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パパは不審者

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3部分:第三章


第三章

「その身体でロックって。何考えてるのよ」
「そうか、駄目か」
「駄目よ。他の外見にしてよ」
「わかった。今度運動会だったな」
「今度は。捕まらないようにしてよ」
「ああ、運動会なら大丈夫だ」
 こうだ。安心しきった顔で言う益男だった。しかしだ。
 桃子はだ。不安に満ちた顔であった。そして。
 父にだ。こう言い返した。
「絶対に駄目と思うけれど」
「駄目か?」
「そう、お母さんに来てもらいたいけれど」
 言うのはこのことだった。
「ちょっとね」
「おい、お父さんは駄目なのか」
「絶対に不審者と思われるから」
 それでだというのだった。
「来ないで欲しいけれど」
「今度は大丈夫だ」
 まだ言う益男だった。彼も引かない。
「何があってもな」
「じゃあ言うけれど」
 桃子は目を真剣なものにさせてだ。そのうえで述べた。
「今度不審者と間違えられたらね」
「何だ?」
「絶対に許さないから」
 こう言うのだった。
「もうね。徹底的にやるから」
「徹底的って」
「そう、考えがあるから」
 こう告げるのだった。そしてだ。
 かくして益男は運動会に出ることになった。桃子は運動会では。
 白い体操服に黒い半ズボンの姿になっていた。今時の女の子の体操着だ。父兄もそこにいる。そしてだ。当然ながらそこには。
 益男もいた。彼の姿はというと。
 黒いジャージ姿だ。とりあえずそれは普通の服だ。しかしだ。
 その服装でもであった。
「あの男何だ?」
「痴漢か?」
「盗撮マニアか?」
 まただ。周囲が不審な目で見て囁く。
「変質者だな」
「それは間違いないな」
「絶対にそうだろ」
 ジャージに覆面にサングラスだ。その格好の益男を見て囁くのだった。
「カメラも持ってるしな」
「絶対にそうだろ」
「じゃあな。通報するか」
「そうするか」
「そうだな」
 こうしてだった。またしてもだった。
 益男は通報されそうしてだ。警官達に囲まれるのだった。
 桃子のクラスメイトがだ。その有様を見てだった。彼女に言ってきた。
「あのさ、桃子ちゃん」
「どうしたの?」
「何か怪しい人が学校に来てるのよ」
「まさか」
 それを聞いてだ。すぐに察した彼女だった。
「それは」
「今お巡さん達が来てるけれど」
「わかったわ。じゃあね」
「あれ、見に行かないの?」
「わかるから」
 こう言ってだ。そっぽを向くのだった。
「だからいいから」
「そうなの」
「それでね」
 そっぽを向いたままでだ。クラスメイトに話す。
「父兄参加の二人三脚だけれど」
「それ桃子ちゃんも出るのよね」
「出られなくなったから」
 こう言うのだった。
 
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