英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第12話
その後暗号を解いて鍵と新たなる暗号を手に入れたリィン達は暗号が示す場所の建物―――風車小屋の扉の鍵を開けて小屋の中に入ると待ち望んでいた人物がリィン達に声をかけた。
~東ケルディック街道・風車小屋~
「―――辿り着いたな、リィン。」
「この声って……!」
「あ………!」
「―――やっぱり……!マキアス――――!」
声を聞いたセリーヌは驚き、セレーネとリィンは明るい表情をして声が聞こえた方向――――自分達をジッと見つめているマキアスを見つめた。
「はは……信じていたよ。君なら暗号を解いて、ここに辿り着くとね。コホン、その……プリネ達から君達の無事は知らされていたが、二人とも思ったより元気そうで何よりだ。」
「っ……!」
マキアスの無事の姿を見たリィンは思わずマキアスに抱き付いた。
「うわあっ!?ちょっ……君、お、落ち着きたまえ!」
(あらあら♪まさかご主人様自ら”初めて”抱きつきに行った人物が男とはねぇ?)
(ふふふ、中々興味深い展開になっていますね。)
(見ていて、ちょっとドキドキしますね………)
(フフ……仲間が無事でよかったわね、リィン……)
リィンに抱き付かれたマキアスが驚いている中、ベルフェゴール達はそれぞれ微笑ましそうに見守っていた。
「よかった、マキアス……!無事でいてくれて―――こうしてまた会えて……!あの時は……本当にもう、駄目かと……!」
「お兄様……」
「リィン……グスッ……君ってやつは。」
リィンの心情を知ったセレーネは微笑み、マキアスは涙ぐんでリィンの背中をポンポンと叩いた。
「僕達だって、あの場で倒れるつもりはさらさらなかったさ。それに君の仲間―――ベルフェゴールとリザイラやプリネが頼んでくれたサフィナ元帥とレン姫の助太刀のお蔭で僕達はこうして無事で逃げる事ができたんだ。そしてまた会えることを信じて……ここまで来てくれたんだろう?」
「マキアス……ああ……!」
「ま、まったく……しっかりしたまえ。……だが、ありがとう。また会えて本当に嬉しいよ。セレーネも久しぶりだな。」
「はい。こうして無事に会えて、本当によかったです……!」
マキアスに視線を向けられたセレーネは微笑み
「―――ふう、湿っぽいのはその辺にしときなさいよね。」
セリーヌの指摘に気付いたマキアスはセリーヌに視線を向けた。
「セ、セリーヌ!?それにあなたはたしか遊撃士の……」
「ああ……ここまでずっと手助けしてくれたんだ。」
「ハハ、ちゃんと会うのはカレイジャス以来か?改めて―――遊撃士協会所属、トヴァル・ランドナーだ。さっそくだが情報交換といこうじゃないか。」
そしてリィン達はマキアスと情報交換を始めた。
「1ヵ月前―――リィンが”灰の騎神”と飛び去った後……君も既に聞かされている通り、ベルフェゴール達が助太刀しに来てくれた。ベルフェゴール達が時間稼ぎをしている間に、リザイラが撤退用の魔術で僕達を逃がしてくれたんだが……その前にあの紅き飛行巡洋艦―――”カレイジャス”号が現れたんだ。」
「そうだったのか……!」
「じゃあ、あの場にアルゼイド子爵が……!?」
マキアスの話を聞いたトヴァルとリィンは驚き
「……ああ。リザイラが僕達を逃がす直前に上空に現れて……声が響いたんだ。『今は斃れる時ではない!未来を掴む為に、落ち延び、機を伺うがいい!』―――そんなアルゼイド子爵の言葉が。」
「はい……恐らくアルゼイド子爵はわたくし達を逃がす為に現れたんだと思います。」
マキアスの説明にセレーネは静かな表情で頷いた。
「あ…………」
「……あの人らしいな。」
「その後リザイラの撤退用の魔術が発動し……後はリィンもリザイラ達から聞かされているように、そのままトリスタから脱出したんだ。」
「その後、カレイジャスは……?」
「僕達がリザイラの魔術で飛ばされる少し前にどこかへと行ってしまった。その後どうなったのかは……僕達にもわからない。せめて無事でいるといいんだが……」
「……子爵閣下なら大丈夫さ。あの”光の剣匠”がそう簡単にやられるわけがない。」
心配そうな表情をしているマキアスを元気づけるようにトヴァルは真剣な表情でマキアスを見つめて言った。
「ええ、そうですね。そしてマキアスとフィー、エリオットは……リザイラの魔術でケルディックに辿り着いたんだな。」
「ああ、おかげさまでね。……そう言えば、リィン――いや、リザイラに会ったら言おうと思っていたんだが……リザイラのお蔭であの窮地から脱出することができたのに、リザイラに文句を言うのは間違っていると思うが……せめて、どこに飛ばされるとかどんな着地方法になるとかを前もって教えて欲しかったんだが。地上に着地する時、凄い勢いで落下したから本当に死ぬかと思ったんだぞ?」
「ハハ……」
(もしかして、あの子達が驚くとわかっていて黙っていたのかしら♪)
(ふふふ、どちらだと思いますか?)
