魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第3話 それぞれのバレンタインデー
前書き
こんにちはblueoceanです。
またもや遅れましたがOGも1話。
熟練度もちゃんととったので、真ラスボスとバトル。
1ターンに3回行動とかどうなの?
まさにリアル系が辛いステージです………
とにかくもう終わりそうなので、こっちに集中できそうです。
新暦73年2月………
「はい、バレンタインデーのチョコレートです!」
「あのさ、植川さん。渡すタイミングってあると思うんだ………」
バレンタインデーの当日の朝。いつも以上にテンションが高い植川は星達3人が居る前で堂々と
俺にチョコを渡してきた。
「ふぇ?」
「「「………」」」
ほらもう後ろの3人からの視線がビシビシと………
「これね、私のオススメのチョコ屋さんのチョコなの!!昨日買いに行ったんだけど2時間も待っちゃった~」
「………手作り………じゃ無いんですか?」
「え~せっかく食べるならおいしい方がいいじゃない星ちゃん。それについでに私も食べれるし!」
相変わらず植川はずれているが、お陰様で3人の痛い視線も和らいだみたいだ。
「じゃあ、明人君と桐谷君にも分けてくるね!!」
そう言ってさっさと行ってしまった。
あげるじゃなく分けると言った辺りも植川らしい。
「本当にお菓子好きなんだね雅は」
「羨ましいものだ。ライと同じで食べても太らないからな」
「そうですね………」
そう言ってブルーになる星と夜美。
昨日、『また1キロ増えた………』と呟いていたとキャロから聞いていた。
最近ダイエットの関係で野菜中心、低カロリーな物中心の夕食が続いており、特に肉好きのアギトやライは辛い思いをしている。
俺は別に何でも良いのだが、流石に飽きてきた………
「零治君~!!」
そんな大きな声で俺を呼ぶ声。
今年、新生徒会長になった水無月先輩だ。
高校生になっても人気は変わらず、ほぼ満場一致で生徒会長に決定した。
「朝から元気ですね………」
「あらそんな事言っていいの?せっかく愛のこもった特製チョコを渡すために待ってたのに………」
と悲しそうな顔をする会長。
先に言っておこう。会長はその容姿、成績優秀、優しくリーダーシップのある。
そんな会長は男からだけじゃなく、女子(特に1年)からも絶大な人気があるのだ。
「あり得ない零治君………水無月先輩を泣かせるなんて………」
「そう言えばいつも星ちゃん達と一緒に居るわよね………?」
「まさか2股!?いえ、何股か分からない!!」
こんな感じで根も蓋も無い噂が広がっていくのだ。………いや、周りから見ればそうでも無いか。
まあとにかく中3の会長だった時の人気も随分と冷めてしまった。
いや、よくよく考えてみると今まで広がらなかった方が不思議か。
もしかしたらSBS団の影響で俺の噂が広がらなかったのかもしれない………
アイツら相当女子に嫌われてたからな………
「済みません、じゃあありがたくいただきます」
「そうしなさい。大丈夫よ、中にわさびでも入れてる訳じゃ無いんだから………」
受け取る寸前、受け取る手をピタリと止めた。
「入れたんですか………?」
「あら?話を聞いていなかったの?私は『わさびでも入れてる訳じゃ無いんだから』って言ったのよ?」
何だろうものすごく意味深に聞こえてくるんだけど………
「それともせっかく苦労して作った私のチョコは要らないって言うの!?」
芝居じみたその言葉に周りはすっかり騙され、男子からも嫉妬の怒りが俺に向かってきているのを感じる。
「分かりました、食べます食べますよ!!」
「そう。なら絶対に1人で食べてね」
「絶対に何か入れたでしょ!?」
俺、今日腹壊さないでいられるかな………?
