魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第2話 零治VSライ
前書き
こんにちはblueoceanです。
早速遅れましたね。
OGの面白さにずっと付きっきりでした………
新暦72年9月中旬………
「ふあ~」
大きく背伸びをして固まった体を伸ばす。
2学期が始まり、色々とまた変わった部分がある。
先ずはオットー達3人の新たなナンバーズについてだ。
スカさんのお願いで、この3人もフェリア達同様に学校に通う事になった。学年はウェンディ達の1つ下だ。
ただ、居候する家はアルピーノ家にお願いしてもらいオットーとディードはアルピーノ家に居候することになった。
そしてセッテは有栖家で、フェリアと同じ部屋に居候している。
家も一杯一杯なのだが、セッテの強い希望に、フェリアが折れて同じ部屋という条件で決まった。
そして今、スカさん家はスカさんとウーノさんの愛の巣状態であり、クアットロとディエチも居心地が悪いと地球に遊びに来るたんびに愚痴ってくる。
まあ嫌々話すようで、そこまで嫌がっていないので良しとしよう。
「平和だな………」
9月だがまだ心地よく暖かい風を受けながらそう思える。
ミッドでは平和ながら色々と変化が起こっており、大変だとはやてがこの前連絡してきた。
はやての家に呼ばれているのだが、今度の休み、行ってみるか………?
しかしこっちも負けてはいない。
その原因が家の居候、ナンバー7セッテだ。
この娘はウェンディ以上に原作とかけ離れた性格をしており、悪を許さない、正義の塊みたいな性格で、引っ越してきて早々にカツアゲしてた不良を全員病院送りにしたりと大胆な事をしてくれた。
決して悪いことをしたわけじゃ無いが、付近の住人から苦情があったりと既に中学校の先生達から目を付けられている。
まあ現生徒会長、姉のウェンディがあの性格なのでむしろ褒めたりしてるのだが………
そしてもう1つ。
スカさんの家で一度模擬戦をし、圧倒的に勝ってしまってから、更に師匠熱が強くなってしまい、更に尊敬の眼差しで見られるようになり、その気持ちが暴走してしまっている。
一度、『お背中をお流しします』と言って風呂に裸で入ってきたときはかなり焦ったし、その後星達からみっちりオハナシを食らった。決して俺は悪くないのに………
とんだトラブルシスターなのである。
「俺さ、学校って本当に良いところだってやっと気がついた。こんな安らぎを得られる場所だなんて………俺はバカだったな」
実は昨日もセッテがいつの間にか俺の布団に潜っており、それを星達に見られ、学校に来るまでずっと小言を言われ続けた。
更にショックなのは我が家の癒し、キャロまでも冷たい事………
もう心が折れそうだ………
「………桐谷君、零治君壊れてるんだけど………」
「色々家で苦労してるんだよコイツ………」
「確かに2学期に入って寝てる事が増えたね………」
植川や桐谷、明人の話し声が聞こえるが取り敢えずスルーする。
今はこの癒しを大事にしておきたい。
「レイ、少しいいか?」
そんな中、夜美がB組を覗きながら俺を呼んだ。
「夜美?どうした?」
「すまん、数学の教科書を忘れてしまってな、貸してくれないか?」
「ああ、いいよ」
そう言って数学の教科書を渡した。
「しかし夜美が忘れ物とは珍しいな」
「我だって忘れ物くらしする。………昨日少し夜更ししてしまってな………」
「あんまり夜更しするなよ、肌荒れるぞ」
「分かってる。それに朝あんな事があってちゃんと確認する暇も無かったのだ」
「いや、それは俺は悪くないだろう………」
「レイが無防備過ぎるのだ」
いや、流石に熟睡してたら誰だって無防備だろうが………
「我も思い切って潜り込んで………」
「夜美………?」
「!?ああ!!それじゃあ授業が終わったら返す」
「あ、ああ。………変な落書きするなよ?」
「するか馬鹿者」
そう笑いながら言って夜美は戻っていった。
しかし途中何か呟いていたが、本当に変な落書きをされたらどうしよう………?
