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D&Dから異世界に迷い込んだようですよ?

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2話

 
前書き
この小説でダンジョンズ&ドラゴンズに興味を持っていただけたら幸いです。 

 
 ジン=ラッセルとの邂逅の後、黒ウサギと共に屋敷の外出ていた。
 そこでウースは目にする。人どころか、生命の気配が全くしない廃墟群。そして枯れて砂漠のような場所になった大地。
 これらすべてが、箱庭で魔王と呼ばれる存在が行ったことである。

「たった三年前には、仲間達の活気で溢れてかえってました」
「なるほどな。魔王と呼ばれるだけの事はある」

 地面の砂を触り、呟いた。さらさらと手を流れていく。

(まあ、これぐらいならなんとかなるか)

 大地の様子を見て、感じた事はまだ黒ウサギに伝える気はないようだ。
 屋敷のとなりにある別館から子供達が現れた。二十人くらいはいるだろう。全員がバケツを持っていた。

「黒ウサギのお姉ちゃん。おはよう」
「そっちの人はー?」

 子供が話しかける度に、黒ウサギは律儀に返事を返していた。ウースの事も紹介している。
 子供達が持っているバケツを視認すると、ウースは疑問を投げ掛けた。

「何か取りに行くみたいだけど?」
「YES!これから水を取りに行くのです」

 黒ウサギによれば、この東地区は水が不足している。町には水路が存在しているが、そこを使用するにはそれなりのものが必要。
 水路あたりの説明で、黒ウサギが僅かに言い淀んだのを、ウースは見逃さなかった
 何かあると感じつつも、彼は聞くことはしない。

「水はどこに入れればいい?」
「あの壷です」

 彼女が指差す先には、大人が丸々入りそうなほど大きい壺が、直立している。
 彼はそれを目に入れた。その後ろある場所も。

「あれは?」
「あそこですか。あそこは元々貯水池だったのですが・・・・・・魔王に水源のギフトを取り上げられてしまいまして」
「枯れたと言う訳か」

 水を溜めておく場所に、屋敷や脇に立つ建物へ、水路が繋がっている。その貯水池に近づいていく。
 黒ウサギや子供達も何をするのか首をかしげていた。
 貯水池の前にたどり着く。池は砂利や砂が混じっていてこのままでは使えそうにない。

「まずはここを綺麗にしないとな」

 ウースは呟きと共に杖を構えた。

「サーヴァント・ホード。この池を掃除しろ」

 彼が呪文を唱え終わると、周りをふわりと風が待った。
 次の瞬間、貯水池の様々な所から砂利が浮かび上がる。彼が生み出した不可視の従者達が、空っぽの池を掃除していく。

「フローティング・ディスク」

 隣に透明な直径3フィート・・・・・・大体1メートルほどの透明な円盤が現れた。従者達にその上に砂利をおくよう指示を出した。
 そこで呆然とウースの行動を見ていた黒ウサギが口を開く。

「何をしてるんですか?」
「ん? ああ、説明もせずにすまなかった」

 ウースは振り返って、ぺこりと頭を下げる。

「ここを水で貯めるから、まず掃除してるんだ」
「っへ?」

 素っ頓狂な声を黒ウサギは上げた。
 彼が言ってる事を、一瞬理解が出来なかったのだ。
 期待に震えながら黒ウサギは問う。

「ほ、本当に出来るんですか?」
「ああ。私ならそれが可能だ」

 彼女は幾分迷うような表情を浮かべた。黒ウサギは、足元にいる子供達を見下ろす。
 彼等彼女等も、黒ウサギを見上げていた。それを見た彼女は、振り切るように頭を振る。

「皆はウースさんの手伝いをしてください。私はジン坊っちゃんを読んできます」

 子供達に指示を出すと、彼女は屋敷に向かって歩き出す。子供達も、黒ウサギの指示通り貯水池に向かう。
 貯水池は広かったが、20人ほどの子供達と20体程の力場の従者を連れたウース達は、それほど時間を掛けずに綺麗にした。
 程なく、ジンを連れた黒ウサギが現れた。
 貯水池の前に子供達が集まっている。ウースは、貯水池の中心にある柱の台座に居た。持っていたバックを地面に置き手を入れている。

「ジン坊っちゃんは、ここで待っていてくださいね」
「解かった」

 ジンの返事を聞くと、ウースのいる台座まで軽々跳躍する。

(へぇ)

 黒ウサギの跳躍能力を盗み見たウースも、心の中で感嘆の声をあげた。
 彼女は軽々飛んでいるが、ジンが立っている場所から台座まで、それなりの距離がある。台座までの続く橋がある程度には。

 黒ウサギが台座につくと、ウースもバックから顔を上げた。

「やぁ、貯水池の中心はここで良いか?」
「YES! その通りでございます」

 彼女の肯定を得ると共に、ウースはバックからある物を取り出した。

「…………えっと、それが水を出す秘訣でございますか?」

 黒ウサギは不審げに声を掛けた。
 彼女の反応も無理はない。ウースが手に持っているのは何の変哲もない唯のビンだったのだから。

「その通りだ。…………まぁ君が怪しげに思うのも無理はないか」

 片手にあるビンを見ながら、彼は中心に座る。台座にビンを立てた。

「まぁ、見ていてくれ」

 長い杖を短めに持って、台座に向ける。

「ストーン・シェイプ」

 詠唱が終わると、台座の石組みがビンを包み込むように変形した。ビンは完全に固定されている。

「あとは仕上げをごろうじろ」

 ビンから栓を抜いた。ウースが何か呟くと、ビンから絶え間なく水が溢れ出した。

「わぁっ」

 嬉しそうな黒ウサギの声が漏れる。
 すぐに水は溜まっていき、屋敷や別館の方の水路に流れていく。
 それを見たウースは黒ウサギに向き直った。

「どうかな? 期待に沿えたと思うが」
「す、凄いです! これで水を他から買わなくてもすみます! 皆大助かりです!」

 彼女は喜びを体で表現するように、飛び跳ねる。その勢いはウースに抱きつかんばかりだった。

「喜んでもらえたようで何よりだ」

 ウースは喉奥で笑いを堪えながら述べる。

(後は……)

