「折角スパゲティでもって思ってるのにな」
「シェフの人達もいてくれてるし」
「それでか」
「うん、気軽に楽しんでね」
「そうか、じゃあ帰ったらな」
「またね」
 こう会話をしてだった、僕達は電話をほぼ同時に切った。そして。
 僕は電話の間ずっと傍にいてくれた畑中さんにだ、微妙な顔で言った。
「あのですね」
「はい、お父様がですね」
「帰国するとか言ってます」
「その様にお考えなのですね」
「そうなんです」
「いいのではないでしょうか」
「いいですか?」
 僕は畑中さんに問い返した。
「ああした親父ですけれど」
「義和様にお会いしたいのです」
「僕にですか」
「はい、父親として」
「だからですか」
「そのこともありますし」 
 畑中さんは僕にさらに言った。
「それにです」
「それにっていいますと」
「祖国にもです」
「つまり日本にですか」
「里帰りをされたいのでしょう」
「理由は二つですか」
 僕は畑中さんに尋ねた。
「親父が帰りたい理由は」
「おそらくは」
「そうですか、まあ僕も本音は」 
「止様に帰ってもらってですね」
「会いたいですけれどね」 
 これが本音だ、何しろ親だからだ。
「正直言って」
「そうですね」
「はい、別に」
 特にとだ、僕は畑中さんに話した。
「いいです」
「お会いになられますね」
「そうします」
「そうですか、わかりました」
「しかし、本当に突拍子もない親父ですね」
 僕は畑中さんに本音を話してからだ、腕を組んでこう言った。
「いつもながら」
「そうしたことがお好きな方ですから」
「そうなんですよ、人を驚かせることが好きなんですよ」
 息子の僕にしてもだ、よくプレゼントとか言ってびっくり箱を貰って驚かされてだ、親父はその僕に笑って驚いたかとか言って来たものだ。
「悪戯好きで」
「それもまた止様ですね」
「迷惑なことに」
 実際にその顔で言った。 
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