八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十九話 水着選びその六
「それはな」
「お金の問題だから仕方ないにしてもね」
「まだこの百貨店はましだな」
「八条百貨店はね」
「百貨店という業界全体が不況だが」
「どの百貨店も潰れてないし」
八条百貨店は各都道府県にある、百貨店業界でもトップと言っていい。それで相当な店舗数を誇っているけれどだ。
「リストラもしていないし」
「経営が上手にいっているからか」
「百貨店はご本家の弟さんのお一人が責任者だけれど」
「その人の経営がいいのだな」
「うん、ご本家からも信頼されてる人だよ」
「そうした方だからか」
「経営も上手にいっているんだ」
他の系列の百貨店とは違ってだ。
「そもそも八条グループはリストラ嫌いだしね」
「松下幸之助老の様にか」
「特に今のご本家はあの方を凄く尊敬しておられるから」
経営者はかくあるべきだとだ、よく言っておられる。
「だから特になんだ」
「人を切るのは嫌いか」
「人を切ればそれで終わりてね」
「そうした考えなのだな」
「そうなんだ、一族全体でね」
親父もよく言っている、患者を駄目だと言って諦めたらそれで終わりだとだ。例え助かる可能性がゼロコンマ幾つかでも残っていれば必死に助けるべきだと。
「そうしたことはね」
「しないとだな」
「考えているし僕もね」
「そういうことだな」
「その考えって甘いとも」
チェチーリアさんが言って来た。
「言われるけれど」
「そうした考えもあるね、けれどね」
「それでも」
「そう、親父に言われたんだ」
ここで親父の名前を出した。
「甘くていいって」
「助けられる命なら」
「可能性があればね」
本当にそれが僅かでもあればだ。
「助けるべきだってね」
「親父さんが言ったのね」
「そうなんだ」
「いい考えね」
「そう言ってくれるんだ」
「助からないって突き放すよりも」
「可能性があれば努力する方がだね」
僕も言った。
「いいっていうんだね」
「ええ、何か義和のお父さんは」
チェチーリアさんも親父のことを話した。
「色々言われてるけれど」
「無茶苦茶な遊び人ってだね」
「うん、私も聞いてるけれど」
それでもというのだ。
「皆悪い人じゃないっていうし」
「チェチーリアさんもだね」
「私もそう思うわ」
僕に微笑みを向けて言った言葉だ。
「その甘さがかえっていいわ」
「甘くてもいい」
「それで人が助かるのなら」
「それでだね」
「ええ、義和のお父さんはいい人ね」
「そうだね、甘くてもいいなんてね」
人間がだ。
「普通は言わないしね」
「その甘さが人を助けるのなら、ね」
イタワッチさんも笑って言って来た。
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