八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十四話 綿菓子その十四
「また急に」
「ええ、実は小夜子さんと一緒に来ていてね」
「その小夜子さんは」
「今お茶を買いに行ったわ」
「そうなんだ」
「もうすぐここに来るわ」
小夜子さんもというのだ。
「だから安心してね」
「わかったよ、じゃあこれでね」
「七人ね」
「そうよね」
「そういえば八条荘の人は皆お祭りに来てたんだ」
部屋に入っている人はだ、二十四人の女の人全員がだ。
「だからここに来ても」
「おかしくないでしょ」
「確かにね」
僕もこう答えた。
「考えてみれば」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「ここで会ったのは奇遇ね」
「花火を見ているんだ」
僕は詩織さんにこう答えた。、
「ここでね」
「そうなの」
「この五人でね」
「私達も花火を見に来たけれど」
「ここが一番よく見えるんだ」
花火がだ、今僕達が見ているまさにそれがだ。
「だからここにいるんだ」
「そうよね、私達もお店のおじさんに教えてもらって」
「それでなんだ」
「ここに来たの」
「成程ね」
「ただ、小夜子さんはね」
「さっき言ったね」
僕は詩織さんにすぐに問い返した。
「お茶を買いに行ったって」
「ええ、お茶といってもね」
「お酒かな」
「もう私達かなり飲んだから」
見れば詩織さんは今はお顔が真っ赤になっていた、どうしてそうなっているのかはもう言うまでもないことだった。
「お酒は止めてね」
「お茶にってなったんだ」
「これ以上飲んだら」
詩織さんはその真っ赤なお顔で話す。
「明日辛いって思って」
「詩織さんも小夜子さんも」
「二人でお話してお茶にしたの」
「そっちになのね」
「そうなの」
「いいことだ」
ここまで聞いてだ、井上さんは腕を組みつつ言った。目線は今も花火に向いている。そのうえでの言葉だ。
「お酒は過ぎないことだ」
「適量ですね」
「そのぎりぎりまで飲んでもいいが」
「その境界を過ぎると」
「よくない」
くれぐれもという言葉だった。
「だからそれでいい」
「お茶を飲むことで」
「それでな、ただお茶か」
「お茶が何か」
「お祭りの時はサイダーかラムネではないのか」
「甘い炭酸飲料ですか」
「コーラでもいいが」
井上さんはここでもこだわりを見せて話した。
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