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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十三話 夏祭りその六

「遠慮するからな」
「図々しいのはl嫌いなんです」
「そうしたことはか」
「どうにも」
 子供の頃からだ、同級生にそうした人間がいて傍から見ていていつも非常に不愉快な気持ちを抱いたからだ。
「ですから」
「遠慮をするのか」
「そうした風にしています」
「遠慮と厚かましいは違う」
「それはまた、ですか」
「そうだ、謙虚はいいがだ」 
 しかしというのだ。
「遠慮過ぎることもよくない」
「そういうものですか」
『私も図々しい輩は嫌いだが」
 それでもというのだ。
「しかし遠慮過ぎると見ている方も張り合いがない」
「じゃあもっと、ですか」
「くれるというものはある程度貰うものだ」
「そうした方がいいですか」
「欲張ることはよくないにしてもな」
「そこが難しいんですね」
 僕は井上さんに言った。
「遠慮せずにそのうえで欲張らないことが」
「そういうことだ、そしてだ」
「そして?」
「祭りの場ではだ」
 この時のこともだ、井上さんは話して来た。
「盛大に楽しもう」
「食べてですね」
「まずはお好み焼きだ」
「最初はそれですか」
「私はいつもそうしている」
 夏祭りの出店で食べる最初のものはというのだ。
「それからだ」
「ううん、お好み焼きですか」
「何かまずいか」
「僕としては」
 ここで僕は井上さんにこう言った。
「たこ焼きじゃ」
「それもいいがだ」
「まずは、ですか」
「大きくいく」
 それで、というのだ。
「お好み焼きだ」
「大きくだからですか」
「出店のメニューでは一番ボリュームがあるな」
「言われてみれば」
 その通りだ、お好み焼きは出店の商品の中では特にボリュームがあってお腹に溜まる。そもそもお好み焼き自体が食べがいが結構ある。
「そうですね」
「まずはお好み焼きを食べてだ」
「お腹に溜めて」
「そしてだ」
「それで、ですね」
「それを食べてだ」
 それからというのだ。
「他のものを食べる、それにだ」
「それに?」
「お祭りと言えばお酒だ」
 有無を言わせぬ、異論を認めない口調だった。強い断言によってそうさせていた。
「だからだ」
「あっ、空きっ腹でお酒飲んだらよくないですね」
「そうだ、それでだ」
「まずはお好み焼きを食べてですね」
「お腹に確かなものを入れてだ」
「お酒も飲まれるんですね」
「食べながらな」
 それで、というのだ。
「まずはお好み焼きなのだ」
「そういうことですか」
「胃に何もない状態では飲まない方がいい」
「くれぐれもですね」
「胃に負担をかけるしアルコールは胃から吸収される」
 他の飲食物と違いアルコールだけはそうなる、だからお酒を飲んでも普通の飲料よりも空腹が早く来てしまう。 
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