 すでに彼は次の行動を考えていた。

「さて、彼等の所に移動しようか」
「はいな・・・・・・お先に戻りますよ」

 ウースの言葉に、黒ウサギがうなずく。少しの間のあと、彼女は兎の様に飛んだ。
 今貯水池の前ではしゃいでる子供達やジンの前まで、黒ウサギは簡単に移動した。
 ウースも台座に続く橋を渡って、子供達の所まで歩いていく。
 彼はジンの前に立つと、自慢げに胸を張りながら口を開く。

「どうかな。朝方言った。大体の事はできると言う証明にはなったかい?」
「ええ。ありがとうございます」

 ウースの言葉にジンは頷き、お礼の言葉発した。

「ウース様ありがとうございます!」

 狐耳の少女が頭を下げたのを皮切に、他の子供達も感謝の言葉を投げかける。

「何、いいさ。宿泊料代わりの一環と思ってくれればいい」

 彼の言葉を聞いた黒ウサギとジンが、表情を曇らせた。が、それも一瞬で消す。
 無論、ウースは見逃さないが、問いただす事はなかった。

「そういえば、今何時くらいかな?」
「太陽があちらにあるので」

 ウースの質問に黒ウサギが反応する。太陽の位置を確かめる。

「あと少しでお昼時です」
「まだ午前中か」

 黒ウサギの答えに、ウースが何か考えるように首を捻る。
 その間に、ジンが子供達に、

「皆は先に行ってお昼の準備をしていて」

と指示を出した。彼等彼女等は素直に聞き入れて、館に向かう。
 子供達がいなくなると、ウースはジンの方に視線を向けて、疑問を投げかけた。

「ここら辺に動物や魔獣が出る場所ってあるか?」
「え。あ、あるにはあります」
「と言う事は魔獣とかに迷惑しているのもいるよな」
「まあいますよ」

 ジンは意図がわからず戸惑いながらも、ウースの質問に答えていく。
 何か考え付いたのか手を叩く。

「よし、ちょっと其処に行って動物狩ってくるから、案内してくれ」

 ジンが慌てるように、黒ウサギに視線を向けた。
 彼女も前に出て、ウースに向かって口を開く。

「待ってください」
「悪いが今日中に行いたい」

 黒ウサギの話を遮るように、ウースが話していく。

「勿論幾つか、目的がある。此方のモンスターの強さ。そのモンスターに対して、魔法が通じるかどうかとかね」

 どうにもウースは、この事に関しては引く気がないようだった。
 ジンと黒ウサギは、互いに視線を合わせる。
 それは一瞬の事だったが、黒ウサギに何かを決意させた。
 彼女がウースに一歩近づく。

「それでは、黒ウサギが天幕の外にご案内します」
「ああ、頼むよ」

 黒ウサギが先導して歩き始める。ウースもそれに続く。
 何かを気づいたようにジンの方に振り替えると、
「悪いが、昼飯は要らないと伝えてくれ」
とだけ言って、また歩き始める。

 一人残されたジンは、ウースの伝言を伝えるために、屋敷に戻っていった。
 数分程歩き続けると、ウース達はレンガ造りの町にいる。中世ヨーロッパ風の町並みの先には、見上げるほど高い外壁が立っていた。
 外壁を指差しながら黒ウサギに問いかける。

「あれが箱庭の外と中を別けるという」
「はいな。外門でございますよ」

 彼女もウースに答えを返した。

「あの外には魔獣、幻獣が数多く生息していますので、ウース様のご期待に沿えることかと」

 二人は街中を並んで歩いていく。ウースの目に町の住人が、活気のある光景を作っていた。
 角を生やしたり獣の耳を生やしたりと、雑種混合の光景。基本的に人型の形態を取っている様で、完全な獣の姿は稀のようだ。
 その光景を面白そうに目にしながら、ウースは黒ウサギに話しかける。

「しかし、意外だったな」
「何がですか」

 彼の意図が解らず、黒ウサギは首を傾げる。

「いや、あの子達の為に獣を狩ったことがなかったみたいだからね。それに、その力があれば彼等を養うのは十分だと思うのだが?」

 ウースは、黒ウサギの実力を大体把握していた。だからこその質問である。
 あの屋敷の子供達はやせ細ってこそいないものの、栄養が十分に足りているようには見えなかった。
 そのことを指摘すると、彼女は一瞬目を大きく開ける。直ぐに冷めた目をして、口を開いた。

「実はですね」

 自身は審判権限を持っている事。これにより幾つか縛りがあること。その為、狩り。即ち、狩猟のギフトゲームができないことを告げた。

「なるほどな。っと」

 黒ウサギの説明を聞いているうちに、箱庭の外に行く門。即ち、外門にたどり着いていた。
 黒ウサギは外門を開こうと近づく。その姿にウースはある質問をぶつけた。

「ああ、そうだ。ここに来る途中で、やたら虎の文様をした旗が飾ってあったが、あれは何かのグループなのか」
「っっ」

 一瞬黒ウサギは言い淀んだ後、直ぐに説明しだした。

「Y、YES。あれはあるグループの一員である事の証なのです」
「なるほどね」

 ウースは彼女の説明に頷く。
「じゃあ、行こうか」
「はいな」
 黒ウサギと共に外門をくぐって行った。 
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