「………」
「何で零治こんなにブルーなんだ?」
「全校生徒の前で水無月会長からチョコをもらい、男子生徒から嫉妬で締め付けられる様な思いをし、最後に星達に冷たくされ、もう心が折れる寸前って感じだ」
「なるほど………流石桐谷」
「お前ら………友を慰める気は無いのか!?」
「まあ毎年似たような目に合ってるんだ、いい加減慣れろ」
「ううっ、キャロ………」
「零治の最後の心の拠り所はキャロちゃんなんだ………」
明人の言うとおり確かにキャロは俺の大事な大事なマス………愛妹だ。
「それにしても不公平だ………桐谷の方がたくさんの人から貰ってるのに………」
「ああ、それについてはさっき男子に聞いてきたよ。その人曰く、『加藤はイケメンだから仕方が無いとしても零治だけは認められない!!』って」
「何その贔屓!?」
「要するに別にイケメンでもない零治が羨ましい思いをするのは許せないって思ってるって事だよ」
「不幸だ………」
俺は星達から貰えればそれでいいのに………
「はぁ………」
早く帰ってキャロとついでに優理を抱きしめたい………
ミッドチルダ本局武装隊隊舎………
「神崎、彼女だぞ!!」
昼休みに入り、同じ隊員に大声でそんな事を言われた。
だけどそんな大声で言ったら………
「ケビン、そんな大声で言う必要無いでしょ?フェアリーで締め上げるわよ?」
「す、すいません………ちょっとした遊び心で………」
20代後半の男性局員を脅す加菜。
この部隊では既に加奈の恐ろしさは知れ渡っており、男性陣には良く発言には気を付けろと言っているのだが、お調子者のケビンが忘れていたようだった。
「加奈、いらっしゃい!!」
「お邪魔します」
対して女性の隊員とはかなり仲が良い。
「隊長、ご無沙汰です」
「ああ加奈ちゃん、元気そうだね。」
この部隊で唯一加奈が敬語を使う人物であり、俺と加奈もかなりお世話になっている人物である。
今年でアラフォーの仲間入りした隊長だが、その年齢とは思えない体つきと、ダンディーな風柄はまさにお手本の親父って感じだと思う。
「話に聞いているよ。成績は実技も筆記もトップだって?推薦した俺としても鼻が高いよ………」
「いえ………」
恥ずかしそうに呟く加奈。
………何か面白くないな。
「それで………日頃のお礼に………」
そう言って加奈は持っていたミニバックから可愛らしい包みを取り出した。
まさか………!!
「これは………?」
「チョコです。地球では今日は“バレンタインデー”と言うイベントなんですよ」
「バレンタインデー?」
「女性から男性にプレゼントするイベントですよ」
「そうか………ならありがたくいただくよ」
加奈ぁ………
俺を置いて隊長になんて………
「加奈ちゃん、大悟の奴、羨ましそうに見てるけど………」
「気にしなくて良いですよ、後でちゃんとあげますから」
「愛されてるねアイツ………」
「まだまだ情けないですけどね」
「加奈ちゃん本当に厳しいね………」
何を楽しそうに………
「じゃ、私はこれで。これから訓練校にも用があるから」
「えっ、加奈!?」
加奈は隊長と少し話したらさっさと出て行ってしまった。
「えっと………何かスマンな大悟」
思いっきり睨んじゃったけど俺は悪くないよね………?