この前ライに貸した古文の教科書はよだれでベトベトになってたし………
まあ夜美ならありえないか。
「相変わらず仲がいいね」
「別のクラスになったのはこういうのが良いよな。忘れ物しても借りられるし」
「あの様子を見るとセッテの影響はそんなに無いんじゃないのか?」
「夜美は他の2人よりは分かってくれてる所があるからな。それでも怒るときは怒るし、普段怒らない夜美が怒るのも結構怖い………」
「確かに大人しい子が起こると怖いって言うしね………ってあれ?何でみんな離れるの?」
「い、いや………」
「何でもない………」
桐谷と明人は何でも無いと言ったが、実際は大有りなのだ。
植川が一旦キレ出すと普段のほんわかした雰囲気は何処へやら、もう止めようが無いくらい暴走する。
まるで二重人格の様に。
「とにかく、最近疲れ気味なので次の時間もゆっくり寝ることにする………」
「魔王様がいないから安心だな」
「「魔王様………?」」
「へくし!!」
「高町さん?どうしたの?」
「い、いえ!!何でも無いです!!………誰か噂でもしてるのかな………?」
「師匠、お迎えに上がりました!!」
帰りのホームルームが終わると同時に後ろのドアが勢い良く開き、そこにはピンクの髪の少女が。
言わずともがな、セッテである。
「俺、師匠じゃ無いって」
「いえ、そんな謙遜なさらないで下さい!!私をものの見事にま………」
そこまで口走った所で桐谷と共に、セッテを取り押さえた。
「な、何をするんです!?」
『お前こそ何言ってるんだ!!ここで魔法の事は喋るなとあれほど………』
「はっ!?申し訳ございません、うっかりと………」
………まあ口走った所で誰も信じないだろうが。
「………取り敢えず今日は帰るぞ。今日は士郎さんが忙しいから俺達だけで鍛錬だ」
「はい!!よろしくお願いします師匠!!」
もう大声で言わないでくれ、皆に変な目で見られるだろうが………
「へぇ~零治君って偉いんだね!!」
訂正、おかしな奴が一人いた。
「植川さん、その反応はおかしいと思うよ」
「ふぇ?」
本当に変わってるよな………
「師匠、早く早く!!」
「わ、分かった、じゃあまた明日!!」
「あっ、うん!!」
「じゃあな零治」
急かされて俺達は教室を出ていった………
「さあ、始めましょう!!」
学校から真っ直ぐ家に帰った俺達。
途中ライが俺を見つけ、一緒に帰り、家にいた優理も行きたいとごねたので、アギトを含め、5人でトロメイヤへ来ていた。
キャロは宿題をするとかで真白ちゃんと図書館に出かけたらしい。
「師匠!!何ぼけっとしているのですか!?」
そう言って手には既にセッテの固有武器、ブーメランブレードが両手にあった。
「じゃあ始めるか」
「はい!!」
このブーメランブレード、結構くせものである。
セッテの先天固有技能、スローターアームズによりブーメランブレードを今のところ最大3つまで展開でき、それをブーメランの様に使いながら操る。また自ら斬り込む事も出来るのだ。
その攻撃は360度囲まれいるような感覚だ。
しかしセッテは相手が悪かった。
「っ!?流石師匠、オールレンジからの攻撃も難なく避けますね!!」
「まあ、俺の師匠みたいな人はもっとえぐい攻撃をしてきたからな」
その師匠とは当然、先輩ウォーレン・アレストの事である。
あの人の攻撃はバカみたいに多く展開した魔力弾とスフェアの絶え間ない攻撃。
一つ一つの威力は弱いのだが、塵も積もれば山となる。
ブラックサレナのフィールドでも耐えきれないほどである。
そんな怒涛の攻撃を喰らい、避けてきた俺にとって3つのブーメラン位簡単に避けられるのであった。
「空牙絶咬!」
大振りになったセッテの隙を突いて高速の突きを繰り出した。
「あがっ!?」
その一撃は見事にセッテの脇腹に直撃し、地上に落ちていった………
