八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六十話 夕刻その十四
「その方の成就をお願いしますわ」
「何でも相当一途な人らしいんだ」
「娘さんに何度もですね」
「アタックしてるみたいだよ、それこそ高校に入学した時から」
「ある意味凄い方ですわね」
「娘さんは気付いていないみたいだけれど」
「こと恋愛にはですか」
その娘さんのこともだ、円香さんは言った。この人のことについてはいささかどうしたものかという口調だった。
「それはよくありませんわね」
「一方がアタックしてもね」
「それでもですわね」
「はい、もう一方が気付かないと」
「一方通行なだけでね」
「実るものも実りませんから」
「本当にそうだよね」
僕も心配になった、その後輩の人の方が。
「早く娘さんに気付いて欲しいうよ」
「全くですわ」
「奈良の話だけれどね」
「奈良の天理市ですわね」
「うん、娘さんは今もそちらにいるよ」
天理教でおぢばと呼ばれているその街にだ。
「それで天理教の勉強中なんだ」
「後輩の方も」
「そうしているんだ、とにかくね」
「その人がどうなるかですわね」
「僕としても気になるね、まあそれでも」
ここで別のことを思い出した、それもいつも思い出すことを。
「親父みたいにはね」
「そこでまたお父上ですか」
「また思い出したよ」
くすりと笑った円香さんに苦笑いで返した。
「あの親父のことを」
「お父上はかなりの方でしたわね」
「悪い意味でね」
そうとしか言い様がない、本当に。
「まああの人も宗教は」
「どうでしたの?」
「話していいかな」
「お願いします」
「それじゃあ話すね」
僕は円香さんの了承を得てから親父の宗教観について話した、そして円香さんを何故か大きく頷かせることになったがこの時は僕はまだそうなることは考えていなかった。
第六十話 完
2015・9・16
ページ上へ戻る