八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十六話 花火が終わってその十四
「そこをやられますと」
「相手は動けない、そして鎖骨もだ」
「骨だから」
「折れればもう完全に動けない」
脛と同じくというのだ。
「だからそこも狙う」
「そして突きはです」
今度は円香さんが言う、円香さんの木刀は今も一本だ。
「攻撃を迅速に繰り出せてしかも相手に与えるダメージが大きいです」
「それでなんだ」
「暴漢相手の時は突きです」
「それを使うんだ」
「突きを入れる場所は何処でもいいです」
剣道では喉が突きを入れる場所だけれどこうした場合は何処でもいいというのだ。
「手でも足でも」
「突きを入れたらそれで」
「その一撃で相手はダメージを受けるのね」
「いいんだ」
「はい、振るよりも」
こう言いながら木刀を両手に中段に持って構えていた。
「いいです」
「そうなんだ」
「あくまで暴漢が来ればですが」
その時はとだ、また言った円香さんだった。
「来ないことを祈ります」
「それじゃあ」
「はい、帰りましょう」
「暴漢が出ないなら出ないでいい」
井上さんはこうも言った。
「それに越したことはない」
「さっきの音が気のせいならですね」
「いい、では帰ろう」
「はい、わかりました」
「用心しながらな」
「じゃあネ」
「帰るあるよ」
ジューンさんと水蓮さんは今も足元をふらつかせつつ歩いている、そのうえでの言葉だ。
「それでお家に帰っテ」
「お風呂入って寝るある」
「あんた達本当に大丈夫?」
「浴衣に着られている感じになっていますが」
詩織さんと小夜子さんは明らかに酔っている二人に心配の声をかけた。
「肩貸すけれど」
「こけそうでしたら」
「だから大丈夫ヨ」
「こけない位にはまともある」
「だから気にしないデ」
「私達は歩くある」
自分自身でというのだ、そして実際にだった。
二人は八条荘の方に向かって歩いた、そして。
井上さんと円香さんは木刀を持ったまま二人と同じ方を歩いて詩織さんと小夜子さんは外国人組二人を気遣いながら進んでいた、僕もだった。
周りを警戒しながらだ、皆と一緒に帰った。そして八条荘が見えてきたところでだ。
円香さんは周囲を見ながら少しほっとした感じでこう言った。
「お家の中に入るまでですけれど」
「それでもだね」
「はい、大丈夫みたいですわね」
「暴漢いなかったみたいだね」
「そうみたいですけれど。けれどあの物音と気配は」
「あれは風の音じゃないかな」
僕はこう円香さんに答えた。
「只のね」
「風ですの」
「そうじゃないかな」
こう話した、皆にも。
「何かっていうと」
「そうならいいですが」
「まあよくあることだよ」
「何かと思えばですね」
「只の風の音とかね」
「幽霊の正体見たりか」
井上さんはこう言っても警戒を解いてはいない。
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