八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十一話 神仏はその一
第六十一話 神仏は
お祭りを翌日に控えた夕刻の神社の境内を歩きながらだった、僕は円香さんに親父の信仰について話した。
「確かに女好きで酒好きの遊人でね」
「何かいつもそう仰ってますわね」
「実際そうだからね」
とにかく親父の話をするとまずこの言葉から入っている。自分でも自覚していることだけれど親父の枕詞だ。
「とにかくそんな親父だけれど」
「信仰は如何でして?」
「それはあるんだよ」
こう円香さんに答えた。
「よく神社やお寺にも参拝するし」
「天理教の教会にもですわね」
「うん、日本にいる時はね」
今はどうか知らない、イタリアにも天理教の教会か布教所はあるかも知れないけれどあそkはやっぱりカトリックだ。
「毎月お参りしてたよ」
「そうですのね」
「それで教会に行く度にお布施もしてたし」
「何もしない訳ではないですのね」
「うん、それはないよ」
本当にだ、そのことはない。
「神頼みはしないけれど」
「信仰はしてますのね」
「そういうことはしていないよ、それと一番信仰している神様は」
「どの神様でしょうか」
「ギリシアのデュオニュソスって言ってるよ」
「お酒の神様ですわね」
「そう、酒好きだからって言って」
自分でだ、それもそのデュオニュソスが司っているワインを飲みながら僕に言っていたのをはっきりと覚えている。
「その神様を信仰してるってね」
「いつも仰ってますの」
「そうなんだ、あと僕にね」
「義和さんには」
「天理市、おぢばに連れて行ったりもしたし」
それにだった。
「住吉大社とか四天王寺にも連れて行ってくれたよ」
「神様も仏様も信じていますので」
「神様はいるって言ってるしね」
その口でだ。
「無神論者ではないよ」
「けれど、ですわね」
円香さんは僕の話をここまで聞いてあらためてこう言った。
「神頼みは、ですわね」
「手術の天才だからって言ってね」
「頼む必要もないと」
「いつもそう言っててね」
そしてなのだ、本当にいつも。
「そうしたことはしないんだ」
「そこは何か」
「何かって?」
「よく聞くお人柄が出ていますわね」
「親父の人間性がなんだ」
「はい、どうも義和様のお父様は」
その親父の性格についてだ、円香さんは自分が感じたことを僕に話してくれた。
「破天荒、無頼ですが」
「それでもなんだ」
「筋の通った方ですわね」
「そうした人だっていうんだね」
「はい、そう思いますわ」
実際にというのだ。
「あの方は傾いていますので」
「傾奇者?安土時代の」
「そうした趣を感じますわ」
「ううん、傾奇者なのかな」
僕は円香さんの話を聞いて首を傾げさせて言った。
「親父は」
「破天荒ですが筋が通っていますので」
「前田慶次みたいな」
「そうした感じがしますわ」
「そうなるかな、ただ滅茶苦茶かって思っていたけれど」
「格好よさを感じますから」
「まああそこまで突き抜けていたらね」
とことんまで遊んでいる、それでいて借金はしないし人の道に背いた様なことをしない。そうした人だからだ。
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