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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十三話 夏祭りその九

「ビールを飲むぞ」
「お祭りだからですね」
「そうだ、夏祭りはビールだ。そして日本酒だ」
 日本酒は二番目だった。
「どんどん飲むぞ」
「ではお酒も買いましょう」 
 円香さんは井上さんに応えた、同じ剣道部の先輩後輩であるせいかやり取りが実に息が会っていていい感じに見えた。
「これから」
「うむ、ビールを飲みつつだ」
「そうしてですね」
「このお祭りを楽しもう」
「このお好み焼き美味しいネ」
「そうあるな」
 二人の横でだ、別の二人もお好み焼きを買って立って食べつつ話をしていた。
「一枚すぐに食べたワ」
「確かにお腹に溜まるある」
「これで空きっ腹ではなくしテ」
「飲んでいくあるな」
「飲むのならまず食べろ」
 井上さんは右手の五本の指を開いてだった、その右手を前に出して言った。何かポーズが特撮みたいだった。
「それからだ」
「何か説得力あるネ」
「その言葉はかなりある」
「じゃあこうして食べたシ」
「飲んで食べるある」
「そうするのだ、空きっ腹で飲むとよくない」
 とにかくだ、井上さんは強く言う。
「食べつつ飲むことだ、健闘を祈る」
「健闘なノ」
「今日はそうなるあるか」
「そうだ、お祭りは戦いだ」
 浴衣姿のまま特撮の司令官みたいに言う、井上さんの外見と相まってその姿勢が実に様になっていた。
「食べる、飲む、遊ぶ」
「その三つをなのネ」
「極めるものあるか」
「全力であたるのだ」
 その三つ共、というのだ。
「いいな」
「うん、そこまで言うのなラ」
「私達も励むあるよ」
「食べるヨ、そして飲むヨ」
「そのうえで遊ぶある」
「その三つを全力で行うことだ」
 井上さんは司令官の様に言い続ける。
「金魚すくいもヨーヨーもスーパーボールも取るのだ」
「よし、じゃあネ」
「やるあるよ」
 二人は井上さんの言葉で気合を入れた、そしてだった。
 実際にだ、二人は井上さんの言葉を受けてから本気になってだった。
 たこ焼きに焼きそば、焼き鳥にフランクフルトをどんどん買って立ちながら凄い勢いで食べてだった。ビールも食べながらごくごく飲んで。
 射的をして金魚すくいをしてヨーヨーもスーパーボールもそうした、その中で。
 二人は綿菓子を食べながらだった、井上さんに言った。
「あの、金魚すくいだけれド」
「おかしくないあるか?」
「あの紙すぐにお水に溶けるヨ」
「紙にしてもおかしいある」
「しかも金魚も重くテ」
「どうしても紙を破られてにげられるある」
「金魚すくいはそうしたものだ」 
 井上さんは二人に腕を組んだ姿勢で今度は姉御の様に言った。
「捕まえるにはコツ、いや技が必要なのだ」
「技ガ!?」
「それが必要あるか」
「そうだ、確かにあの紙は薄く水に弱い」
 普通の紙よりもだ。 
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