(ぜ、絶対わかっていて教えなかったんでしょうね……)
(クスクス……)
ジト目で自分を通してリザイラに苦言をするマキアスにリィンは苦笑し、ベルフェゴールとリザイラの念話を聞いていたメサイアは冷や汗をかき、アイドスは微笑んでいた。
「えっと……マキアスさんはエリオットさんとフィーさんとずっと一緒に行動していたんですよね?」
「ああ。プリネがオットー元締めに僕達に協力するように口利きをしてくれたお蔭で、この潜伏先を紹介されてね。それからずっとこの状況を打開するために出来る事を探っていたのさ。飛び去った君の行方も何とか突き止められないかとね。」
「そうだったのか……みんな……頑張ってくれていたんだな。」
「……君のほうこそ。妹さんと皇女殿下のこと……本当に大変だったな。彼女達を取り戻すために……そしてエレボニア帝国とメンフィル帝国との戦争を勃発を止める方法を探る為にもどうか、僕も協力させてくれ。」
エリスとアルフィン皇女が誘拐された話を思い出したマキアスは辛そうな表情をしていたがすぐに気を取り直してリィンを見つめた。
「ああ……もちろんだ。ありがとうマキアス。」
「フフッ、まず一人目ですわね♪」
マキアスの言葉にリィンは力強く頷き、セレーネは嬉しそうに微笑んだ。
「そういや、あの暗号……中々見事だったぜ。あれなら”怪盗紳士”でも解くのは難しいんじゃねえか?」
「ハハ……だといいのですが。いつかリィン達がこの街に訪れた時の事を考えて、回りくどいとは思いましたがあんな方法をとらせて頂きました。」
「うーん……さすがに懲りすぎだと思うけど。それこそ”怪盗紳士”の影響を受け過ぎているんじゃないか?」
「確かに前もってツーヤお姉様からマキアスさんから渡された暗号だと知らされていなければ、”怪盗紳士”の仕業だと思いますわよね?」
リィンの指摘にセレーネは苦笑しながら頷いてマキアスを見つめた。
「ま、まあたしかに少し興が乗りすぎたかもしれない。コホン、それはともかく………エリオットとフィーにも早く連絡を入れてやりたいな。リィンとセレーネがこのケルディックに来ている事を知ったらきっと喜ぶだろう。」
「二人は出かけてるのね?」
「ああ、東の国境―――”ガレリア要塞”方面に抜けられないかを探りにね。」
「ガレリア要塞……!」
「酒場の女将さんの話じゃ、そちらには正規軍が張っているって話だったか。」
「確か話によるとそちらのあたりは激戦区になっているそうですよね?」
セリーヌの質問に答えたマキアスの話を聞いたリィン達はそれぞれ目を丸くしてマキアスを見つめた。
「ええ、要塞近くの演習場に陣を張っているようです。エリオットの父上―――猛将、クレイグ中将率いる”第四機甲師団”が。」
「”第四機甲師団”……帝国正規軍最強の師団か!」
「フフ、さすがはエリオットさんのお父様ですわよね……」
「じゃあマキアスたちは彼らとコンタクトを取ろうと……?」
「ああ、この状況を打開するヒントが得られないかと思ってね。僕の方はここで待機しつつ、連絡役とバックアップを引き受けていたというわけだ。もうしばらくしたら、二人から定時連絡が入るだろう。その時に事情を説明して合流の手筈を決めるとしよう。」
リィンの疑問に答えたマキアスは説明を続けた。
「ああ、了解だ。けど……そうなると少し時間が空きそうだな。何か他にできることがあればいいんだが。」
「せっかくだから、一度町に戻ってみるか?周辺の状況もできるだけ調べておきたいしな。」
「ええ、それがいいかもしれません。それでは、とりあえず町に向かいましょう。」
その後マキアスと合流したリィン達は再びケルディックに向かった。
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