「さ、流石師匠………私、まだまだですね………」
「まあな、ブーメランの操作もままないし、クロスレンジの戦闘も甘い。せめてブーメランの操作と連携がしっかりすればまだうまく戦えるんだがな………」
「ううっ、精進します………」
「………まあセッテは身体能力も他の姉と比べても凄いんだし、これからもっと強くなるよ」
「ご指導ありがとうございます、師匠!!」
と、深々と頭を下げるセッテ。
「そしてこれからもご指導、よろしくお願いします!!」
と最後に目をキラキラさせて言うのだった……
さて、もう一方の2人、ライと優理も模擬戦を始めた。
「ライさん速い………」
戦いを見ていたセッテが思わず呟いた。
誘導弾を飛ばし、ライのスピードを緩めようとする優理だったが、ライの速さにまだ一度も直撃してない。
「くうっ、バスター!!」
ライとのタイミングを合わせ、盾からディバインバスターを飛ばしたが、戦闘機の様にローリング回転しながら避け、そのまま………
「でりゃあああ!!!」
勢いそのまま、斬りかかった。
「うぐぅ………!!」
その攻撃を何とか受け止める優理。
「うん!優理も大分盾の使い方が慣れてきたね。だけど防戦一方じゃ勝てないよ!!」
そう言って怒涛の勢いでハーケン状態のバルニフィカスで斬りかかる。
「分かっているけど………!!」
しかしライの攻撃によって攻撃に転じられないようだ。
ライも本気で攻撃しておらず、同じ攻撃を繰り返しているので隙はあるのだが、優理はそれを見つける余裕が無いみたいだ。
「今!!………ああっ、優理さっきのタイミングならカウンターで返せたのに………」
と空を見上げながらセッテが呟く。
確かにさっきのタイミングならセッテのブレードでカウンターの様に返せるだろうが、優理は大きな盾とレイピアである。
今のタイミングだと自爆するだろう。
「………優理はまだ盾の使い方を完全に理解できてない。盾は守るものって認識を捨てきれないと、攻め寄られた時、相手に好き放題やられてしまう」
「ですが師匠、じゃあどうすればいいのでしょう?」
「簡単だよ、武器として考えて使えばいい。そうすれば本当の意味で攻防一体の戦闘が出来るんだけどな………」
やはり今の優理では難しい事のようだな。
「あっ!?」
そしてとうとう優理は押し負けたのだった………
「優理、残念だったね」
「デバイスって難しい………もっと上手くいくはずだったのに………」
「僕を倒すのには10年早かったね!!」
「………ライに一撃も与えられなかったのが本当に悔しい………」
サムズアップするライを見て睨みながら呟く優理。
本当に悔しかったようだ。
「まあ随分と上達してるよ、頑張れ優理」
「うん。今度はライに勝つ!」
ビシッと指を指して宣言する優理。
いつになるか分からないが、俺も楽しみにしてよう………
「………どうでもいいけどアタシの出番は無いのかよ!!」
あっ、アギト連れてきたの忘れてた。
見てるのに飽きたのか、空中で寝そべりながら怒ってきた。
「悪い、悪いアギト。今日も無しかな………」
「なんだよ………だったら家でドラマ見てれば良かった」
そう言ってブツブツ文句を言うアギト。
何だが本当に悪いことしたな………最近ユニゾンも無しで、翠屋で特訓したり、今日みたいにセッテの相手などしてて全く相手をしてあげれなかった。
今度、何処かへ連れてってあげようかな………
「ねえ、レイ。だったら一戦しない?レイはユニゾンして僕はスプライトフォームの対決でどう?」
ライがスプライトフォームを使うとなると出来ればアーベントを使いたいのだが………
「マジか!?やろうやろう!!なっ、零治?」
ここまでテンション上がってたら断るにも断れないよな………
「これも経験か………よし、やるかアギト!!」
「ああ、見せてやろうぜ!!アタシ達の強さを!!」