「よし、準備は完璧!!」
昨日から準備を始めてやっと自分が納得出来る物が出来た。
「これなら桐谷さんも喜んでくれる………」
桐谷さんはカッコイイからチョコも沢山もらってるだろうし、せめて美味しく作ろうと思って頑張ってみたけど………
「でもちゃんと渡せるかな………」
いざ渡すとなると………
「ううん、これ以上負けられないよね………」
既に桐谷さんの家にいるノーヴェさん、それに同学年のフェリアさん。
あの2人は桐谷さんの話に良く出てくる。
桐谷さんがどう思っているかは分からないけど恐らく2人も桐谷さんの事が好きだと思う。
それにせっかくお父さんに無理を言って休みを貰ったんだ。
勇気を出してギンガ………
「よし、行ってきます」
私は覚悟を決め、家を出て行った………
「アリサちゃん、今年はどうするの?」
「一応作ってきたわ。だけど………」
昼休み、一緒にお昼を食べていたすずかに質問された。
はっきり言ってまだ一昨年のバレンタインデーを引きずっている。
その年のバレンタインデー、私は初めての失恋をした。正確には勝手に諦めたんだけど………
未練は無いはずなんだけど、毎年チョコを準備してしまってる自分がいる。
「今年は渡してみたら?確かに零治君には3人がいるけど、バレンタインデーにチョコを貰って嬉しくない男の子はいないと思うよ?」
「でも………」
「はやてちゃんだって毎年家族分渡してるんだし、変じゃないと思うよ?」
「でも高校で別のクラスになってから中々話す機会もなかったし………]
「それは私も同じだよ」
すずかにそこまで言われて私も考える。
確かに今まではその事を気にしすぎて渡せなかったけど、すずかと同じように“友達”として渡せれば今まだ続くモヤモヤも取れるのかもしれない………
(フェイトは私より一歩前に進んだ………いい加減私も進まないと………)
そのきっかけにはいいかもしれない………
放課後………
「じゃあ零治君帰っちゃう前に渡しちゃおう」
「う、うん………」
緊張しながら零治の教室に向かう。
私達のクラスはHRが短い、なので確実に先に着くことは出来る。
後は渡すだけ………
(これで私も一歩進めるんだ………)
なのに何故か心の中に引っかかるものがある。
「………でも私もいい加減に………ね」
そんな少し不安そうなアリサの顔を見て、少し心配そうな顔をするすずかだった………
さて、学校も終わり後は帰るだけ。
SBS団は中学で解散し、静かな学校生活が望めると思っていたのに、こういうイベントがあるとこぞって襲ってくる。
昨日まで普通に喋っていた奴含めてである。
それなのに桐谷に対しては全く被害が無いのだ。
あいつは学年チョコを問わず貰っているのにも関わらずだ。
明人曰く、『加藤はイケメンだから仕方がない』そんな意見が共通化しているらしい。
何だよその差別………
なので高校になっても中学の時みたいに騒がしい1日だった。
しかし実際に貰ったのは植川、会長、そして同学年の女の子から貰った合計4つのみ。
桐谷は2桁貰ったのにね………
まあとにかくそんな1日ももう終わりです。
さっさと愛妹達と甘い一時を凄そう。
「それじゃあさっさと帰るな~」
「あれ?星ちゃん達は待たないの?」
「3人で寄っていく所があるから先帰っててって」
「………まあ俺達のクラスは一番遅いから居なければ帰っているんだろう」
桐谷が呆れながら教室を出ようとした先生を見た。
俺達のクラスのHRは長い。と言うより先生が余計な話が長いのが原因なのである。
まあそれはともかく………
「桐谷、お前待ち合わせしてんじゃなかったっけ?」
「ああ。ギリギリになりそうだから俺もさっさと帰るよ」
確かにコートにマフラーに手袋と既に完全防寒状態。
桐谷はこの後ギンガと会う約束だとか。
………本当にモテる奴である。
「じゃ、お先に………」
