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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七十二話 夜の電話その六

「別にね」
「おい、それはどうしてだ?」
「だって親父帰って来たら絶対にトラブル起こるから」
「それは気のせいだろ」
「だって親父歩くトラブルメーカーじゃない」
 その破天荒な性格故にだ。
「だからね」
「いいっていうのかよ」
「イタリアにいたらどうかな」
 今いるんその国にだ。
「そのままずっとね」
「つれないな、おい」
「じゃあ日本に帰ったら何するの?」
「決まってるだろ、いつも通りだよ」
 これが親父の返事だった。
「それこそな」
「お酒とだよね」
「女の子だよ」
 この二つだった。
「あと遊びだよ」
「その三つで派手な騒ぎ起こすから」
「いいのかよ」
「うん、イタリアで楽しくやっているんだよね」
「ああ、最高だぜ」
「それならずっとやっていけばいいよ」 
 イタリアで楽しくとだ、僕は親父に返した。
「日本に帰らなくて」
「やれやれだな」
「そういうことでね」
「おいおい、それが息子の言うことか」
「息子だからこう言うんだよ」
 僕は率直に言った。
「僕はいいけれどまた総帥さんに怒られるよ」
「あの爺様も相変わらずみたいだな」
「うん、最近僕も会ってないけれどね」
 それでもだ、あの人は。
「相変わらずお元気だよ」
「そうか、相変わらずか」
「親父イタリアでも派手に遊んでるから」
 このことは間違いない、親父が遊んでいない筈がない。ましてやイタリアみたいな美人さんが多くてお酒も食べものも美味しくて風光明媚な場所なら余計に。
「総帥さん怒っておられるよ」
「じゃあ聞き流すか」
「その態度がよくないんだけれど」
「あの爺様昔から俺には口煩いからな」
「それだけ親父がとんでもないんだよ」
「生活がか」
「そうだよ、だからね」
 僕は親父にあらためて言った。
「総帥さんも言われるんだよ」
「気にしなくていいのにな」
「そうはならないよ、八条家なんだから」
 同じ一族だからだ。
「その八条家の総帥さんなんだから」
「八条家っていっても末端だろ」
 僕達の家はというのだ。
「分家の分家でな」
「総帥さんは八条家は皆家族って言っておられるじゃない」
「だからか」
「親父にも言うんだよ」
「やれやれだな」
「とにかく日本に帰りたいんだ」
「ああ、またな」
「ううん、どうしてもっていうのならね」
 僕もそれならと親父に返した。
「いいけれど」
「ああ、やっぱりそう言ったな」
「総帥さんに怒られたいんならね」
「安心しろ、そこは聞き流す」
 親父は笑って僕に言った。
「完全にな」
「完全になんだ」
「いつも通りな」
「そういう態度だから余計に言われるけれど」
「言わずにいられない人だからな」
「うん、親父でもね」
 何でもほんの少しでも自分をなおそうという考えがある人は絶対に見捨てず何度でも言う人らしい。親父はそうは見えないけれど。 
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