「………何か羨ましいから僕も絶対に手加減しないからね!!」
そんなこんなでセッテと優理を放置して、1対1の対決が始まるのだった。
「よし!!それじゃあ行くよ!!」
腕のバリアジャケットが無くなり、綺麗な白い足がしっかり見えるレオタードの格好に。
「エロい………」
『『零治………?』』
「すいません………」
俺の相棒達にドスの効いた声で呼ばれて思わず謝る。
………だが、あの巨乳にあの服装はマジで反則。
スプライトフォームは滅多に使わないので、俺も慣れていないのだ。
「行くよ!!!」
そんな一言と共に、目の前から一瞬で消えるライ。
「消えた!?」
そんな事を思いながらも不意に感じた感触に自然と刀を向けると。
「ぐうっ!?」
重い衝撃が俺を襲った。
「あれ?レイ、僕のスピードに付いて来れなかったと思ったけど、そうでも無かったのかな?」
「くそっ!!」
鞘ですかさず斬りかかったが、またもその場から消えてしまった。
『ライ、マジで速い!!』
『私でも反応が付いていかないです!!前よりも断然速くなってます!!』
「ラグナルでも駄目か………」
まあアーベントじゃ無いと言うのも理由にあると思うが、前よりこれほど速くなっているとは思ってなかった。
ブラックサレナで防御に徹するもあのスピードに乗った攻撃に長い間耐えられる気がしない。
「そうなったら後は俺の感覚を頼りに………」
『マスター!!誘導弾が!!』
右側上空から俺に向かって光翼斬が2つ飛んできていた。
スピードが先ほどのライよりも断然遅いので、更に遅く感じている。
しかしそれがいけなかった。
「あぐっ!?」
光翼斬に気を取られて、ライの事が頭から離れてしまった。
思いっきりハーケンで斬られ、空中から地上に真っ逆さまに落ちていく。
『ファ、ファイヤーフォール!!』
アギトが炎の盾を地面に展開してくれたおかげで、地面にダイブせずに済んだが、それでも先ほどの一撃は結構効いた………
「流石だね、結構思いっきりやったつもりだったんだけど」
「………効いてるよ、充分」
身体の所々に痛みがある。やっぱりこのフォームのライのスピードは凄い。
下手をしたらフルドライブしたアーベント並かもしれない。
「でも僕もこれからだよ!!」
そう言ってバルフィニカスをザンバーに変え構えるライ。
『どうする零治?ブラックサレナになって隙が出来るまで耐えるか?』
『駄目ですよ、いくらブラックサレナの防御でもいずれ破られてしまいますし、防御に徹したら更に威力のある攻撃でくるでしょう』
『じゃあどうするんだよラグナル!!』
『私も今考えています!!』
「………2人共、ちょっと良いか?」
「さて、レイはどうするかな………?」
今のレイは僕のスピードに付いてこれてない。
このままならスピードで押せる。
この格好は恥ずかしいけどスピードは桁違いだ。これなら絶対にレイに僕の力を認めさせられる。
「僕は頼りになるって見せるんだ………」
僕が、レイを守る為に………
「行くよ!!」
再び僕は駆け出す。
レイは僕が動いても何もせずその場で刀に手を添えて、抜刀の構えをしている。
恐らくカウンターで近づいた所で一閃するんだと思う。
だったら………
「今度はもっと細かく行くよ!!」
光翼斬だけでなく、槍型のスフィア雷刃衝を飛ばす。
これならレイも動かざる追えない筈………
抜刀術はその場に構えてないと出来ない剣技。前に漫画で読んだことがあるけどあの斬撃を繰り出すにはしっかり構えて相手が来たときを狙うのが一番だ。
だったら体勢を崩し、その瞬間を攻撃すればいい。
なのに………
「えっ!?」
雷刃衝は魔力弾だから避けられるのは仕方が無いと思う。だけど………
「光翼斬まで一歩動いただけで!?」
光翼斬は誘導弾だから多少追尾するのに、まるで軌道が分かっている様な動き………僕の考えが読まれてる!?