そう言って桐谷はさっさと教室を出て行った。
「あれ?桐谷君もう帰るの?」
「人と会う約束してるんだよ」
「えっ、またチョコ!?」
「モテるよね桐谷って」
「いいなぁ………暫くチョコ食べ放題だね!」
「「………」」
やっぱり植川は少しずれてるな………
「………で零治、帰らなくていいのか?」
「あっ、じゃあ俺も帰るな………」
そう言って廊下に出るとそこにはすずかとアリサが居た。
「あれ?2人共どうしたんだ?」
「やっと来たね零治君」
「俺待ちか。悪いな、うちの担任話が長いんだ………」
「ううん、そんなに待ってないから別に良いよ」
そんな優しいすずかだが、アリサは俯いたまま反応が無い。
「アリサ………?」
「ふぁい!?」
アリサには珍しい変な声を上げ、飛び上がるように答えた。
「おい、大丈夫かアリサ?」
「だ、大丈夫よ!!」
声が裏返っている様な気がするがまあいいか。
「それで用って?」
「今日はバレンタインデーでしょ?桐谷君には昼休み中にたまたま会って渡せたんだけど零治君には渡せなかったから………」
「ああ、なるほど………」
「何疲れた顔してんのよ!!………もしかして余計だった………?」
「いや、そうじゃない………はぁ、こりゃ早く家に帰れないな………」
「えっ?それってどういう………」
「悪いが2人にも付き合ってもらうぞ………!!」
そう言って2人の手を取る。
「「えっ!?」」
いきなりそんな事をされて驚く2人だったが、振り払う前に教室から大声が響きわたった。
「おい!!零治のクズ野郎、C組の月村さんとバニングスさんからチョコを!!!」
「直ぐに確保しろ!!そして出来れば奪え!!!」
「他のクラスの奴にも応援を!!」
「行くぞ!!!!」
俺は急いですずかとアリサを連れ、その場を後にした………
「………」
さっき、桐谷さんから連絡があった。HRで少し遅くなると。
「はぁ………」
やばい、メールを見て緊張が更に増してきた。
少しリラックスするために昼直ぐに地球に来て、ショッピングモールで買い物をしてたけど、落ち着いて見ることが出来ず、結局喫茶店で今になるまで時間を潰していた。
「えっと、お化粧は………」
さっきも一旦確認したけど、こういうのはやっぱり得意じゃないな………
あんまり濃すぎても駄目だし、これ以上いじるのは止めた方が良いよね………?
「へえ、やっぱりギンガも化粧とかするんだな」
「はい、私も女性ですし、最低限はしてます」
………ってあれ?私誰に………
「よっ、ギンガ」
「………」
まさかの桐谷さん。
思わず私は………
「いやあああああああああああああ!!!!」
その場で絶叫を上げてしまった………
「すみませんすみません!!!」
何度も何度も喫茶店の机に頭をぶつける位下げて謝る。
「いや、まあ流石に驚いたけど、もう気にしてないからそんなに一生懸命に謝らなくて良いよ」
本当に失礼な事をしてしまった。
あの後、お客様から変な目で見られ店員からも声をかけられたりとかなり恥ずかしい思いをした。
私だけならまだしも桐谷さんを巻き込んでしまったことが申し訳無い………
「本当に私ったら………」
「ギンガ、もういいって。俺もいたずらしようと思って着く直前にメールを送ったののも悪いんだから。それより何か急かしてるようで悪いんだけど………」
「あっ、はい!!これ、スバルと私の分です!!」
私は桐谷さんにそう言われて慌てて自分の作ったチョコを渡した。
「ありがとうギンガ、嬉しいよ」
そう言って桐谷さんは嬉しそうにバックにしまってくれた。
………嬉しい。
「それでギンガ、これからどうする?」
「ふぇ?」
「ふぇ?じゃ、なくてせっかく地球に来たんだし何処かに連れていってあげようかなって」
「本当ですか?そうですね………確かにせっかく地球に来たんですし、はやてさんが言ってたアニメの映画を………ってあれ?」
