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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十一話 神仏はその四

「わたくしは」
「巫女さんとしては」
「はい、舞もです」
「ああ、舞うこともあるんだったね」
「三輪神社が有名ですが」 
 三輪神社の巫女さんの舞がというのだ。奈良県桜井市にある神社の中でも相当に大きなものの一つだ。
「実家でもです」
「巫女さんが舞うんだ」
「それでわたくしも修行していますが」
「それがまだまだなんだね」
「どうにも」
 やはり苦い顔で言う円香さんだった。
「先輩の方、特にお母様にはです」
「舞はお母さんから教えてもらってるんだ」
「そうです、ですが」
「そちらはなんだね」
「まだまだです」
 その苦い顔での言葉だった。
「ですから今もお部屋で一人でいる時に稽古をしています」
「巫女さんの服を着て」
「いえ、部屋着で」
 このことはだ、円香さんは笑って答えてくれた。
「寝る前に」
「毎日?」
「はい、毎日です」
 それこそというのだ。
「そうしています」
「毎日って凄いね」
「家のお仕事ですから」 
 神社のそれだからだというのだ、これが円香さんの返事だった。
「毎日しています」
「じゃあ実家に帰っても」
「神社のお仕事につきますわ」
「やっぱりそうなんだね」
「そして将来は」
「やっぱり神社?」
「そうなりますわね、けれどそれはまだわかりませんわ」
 僕を横に見ての返事だった。
「人の一生は少し先もわかりませんから」
「そういうものだから」
「何とも言えませんわ、ですが義和さん奈良には」
「奈良に?」
「来られたら」
 その時はという言葉だった。
「是非こちらにいらして下さい」
「円香さんの実家の神社に」
「はい、お父上にもお話して下さい」
「いや、親父はね」
 親父についてはだ、僕はここでも苦笑いで応えた。
「会わない方がいいよ」
「困った方だからですか」
「まあ女子高校生には今は手は出さないかな」
 流石にだ、犯罪とか言われかねないからだ。
「それに僕の友達や知り合いには絶対に手を出さないし」
「誰彼なしではないのですね」
「うん、そこは弁えてるからね」
 遊ぶ相手はだ。
「伊藤博文さんみたいにね」
「あの人も実際には」
「そうらしいね、凄い女好きだったらしいけれど」
 それこそ生前から新聞で面白おかしく囃し立てられる程だ。どうもマスコミはこの頃から色々と好き勝手なことを書いていたらしい。
「節度はあったらしいね」
「遊ぶ相手の人はわかっていましたのね」
「地方に行ってもね」
 仕事でだ、言うまでもなく。
「芸者さんはその地元の有力者さんの愛人みたいな人にはね」
「手を出しませんでしたのね」
「そうらしいね、色々言われてる人だけれど」
 それこそ今でもだ。
「節度は守っていたらしいね」
「しっかりした人でしたのね」
「とてつもない女好きでも」
 うちの親父と同じくだ。 
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