「でも一体何で………?」
『マスター………』
『レイジ………』
まさかここまで上手くいくとは思っていなかった。
俺がやっていることは単純。ただ感じ、少ない動きで避けているだけ。
これは高町家の鍛錬での成果の一つだ。
あの人達の動きは人間離れしていて、魔法が無ければ普通の人間の俺が対応出来る訳が無かった。
だけど御神流の奥義、『神速』はどうしても魔法無しで習得したい。
可能性はかなり低いとは思っているがそれでもチャレンジしたかった。
やはり最初こそ、目で追うことすらままならず、ボコボコにされ続けていたが、ある日自然と感じる様になった。
何処から攻撃が来るか、どの様な軌道なのか。
無論完璧ではない。だけどそのおかげで前よりも多少打ち合いが出来るようになった。
避けられなくても受け止められる。
最もその先にステップアップ出来ないので少し焦ってきているのだが………
『すげえよ零治!!』
今回の場合もライも動きは避けきるのは無理でも向かってくる魔法は避けたり斬る事が出来た。
『これならライに集中出来ますね!!』
「だが完璧じゃないんだなこれがな………」
『完璧じゃない?』
「動けないんだ………いや、詳しく言うと凄く集中しないと感じられないから動きながらだとどうしても避けきれないし、斬るのも無理なんだ」
これが唯一の弱点。
相手が向かってきたのを感じ、抜刀で足を止めるしか無いのだ。
『………それって結局ジリ貧じゃないか?』
「まあな。それにいつまで集中力が持つか分からないし………だけどライが向かってくれば………」
『反撃するチャンスがあるって事ですね』
「それまで避け続けてみせるさ」
そしてそのチャンスは意外にも早く訪れた………
「何故かレイには僕の魔力弾の動きが読めるみたい………」
まるでエスパーみたいな事をするレイ。本当に最小限の動きで避けたり刀で斬ったりするのでどうすれば良いのか良い案が思い浮かばない。
「だけどずっと構えを変えないのは絶対に抜刀で僕の足を止めるのが狙い。………だからと言って威力のある砲撃魔法を使っても放つ前にクロスレンジに持ち込まれたら………」
レイの転移は本当にやっかいだ。これくらいの距離なら一気に攻めよられてしまう………
「やっぱり凄いよレイは………」
僕達の為に頑張るレイ。そんなレイを本当に愛してる。
「だからこそ僕もレイの為に………その為に強くなるなら逃げちゃ駄目だよね………」
そう思った僕は覚悟を決め、ザンバーを向ける。
「行くよレイ、瞬雷一閃!!」
僕はレイに向かって駆け出した………
「………来る!!」
ライはバカ正直に真っ正面から向かってきた。
何とか反応し抜刀した俺だったが、迷いの無い一撃に押し返されそうになってる。
『何てパワー!?』
『零治、負けるな!!』
「うおおおおおっ!!」
「はああああああ!!」
両方、全力の鍔迫り合いが続く。
しかしスピードに乗ったライの攻撃に徐々に押され始めた。
そして………
「くっ!?」
押し負けて体制を崩してしまった。
「今だ、雷刃瞬連斬!!」
その隙を見逃さなかったライは勢いそのままでザンバーを高速で何度も斬りかかる。
『レ、零治………!!』
『マスター、アギト!!』
体勢を崩した零治が避けきる事も出来ず、全て受けてしまう零治。
そのまま吹っ飛ばされた。
「レイ!?」
「師匠………まさか………」
「………僕の勝ち………?それにしては………」
違和感を感じたライは怪訝な顔で零治を見る。
「痛てて………受け流してこの威力か………」
「………そうだよね、感触がイマイチだったから………これくらいじゃレイも負けないよね」
「まあな。だけどライも随分と強くなったな。ハッキリ言って予想以上の速さでその場しのぎで耐えるしかなかったぜ………」
「レイに守られてるだけじゃ駄目だと思ってるからね、僕も星も夜美も」
「………本当に俺は幸せ者だ」
