八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十九話 水着選びその十四
「あの頃の水着は膝まであってね」
「水着が膝まであったの」
「袖もあってね」
「袖もあったの」
「それで体型が出てもね」
「競泳水着程じゃないのね」
「もっと出ていないかったよ」
そうだったとだ、僕は話した。
「あの頃の水着はね」
「そうだったの、けれど」
「古い水着だからね」
もっと言えば古臭いだろうか、もうそれこそ今着ている人がいたらかえってそっちの方が目立つ位の代物だ。
「着てる人もいないよ」
「そうなのね」
「具体的に言うと」
もう九十年位前のものだからだ。
「日本で言うと袴に靴でね」
「日本の昔の格好ね」
「それで振袖位に古いよ」
「あの服はいいけれど」
「やっぱり古いよね」
「ええ、今の服じゃないわ」
「だからね」
自分で出した例えからさらに話した。
「その水着を着るのもね」
「古いから」
「今風の水着だとね」
「それでいきたいのなら」
「その競泳水着が一番露出が少ないよ」
普通のワンピースの水着もあれはあれで胸元が開いていたりする、かなり露出のあるものが多くなっている。
「それか半ズボンタイプか」
「半ズボンタイプは嫌よ」
「そっちはチェチーリアさん苦手だね」
「そう、それはね」
チェチーリアさんは普段着でも半ズボンをはかない、僕もこのことから言った。
「ないわ」
「じゃあね」
「競泳水着ね」
「それが一番だよ」
「わかったわ」
ここまで話してだ、チェチーリアさんも納得した。
そのうえでだ、僕にあらためて言った。
「じゃあこの水着でいいわ」
「競泳水着でだね」
「ええ、これでね」
「ええ、それじゃあ」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
その話をしてだった、僕はチェチーリアさんとの話がこれで終わったと思った。そう思ったすぐその時にだった。
チェチーリアさんの左隣のカーテンからだ、留美さんの声がした。
「いいか」
「あっ、それじゃあ」
「私はずっと前からだ」
「着替えてたんだ」
「そうだ、待っていた」
こう僕に言って来た、カーテンの向こう側から。
「では見てもらう」
「じゃあ行くよ」
「恥ずかしいがだ」
声に実際にその感情が篭っていた。
「見てもらうぞ」
「今からね」
「頼む」
恥ずかしい感じで言った留美さんだった、そしてその留美さんに応えてだ。僕は留美さんがいるコーナーの前に来た。するとその瞬間にカーテンが開いて。
水着姿の留美さんが出て来た、見れば。
ダークブラウンのシンプルだけれど胸元が開いて腰のところのカットもきわどいワンピースだった。その水着姿でだ。
僕に対して顔を紅くさせて言って来た。
「どうだ」
「どうだ、なんだ」
「そうだ、似合うか」
その紅くなった顔で僕に問うて来た。
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