「ああ映画ね。だったら直ぐ近くのショッピングセンターにあるし、行くか」
「ええ………ってあれ?」
これってデートじゃ………
「はぁはぁ………」
「はぁ………はぁ………」
「やっと撒いたか………」
学校の中を走りに走り、やっと逃げ着いた生徒会室。
ぶっちゃけ鍵が掛かってたらまた走り回らなきゃいけない所だったが、本日は運良く会長がまだ居た。
「相変わらず騒がしいわね零治君」
「俺は平凡に過ごしたいんですよ………」
「でもね………両手に花状態なら男子達だって発狂するわ………」
会長にそう言われ気がついたが、未だに2人の手を握ったままだった。
「わ、悪い………!!」
「う、うん………」
「え、ええ………」
慌てて手を離したが、ずっと握っていた事とこれがバレたらどうなるかを思って結構頭の中は混乱していた。
「あら何か良い雰囲気ね。この場面を写真にとって夜美ちゃんに………」
「鬼ですか!?」
会長はやっぱり危険な人だ………
さて、ジャンピングローリング土下座を決め、夜美に連絡されるのは何とか阻止した俺。
安心して、ゆったりとお茶を飲みながら大富豪をしている内に時刻は6時少し前。部活をやっている生徒以外はいい加減帰ったみたいで、随分静かになった。
「さて、俺達もいい加減帰るか」
「ちょっと待ちなさい!!私が大貧民のまま終わりなんて認めないわ!!」
連戦連勝の先輩を何とか陥れ、大貧民にしてちょっと。結構屈辱的だったのか、かなり真剣になりながら言っていた。
「でも私もこの後用事が………」
「実は私も………」
「2人のお嬢様も忙しいのでこれで終わりです」
「ううっ………」
そう言われ渋々カードを片付け始める会長。
大貧民は全てが下なのだ。
しかしこんな会長を見るのは始めてかも………
「それじゃあ………ってあれ?私達って何で生徒会室に居るんだっけ?」
ふとアリサに言われ、考える。
「………ああ!!そうだ、すずかとアリサに用があるって言われて逃げ回ってたんだ!!」
俺がそう言うと、『そうか!!』といった表情をする。
「零治君、遅くなったけどこれ!」
そう言って渡された可愛らしい袋。
「今年はクッキーにしてみたの。味はどうかちょっと自信が無いけど、良ければみんなで食べてね」
「ありがとうすずか」
袋を受け取ると何気に重い。
結構作ってもらったみたいだ。
「零治………私も………」
今度はアリサが俺に小さな袋を渡す。
「ありがとうアリサ」
アリサにチョコを貰ったのは始めての筈。
何か嬉しいな………
「アリサはもしかして料理は全く駄目なのかって思ってたよ。いやぁ、楽しみだ!!」
「そ、そう………」
「ちゃんとお礼は返すから楽しみにしてろよ」
「う、うん………」
「………無事に渡し終わったみたいね、それじゃあ部屋を閉めるからみんな出て」
会長にそう言われ、俺達は部屋から出たのだった………
「どうだったアリサちゃん?」
帰り道。零治と水無月先輩と別れた私達は車で帰っていた。
「………何か渡してみたら呆気なかった。何か色々悩んでいたのがバカみたい」
「………零治君の態度が気に入らなかった?」
「ううん、そんな事は………無くないや。本当はね、もしかしたら見込みがあるかもって少し期待してた自分がいたんだ。あの時、チョコを渡さず、フェイトと諦めてからも私はやっぱり切り替えられなかったんだと思う。チョコを渡したら完全に零治の気持ちが分かってしまう………それが怖かった」
「アリサちゃん………」
「でもやっぱり結果は予想通りだった。やっぱり零治には既に好きな人が居て、私はただの友達にしか思えてない。それが渡してみて分かったわ」
「………アリサちゃん、私余計な事したかな?」
「ううん、むしろありがとうすずか。すずかが後押ししてくれたから私もしっかり踏み出せた。………渡した時は流れみたいな感じだったけどそれでも良かったわ。これで新たな一歩を踏み出せる」