そう言って剣を鞘に戻し、手を添えた。
「また抜刀?」
「スピード勝負といこうかライ」
「正気?僕のスピードについていけなかったのに?」
「忘れるなよ。瞬間的なスピードならアーベントより速いんだぜ」
そう言って体勢を低く構える零治。
前足に力を込め、ライを見据える。
「………良いよ。僕だってレイに負けないから」
ライもザンバーを後ろに構え、体勢を前のめりに構える。
互いが互いを見据え、ぶつかり合う瞬間を待つ。
そして………
「抜砕竜斬!!」
「雷光滅斬!」
一層ザンバーの出力が上がったライとライよりも速く一歩を踏み出した零治。
2人の技がぶつかりあった………
「………速い」
「全然見えなかった」
優理と私、互いに呟く。
師匠とライの一閃。
そのスピードはどちらも一瞬の出来事で私には何が起きたのかも分からなかった。
だけど………
「かはっ!?」
師匠が刀を鞘に収めた瞬間、ライに無数の斬撃が襲った。
まるでダメージまでもスピードに置いて行かれたみたいに。
そのままライは地面に倒れ付した。
「ぐふっ!?」
だけど師匠の方も地面に膝を着いた。ライ程のダメージは無いみたいだけど、苦しそうだ。
「ユニゾンアウト………」
アギトともユニゾンを解除し、アギトはフラフラと師匠の肩に止まった。
「お疲れ………」
「零治もな」
そう互いに言い合い、師匠はライの方へゆっくり歩いていく。
「ライ、そのフォームでこんな一騎打ちみたいな戦いはやめたほうが良いな。リスクが多過ぎる」
「そう………だね。一回の攻撃をモロに受けただけでここまでダメージがあるなんて………」
「まあ遠距離で戦われていたら完全に俺の敗けだったな。避けるのだってずっと避け続けるのなんて無理だし………」
そう言いながら立ち上がるライのバリアジャケットはボロボロで際どい格好が更に際どくなっている。
本当にスタイルがいいなぁ………私だってもう少しすればいつかは………
「………ライ、取り敢えずバリアジャケット解除して元の格好になってくれ」
「えっ………!!」
自分の格好に気がついたライは直ぐにバリアジャケットを解き、いつも家にいる格好になった。
「レイのエッチ」
「………否定できないな」
そんな会話をした後、イチャイチャし始める2人。
「セッテ………」
そんな2人を真剣な眼差しで見つめていた優理が不意に私に声をかけてきた。
「何?」
「私達、弱いね」
「………そうだね」
「強くなりたい」
「私も」
「私もレイを守れる様に………」
「師匠と肩を並べられるように………」
「負けないよセッテ」
「私もです優理」
互いの気持ちは同じようだ。
優理、貴方には絶対に負けません!!
「へえ、ライと戦ったんですか………」
「ああ、かなりギリギリの勝利だったけどな」
夜、リビングのソファーに座りながら星、夜美、フェリアと共にお茶を飲みながら話していた。
「そのライは今何をしているんだ?」
「部屋でぐーすか寝ていたぞ?」
フェリアの質問に夜美が答えた。ライだけでなく優理やセッテも今は夢の中だ。
「すぅ………すぅ………」
「アギトもお疲れですね」
「久しぶりのユニゾンで少しはしゃいでいたからな」
だけどアギトにはいざというときにいつも助けられてる。
まあそれと同様に色々巻き込まれてるんだけど………
「お疲れアギト………」
「うにゃ………」
「猫みたいだな」
フェリアの言葉にクスクスと笑いあった。
「レイ、少しは私達の事認めてくれました?」
「………元々認めてるよ。本当にお前達が居てくれて本当に良かった」
「そ、そうですか………」
「わ、分かっていれば良い………」
体を縮こませて同じタイミングでお茶を飲む2人。
「全く、星達も中々成長しないな………」
そんな相変わらずの2人に思わず呟くフェリアだった………
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