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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十九話 水着選びその十五

「この水着は」
「うん、スタイルのよさがね」
 僕はここでも正直に答えた。
「出てるよ」
「そうか、しかしだ」
「しかし?」
「スタイルのよさというのはだ」
 その言葉にだ、留美さんは抗議してきた。
「余計だ」
「じゃあ」
「似合っているだけでいい」
 こう言って来た、僕に。
「それだけでな」
「そうなんだ」
「冒険した、いや」
 留美さんは自分の言葉を訂正した。
「勇気を出してだ」
「その水着にしたんだ」
「そうだ、必死にだ」
 それこそという言葉だった。
「勇気を振り絞ってこれにしたのだ」
「似合ってるけれど」
「デザインはいい、しかしだ」
「ああ、露出が多いから」
「ビキニは無理だ」
 留美さんは自分で言った。
「考えていたが勇気は出なかった」
「それでワンピースにしようと思ってなんだ」
「この水着にしたがだ」
 露出が多いからとだ、留美さんは言葉の中にこの言葉を込めて僕に言った。
「いざ私が着るとなるとだ」
「他の人が着るのと自分が着るのじゃね」
「違うな」
「だからなんだ」
「迷った」 
 正直な言葉だった、留美さんの。
「それは一瞬だったが」
「長く考えたんだ」
「相当にな」
 その一瞬の間にというのだ。
「考え抜いてだ」
「決めたことなんだね」
「うむ」
 その通りだとだ、留美さんは僕に答えた。
「それでだな」
「似合ってるよ」
「それは何よりだ、しかし」
「しかしなんだ」
「それ以外のことは言わないでくれ」 
 くれぐれといった口調での言葉だった。
「私が恥ずかしいからな」
「それでなんだ」
「うむ、ではだ」
「その水着にするんだ」
「そうしよう」
 僕にあらためて言って来た。
「決めた」
「それじゃあね」
「そうしよう、では服を着替える」
 元の服にというのだ。
「見ない様にな」
「いや、人の着替えは見ないから」
 僕もこのことは保障した。
「覗くことはしないよ」
「そうか、紳士だな」
「紳士というかね」
 むしろとだ、僕は留美さんに今度は少し苦笑いになって答えた。
「常識じゃないかな」
「そうか、結構そうしたことをする男はいるが」
「僕はそうしたことはしないよ」
「ならいいがな、ではだ」
「うん、着替え終えたらね」
「また会おう」
 こう言ってだ、留美さんは自分からカーテンを閉めた。そして留美さんがカーテンを閉めるとだ。また左隣から声がした。
「あの」
「うん、じゃあね」 
 千歳さんの声に応えた。 
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