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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六十話 夕刻その九

「太宰治さんは否定しておられましたけれど」
「あの頃はそうした感じだったんだろうね」
「はい、あの人にしても」
「けれど今は違っていて」
「花火は夏の風物詩ですけれど」
 このことは変わらないけれどだ。
「冬もですわ」
「そうだよね」
「一年中観られるものになっていますわ」
「そうだね、あと西瓜もね」
「今は、ですわね」
「冬でも食べられるよ」
 夏の代名詞と言っていいこの甘いお野菜もだ。
「それはね」
「そうですわね」
「スーパーで普通に売ってるよ」
「あれもいいですわね」
「夏でも冬でもね」
 それこそ何時でもだ。
「花火も西瓜もね」
「楽しめますわね、けれど明日は」
「うん、明日はね」
「夏の花火を楽しみますわ」
 本来の風物詩であるそれをというのだ。
「心よくまで」
「勿論お祭りも」
「浴衣着ますわ」
 それも着て、というのだ。
「楽しみにして下さいませ」
「浴衣っていうと」
 浴衣と聞いてだ、僕は円香さんに言った。
「皆着たいって言うね」
「八条荘のどの方もですわね」
「うん、美沙さんも言ってたし」
 それにだった。
「他の人もね」
「外国の方々も、ですわね」
「そうだよ、それこそ皆ね」
 本当にだ、全員がだ。
「着たいって言ってるんだ」
「そうですのね」
「色や柄は色々でも」
「そうですわね、そこは二十五人二十五色ですわね」
「二十五色っていうと」
「義和さんもですわ」
 僕に顔を向けてきての微笑んでの言葉だった。
「入れていますわ」
「僕もなんだ」
「はい、義和さんも八条荘の方ですから」
 だからだというのだ。
「入れましたの」
「そうだったんだ」
「もっと言えば畑中さんや他の方もですわね」
 所謂使用人の人達もというのだ。
「あの方々も」
「畑中さん達もだね」
「例えば畑中さんでしたら」
 あの人ならとだ、円香さんは周りを笑みを浮かべて見回しながらそのうえで僕に対してこう話した。
「浴衣似合いそうですわね」
「うん、着流しみたいな感じでね」
「粋になりましてよ」
「粋、そうだね」
 そう言われてだ、僕も頷いた。
「あの人姿勢もいいしね」
「だからですわね」
「あの人なら着流し似合うね」
「浴衣も」
「はい、背も高いですし」
「そうそう、あの人実はね」
「背もありますから」
 姿勢がいいだけでなくだ、あの人は。
「着物も似合いますわね」
「剣道してるからね」
「ですわね、背筋がしっかりしておられます」
「そうだね、ただ」
「ただ?」
「あの人お祭りには出られるかな」
「お仕事ですか」
「そうだったから」
 明日はだ、畑中さんご自身からそう言われた。 
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