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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十話 夕刻その十

「だからね」
「着流しは、ですか」
「見られないかもね」
 あの人の着流し姿はだ。
「僕も見たいけれどね」
「必ず似合いますので」
「そうだね、そういえば円香さんも剣道してるけれど」
「畑中さんの様にですね」
「あの人確か九段だったね」
「相当な方ですね」
「九段っていうと」
 剣道には詳しくない僕でもわかることだった。
「もうね」
「相当なものですわ」
「剣道の最高段位だったかな」
「いえ、十段ですが」
 剣道の最高段位はだ。その段だというのだ。
「他の武道もですけれど」
「それでもなんだね」
「はい、実質的には九段がです」
「最高段位なんだ」
「日本でも数える程しかおられないですが」
「その九段の人の一人がなんだね」
「畑中さんです」
 まさにあの人だというのだ。
「実際に素振りを拝見させてもらいましたが」
「どんな感じだったかな」
「竹刀が自然に動いていて」
 そして、だったとだ。円香さんは畑中さんの素振りは実際にどういったものだったのかを僕に話してくれた。
「流れる様でした」
「そんな感じだったんだ」
「はい」
「剣道のことはね」
 僕は首を少し傾げさせてからこうも言った。
「詳しくないけれど」
「それでもですね」
「本当の達人はそんな感じかな」
「そう思いますわ」
「流れるみたいにだね」
「畑中さんはまことにです」
 まさにとだ、円香さんは僕に話してくれた。
「達人ですわ」
「そこまでの人なんだね」
「そしてお人柄も」
「鍛錬している人なんだね」
「剣道は心身を鍛えるものですが」
「それが出来ている人なんだね」
「そうですわ」
 ここでもだ、円香さんは畑中さんを肯定して言った。
「あの方はそうした方でしてよ」
「凄い人なんだね」
「幾ら剣が冴えていても」
「それでもなんだね」
「心が伴っていませんと」
 それこそ、というのだ。
「剣道家ではありませんわ」
「そうした人もいるんだね」
「中には。教えている子供を虐待する先生もいますわ」
「虐待なんだ」
「はい、防具の上からですが竹刀で何十と叩いたり」
「そういう話結構あるね」
 僕も聞いた話だ、この耳で。
「ちょっとしたことで怒るんだよね」
「何でもないような。動きが悪いと言って」
「そんな何十もだね」
「何度も蹴ったり殴ったり」
「酷い先生いるよね」
「どうしても。ただ」
「ただ?」
「他にも子供に突きを入れたり床で背負投をしたり」
 背負投は本来柔道の技だ、当然ながら柔道を知らない相手にはそうおいそれとは使ってはならない技だ。
「そうしたことをする人は学校の先生ばかりです」
「道場だとないんだ」
「道場は本当に剣道をしている人が教えています」
「そうした人がだね」
「はい、それに道場は評判は外に及びやすいので」
「そうしたことをしたらすぐにだね」
「外に出ます」
 それがだ、一気に広まるというのだ。 
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