「アリサちゃん………」
見てなさい零治、私を好きにならなかった事を後悔させてやるんだから………
「面白かった………」
「俺も知らなかったが面白かったな。これって続編じゃ無いよな?」
「いえ、一応続編ではありますよ。説明すると長くなるんですけど………」
「へえ。………俺も始めから読んでみようかな………」
あの後、私と桐谷さんは映画を一緒に見に行った。
デートみたいでかなり緊張した私だったけど、映画が始まると、見たかった事もあり、すっかり見入ってしまった。
でも桐谷さんも楽しんでもらえて本当に良かったな………
「………っと電話か」
着信音が鳴り、ポケットから携帯を取り出す桐谷さん。
もしかしたら………
「………ああ、ちょうど終わったしこれから帰るよ。あれ?フェリアもいるのか?先に食べてても構わないが………分かった」
そう言って電話を切る桐谷さん。
これはもしかして………
「ギンガ、これから俺の家に来るか?ノーヴェが夕飯作ってくれてて、フェリアもいるんだ、ついでだし食べていくか?」
やっぱりノーヴェさんか………しかもフェリアさんも居る。
流石に行くのはちょっとな………恋敵だし。
「すみません、せっかくの御好意ですけど、明日は早いので今日は………」
「そうか………まあ仕方がないな」
そう言って本当に残念な顔をしてくれる桐谷さん。
本当に優しい人………
今日は独占出来たし、個人的には充分満足。
だけどもっと欲を出すならもっと2人っきりでいたかったな………
「それじゃあ、私はこれで………」
あっという間に転移場所に着いた私達。
ゆっくり歩いたつもりだったけど、楽しい時間はやっぱり直ぐに過ぎてしまう。
「ああ、スバルにもよろしくな」
そう言って手を振ってくれる桐谷さん。
そんな桐谷さんを見て、私は勇気を出して聞いてみる事にした。
「あの………桐谷………さん」
「ん?」
「その………えっと………桐谷さんは………ノーヴェさんやフェリアさんの事が………」
「事が?」
「す………す………すk!!」
その続きを言う前に視界が変わり、いつの間にかミッドチルダにへと着いていた。
「………私の………私の………バカー!!!!!!」
ギンガは周りに人が居るにも関わらず大声をあげてしまったのだった………
「………行っちゃったな。何か言おうとしてたけど、重要な事なら連絡あるよな?」
桐谷はそんな事を思いながら帰路につくのだった………
「ただいま~」
「「「………」」」
6時半過ぎ、クタクタになって帰ってきたら玄関に仁王立ちする3人が。
「………何か?」
「………私達より帰りが遅いのは何故ですかね?」
嫌な笑みを浮かべながら言う星。どう考えても感づいているんだろうな………
「誰と会っていたの?」
いつも明るいライでさえ低い声で話す。それほど頭にきているのだろうか………?
「さあ、全て話してもらうぞ!!」
夜美にキツく睨まれ、それは玄関で縮こまりながら正座して事情を話始めた………
「へえ~」
「いい加減高校生になってそんな事はやらなくなると思っていたが、相変わらずガキが多い」
痛い目に合わされるだろうと思っていた俺にとってライや夜美の反応は予想外だった。
「お疲れでしたねレイ」
そして最後に労いの言葉をかけてくれる星。
………一体どうしたんだ?
「えっ?どうしたも何もそういう事情なら仕方が無いじゃん」
「それは確かに遅くなるしな」
「済みませんでした、てっきり誰かと一緒に居て遅くなったと思って………」
コイツらも大人になったものだ………
何か涙が出てきちゃう………
「ああ、本当に大変だったよ………アリサとすずかと一緒に生徒会室に逃げて、暫くトランプで遊んでいてやっと静かになったから帰ってきたんだけど………」
そう言うと笑顔のまま固まる3人。
………あれ?
