八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十九話 水着選びその十二
「これにしたの」
こう僕に言って来た。
「どうかしら」
「何かね」
「何か?」
「凄く着慣れてる感じがするね」
実際に思ったことだ、このことも。
「水着に」
「ああ、それはね」
「それは?」
「レスリングのスーツを着るから」
「ああ、プロレス部で」
「そう、それでだと思うわ」
「女子プロレスの衣装は」
「水着でしょ」
「もうそのものだね」
「だからよ」
モンセラさんは自分で話した。
「私は着慣れてるのよ、水着に」
「そうなんだね」
「ええ、実際こうして義和に見せても」
「恥ずかしい?」
「特に」
そうだという返事だった。
「ないわ」
「そうだよね、やっぱり」
「ただルチャ=リブレはね」
モンセラさんのしているプロレスはこちらだ、プロレスの中でも跳んだり跳ねたりするかなり激しい種類のものだ。
「ここに覆面も付けるから」
「あっ、覆面はよく被るよね」
「そうよ、私もよく被るわ」
「けれど水着の時は」
「被らないわ」
そこは違うというのだ。
「だからそこは違うから」
「そうだよね、やっぱり」
「ちなみに覆面はお手製よ」
いつも自分で作っているというのだ。
「そうしてるから」
「そうして作ってたんだ」
「そうなの」
「あの」
ここでだ、今度はイタワッチさんの声がした。モンセラさんの左隣のコーナーから。
「いい?」
「あっ、じゃあ」
「ええ、私のもね」
「チェックをだね」
「見てくれる?」
「うん、じゃあ今からそっちに行くよ」
すぐ左隣にとだ、僕も答えた。
「これからね」
「じゃあね」
モンセラさんは微笑んで僕に一時のお別れの言葉を言った。
「私はこの水着にするから」
「そうするんだね」
「ええ、黒ビキニでね」
こう話してだ、そしてだった。
僕は今度はイタワッチさんを見た、イタワッチさんも自分からカーテンを開けた。そうして出て来たその水着姿は。
紫のワンピースだった、ただ。
胸のところが大きく開いて脇のところも露出している、前の方の生地はお綣まで見えていて何かビキニとあまり変わらない。
その水着姿にだ、僕は驚いて言った。
「ええと、その水着は」
「どう?」
「どう、じゃなくて」
本当にとだ、僕は返した。
「凄い水着だね」
「うふふ、そうでしょ」
「そうでしょって」
「だからこの水着にしたのよ」
笑みを浮かべてだ、僕に言ってきた。
「あえてね」
「狙ってたんだ」
「前からこうした水着欲しくてね」
「何かね」
そのかなり派手な、下手なビキニよりも露出の多い水着を見てだ、僕はこう言った。
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