八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十一話 神仏はその三
「違います」
「やっぱり皇室は別格なんだ」
「そうしたことでも」
「ううん、何かね」
「何かとは」
「いや、純粋にね」
本当にだ、こう言ってだ。僕は円香さんに言った。
「日本の皇室は違うんだね」
「義和さんもそう思いますわね」
「うん、やっぱり格が違うんだね」
「天皇、即ち皇帝であられますし」
「そのこともあって」
「本当に全てがです」
それこそというのだ。
「違いまして」
「我が国って恐ろしい国家元首を戴いてるんだね」
「そうですね、神道もまず皇室からですし」
「そういえばオペラ歌手でね」
僕はかつてテレビで観たとんでもない光景を思い出した、ここで。
「プラシド=ドミンゴだけれど」
「あの世界的テノールの」
「その人が何か賞貰ってね」
それでとだ、僕は話した。
「陛下に深々と頭下げていたよ」
「あの世界的テノールがですね」
「そうなんだ、深々と頭を下げてね」
そしてだった。
「陛下から賞状をそうして頭を下げて両手で受け取っていたよ」
「アメリカ大統領でも頭を下げることもない方ですよね」
「ドミンゴ位になるとね」
世界的な名声、いや聞いた話だとそれこそオペラの歴史に名前が残る位の歌手らしい。それこそどんな役でも歌える。
「そうらしいけれど」
「その方が、ですわね」
「凄く畏まってたよ」
「わたくしは長嶋茂雄さんが直立不動だったのを見ましたわ」
「園遊会とかで」
「その時にですわ」
「長嶋さんでもなんだね」
ミスタープロ野球、日本で知らない人はいない位でだ。そのオーラに圧倒された人がいる位という人でもだ。
「陛下の御前ではなんだね」
「不動でしたわ」
「それも直立で」
「そうした方ですから」
「礼装を着られても違うんだね」
「驚きましたわ」
その礼装姿の陛下を見て、というのだ。
「ここまで見事に礼装を着られている方がおられるのかと」
「そうなんだね」
「ただお父様が仰るには」
「円香さんの」
「はい、昭和天皇はこれ以上はないまでの方だったとのことです」
「昭和天皇ね」
僕が生まれる前に崩御されている、正直どんな方だったのか僕はこの目では見ていない。昭和のこと全てがそうだけれど。
「色々言われてる方だね」
「真の国家元首とまで」
「うん、円香さんのお父さんも言ってるんだ」
「あれ以上はないまでの方だったと」
「そこまでの人だったんだね」
「ですから」
それで、というのだ。
「一度あの方のことを調べたいとも思ってますわ」
「昭和天皇という方のことを」
「はい、そして神道にもです」
「そちらにもだね」
「役立てたいです」
「そうなんだね、そういえば円香さんは今は巫女さんだよね」
「はい、実家ではです」
その通りだとだ、円香さんも微笑んで答えてくれた。
「学校から帰るとよく」
「巫女さんの服を着てなんだ」
「神社のお仕事をしています」
「そうなんだね」
「まだまだです」
自分のことはだ、円香さんは苦い顔で答えた。
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