「ううっ………キャロ、優理………」
「よしよしお兄ちゃん」
「レイは良い子だよ」
結局その後3人からオハナシを受ける羽目になり、その後、キャロと優理に慰めてもらってます。
キャロに膝枕してもらい、優理はキャロの膝に垂れてる俺の頭をキャロと一緒になでなでしてる。
「俺、今日この時間の為に一生懸命頑張ったんだよ………」
「お兄ちゃんは良い子ですよ~」
「可哀想だから今日は一緒に寝てあげるね」
「ああ、それはいいや優理」
「………くっ、簡単には堕ちない!!」
悔しそうな顔しても駄目だ。
これくらいなら3人のお姉さん方は何も言わないが、一緒に寝るとギャーギャーうるさくなる。
俺は別に構わないのだが………
「そう言えばフェリアは?」
「フェリアお姉ちゃんは桐谷さんの家です」
「へえ~最近本当に多いなぁ………そんなにウェンディアホな事してんのか?」
「お兄ちゃん本気で言ってるの………?」
「何をだ?」
「本当に鈍いんだから………」
そう言って膨れるキャロ。
いやぁ、膨れてるキャロも可愛いなぁ………
「いや、キャロも教えてあげなかったら気がつかなかったよね?」
零治とキャロのやり取りを見ながら優理が呟いたのだった………
「やっぱりこの時期は良いなぁ………お菓子食い放題だ………」
「師匠をたぶらかそうとするメス豚のお菓子は私が処理しないと………」
「ちょ!?アギト、セッテ!!何がっついてんだ!!!」
貰ったチョコやクッキーが全てアイツらの胃袋に………
「「ぐふっ!?」」
ぐふっ………?
「「は、鼻が………み、水………」」
「アギト!?セッテ!?」
「こ、これ水です!!」
ライが驚いている間に星が慌てて水を飲んだ。
2人はその水を一瞬で飲み干し、大きく息を吐いた。
「はぁ………助かった………」
「どうしたの2人共?」
「このチョコを食べたらいきなり鼻がツーンと………」
そう言われ、夜美がそのチョコをつまんで匂いを嗅いでみた。
「これは………わさびか?こんな悪戯をわざわざしたのは………」
「会長だろうな………」
キャロの膝から起き上がってチョコを見てみると確かにわさびの香りがぷんぷんする。
「会長………」
去年の生姜入りチョコから更にパワーアップしてる。
まあ確かに何か入れてる様な事を言ってたから何かあるとは思ってが本当に入れていたとは………
「まあ無茶食いした罰だな」
「「ううっ………」」
アギトとセッテは涙を溜めながら呻いたのだった………
「………ねえセイン?」
「どうしたのウェンディ?」
「何でこの家でレイ兄みたいな状況になってるんスか?」
「まああの2人のせいだよね」
そう言ってセインとノーヴェは未だにテーブルに座り、睨むように桐谷を見る2人を見た。
「「………」」
ノーヴェとフェリアである。
「おっ、中々おいしい。しかしスバルは何かを作ろうとしたのか………?かなり歪だが………」
そう楽しそうに言う桐谷。
(ねえ、フェリア姉………?)
(何だ?)
(不味いね………)
(不味いな………)
そんな桐谷の様子を見ながら2人は話していたのだった………
新暦73年5月………
「ねえねえどう!?」
「ああっ?………まあ良いんじゃねえか?」
「ちゃんと見てよ!!」
「ああ、分かった分かった!!」
ミッドチルダのショッピングモール。その子供服売り場で白髪の男と金髪の少女が大きな声で言い争いをしていた。
「………」
「………なのは?」
「ふぇ!?何フェイトちゃん?」
「なのはこそどうしたの?ボーッとして………」
「あっ、ごめん。ちょっとあの親子を見てて………」
まだギャーギャー騒ぐ2人を見て、流石のフェイトも苦笑いする。
「でも何か気になるの………?」
「………私ってああやってお父さんに我侭言った事無かったなって………」
「そう………」
「あっ、ごめんねフェイトちゃん!!フェイトちゃんも………」
「構わないよ………あっ、拳骨落とした」
「睨んでるね………」
「なのは、早く行こう。時間無くなっちゃうよ」
「そうだね………」
フェイトに言われ、2人はその場を後にした………
そしてこれがなのは、フェイトとヴィヴィオの初の出会いでもあった………
「もういい帰るぞ!!」
「い、やーーーーー!!」
………片方は全く気がついて無かったが。
後書き
次は恐らく最後に出た2人が中心。
やっとこの2人メインで出来る………
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