お好み焼き
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5部分:第五章
第五章
「それからですね。最終的な判断は」
「そうですね。ではこちらも」
「はい。食べましょう」
こうして校長先生も先生ももう一方のお好み焼きもまた食べるのであった。そしてその結果出す判定とは。これしかないのであった。
「これはまた」
「そうですね」
二人で言い合う。それぞれのお好み焼きを口の中に入れたまま。
「どちらがどちらとは」
「言えませんね」
「はい」
これが二人の先生の結論であった。
「これはまたあまりにもレベルが高いので」
「確かに」
先生は校長先生の今の言葉に頷いた。
「どちらがどちらとは」
「言えませんね」
「さて。私達はそうですが」
ここであらためて言う校長先生であった。
「生徒達はどうでしょうか」
「それは人それぞれですが」
こう言って即答は避ける先生だった。
「ですが」
「ですが?」
「舌は正直です」
これがこの先生の考えであった。
「決して嘘はつきません」
「そうですね。人間言葉では嘘はつけても」
「舌で嘘はつけません」
校長先生に対して述べた。
「それは決して」
「それでは。中々面白い結果が出そうですね」
「ええ。さて」
ここでどちらのお好み焼きも奇麗に食べ終える先生だった。見れば校長先生もどちらも美味しそうに食べ続けている。
そしてまた先生に対して言うのであった。
「最近。食が細くなったのですが」
「そうだったのですか」
「歳でしてね」
一瞬だが苦笑いも浮かべる校長先生だった。
「どうしても捕捉なっていました」
「そうでしたか」
「ですが。今は」
次にそれまでの言葉を打ち消してみせた。そのうえでまた言葉を続ける。
「このままだとどちらも食べられますね」
「どちらもですか」
「そうです。どちらもです」
体格に恵まれている先生はともかくとして細く小柄な校長先生の食べる勢いもまたいいものだった。それを見ていると校長先生もまたどちらのお好み焼きもまた気に入っているのがわかる。
そして瞬く間に。校長先生もまたお好み焼きを二枚共食べ終えるのであった。そのうえで満足しきった声でこう述べるのであった。
「御馳走様です」
「食べ終えられましたね」
「これが私の答えです」
「それがですか」
「はい、そうです」
また満ち足りた声で答える校長先生であった。
「さて。後は」
「判定ですか」
「本当にどうなるか楽しみです」
また言う校長先生であった。
「どういった判定になるのか」
「そうですね。それでは」
「はい。私達もまた」
こうして先生達も判定を下すのであった。程無くどちらのお好み焼きも売り切れ判定となった。その結果はというと。
「何やて!?」
「こうなるんけ」
驚いているのは桜と菜月だけだった。二人はそれぞれの屋台から驚いた声で叫ぶ。だがそうなっているのはその二人だけであった。
「同じって何やねん」
「うちの方が上ちゃうんか」
「だってなあ」
「実際なあ」
しかし皆はその二人に対して言うのであった。実際に食べた面々の言葉である。
「味は互角だったぜ」
「完全にな」
「互角!?」
「何でじゃ」
二人だけが信じない。お互い顔を見合わせるがそれでもだった。
「大阪の方が上の筈や」
「広島ダントツじゃけえ。嘘じゃなく」
「いや、互角だったぞ」
「その通りですよ」
「げっ、ゴリラブタに」
「校長先生まで」
先生はともかく校長先生まで出て来たのは二人にとっては驚きだった。流石にまたゴリラブタと呼ばれた先生は不満そうであったが。
「食ってみてわかったんだ」
先生はゴリラブタと呼ばれて不機嫌になった顔で述べた。
「御前等の腕もいいしお好み焼きの味も互角だった」
「うち等の腕の問題やないんか」
「そうじゃったらやっぱり広島が」
「いえ、袴田先生の仰る通りです」
「袴田先生って?」
「だからゴリラブタのことじゃねえのか?」
実は先生の名前は殆どの人間が見事に忘れてしまっていた。その仇名ばかりが有名になってしまっているのであった。先生にとっては災難なことに。
「それってよ」
「ああ、そういやそうか」
「そういう名前だったな、そういえば」
「全く。俺の名前のことはまあいい」
本当はよくないはないのだがとりあえずはそれは置いておく先生だった。
「とにかくだ。大阪も広島もなかった」
「ないんか!?」
「そんな訳は」
「だから聞け」
全く納得しようとしない桜と菜月に対してまた言う先生だった。
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