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魔法少女リリカルなのは Searching Unknown

作者:迅ーJINー
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第四話

 
前書き
火種用意してもっとキナ臭くしていかねば。 

 
「ふうん、確かに面白い理論だな」
「だろう?それがあれを使えば可能なのだ」
「だが違うな。この理論で殺せるのは所謂"長命種"と呼ばれる"生き物"に限られる。俺は残念ながら、そんな半端な"不老不死"じゃねぇんだよ」

スカリエッティの話を聞いたフレディは彼なりに理解はしたのだろう。その上で興味をなくしたようだ。

「リンカーコアに直接こいつの術式を叩き込むことで、生物の持つ魔力を体内で爆発させる。確かにえげつない俺好みの殺し方だ。何度かしたことがあるしな」
「……」
「だが俺のコレは生き物としてどうこうじゃねぇ、呪いみたいなもんなんだ。クソ下らねぇハンパモンが、力の差に怯えて叩き込みやがった呪いなのさ」
「呪い、だと?」
「あぁ。んでこの内容に関しちゃ管理局の人間は誰一人として知らないし俺も喋るつもりはない。もしアンタがたどり着けたなら誉めてやるよ」

そう言うと彼はジッポを取り出してタバコを吹かす。以前までは銘柄にこだわりがなかったが、地球に来てからは色々な銘柄を試すようになったらしい。

「んで、弁明は終わりか?スパイ科学者」
「あぁ、あのロストロギアについて、これ以上話せることはないよ」
「そうかい」

平静を装いつつも様子を伺うスカリエッティ。だがフレディはタバコをデスクの上の灰皿で消すと、何も言わずに立ち上がった。

「……私を殺さないのかね?」
「俺が個人なら殺してたかもな。だが俺もアンタも組織の人間として動かざるを得ない以上、まだまだ管理局にとって必要な人間であるアンタを勝手に殺すことは許されねぇ。それにあの山口って小僧のお目付け役のいい女、アンタの作品だろ」
「さて、ね」
「そこでシラァ切るかよ。まぁ、俺相手に認めたらアンタの作品食われちまうもんなぁ」

 ケラケラと笑うフレディに呆れるスカリエッティだが、二人共その視線は鋭いままだ。

「まぁいいさ。俺には関係ない。邪魔したな」
「見送りはいるかい?」
「必要ない。勝手に来たし勝手に帰る。そっちはそっちの仕事を片付けておいてくれ」

そう言ったフレディはくわえていたタバコをデスクに置かれていた従業員用の灰皿で揉み消し、立ち去ろうとする。その背中を見送りながら、一人残されたスカリエッティは思わずこぼす。

「……やはり、こんなものではあの男は殺せないか。だが、その鍵となるのは彼女で間違いはなさそうだ」

そう呟くと、懐に入れていたレコーダーのスイッチを切った。何に使うのかは、彼ですら思い付いていない。そのまま彼は、残りの事務作業に没頭していった。



そんな中、直人は休暇を謳歌していた。前日は一人で買い込んだ酒を倒れるほど飲み、目覚めてもなお二日酔い。自室で惰眠を貪り、はっきりと目覚めればもう日暮れ。起き抜けにミネラルウォーターを体に流し込み、シャワーを浴びて出掛ける準備をしている。

「ああ、こっちは今から出るやで。お前今どこおるんよ?」

 黒いライダースジャケットにミッドナイトブルーのデニム、ベージュのハイカットスニーカーという出で立ちで玄関に立ち、まるで旅行にでも行くかのような巨大なキャリーケースを重そうに起こしながら通話をしている。

「ああ、わかった。んじゃ間に合うようには行くから飯だけ先すましといてくれや。俺も適当に食ってくから」

 携帯端末をデニムのポケットにしまった彼はそのまま鍵を閉めて住居にしているマンションを去ると、愛車であるワゴン車に乗り込む。荷物は後部座席に積み込み、向かう先をナビゲーションに打ち込むと、静かに車を発進させた。



 楽器店を後にしたフレディが向かったのは、以前つぶした雀荘がある繁華街。そこで彼は何をしているのかというと、たまたま入ったパチスロ店でひたすらスロットをしていた。

『少し前まで脅してどーのこーのとかぬかしてたのになぁ、ヒャハハッ』
「まぁ、今のところはその気も失せた。せっかく久々にやってきたわけだし、遊ぶ金は稼いどかないとな」
『その稼ぎ方がこれってのが旦那らしいよな。それにしても念のためにと忍ばせといた万券が役立ってよかったなぁオイ?』
「ま、そこは昔の自分をほめてやるかな」

 ダラダラとグロウルとやりとりをしながらも、着々とメダルのドル箱を重ねていくフレディ。ある程度たまったら少し残して換金して台替えをし、今日も絶好調の模様。

『しかしこれさ、店側がこんだけ勝たしてくれる台ばっかよく選べるねぇ』
「クラナガンにもこういうのあっただろ。雑誌とかに書いてたんだよな、こういったギャンブルで食っていく方法、みたいなのをよ」
『そんなもんよく覚えてたなぁ』
「何のための端末だよ。そういうことも記録しておくのがこういう商売だろうが」
『本職でもねぇのに本職より勉強してやがる……旦那がここまで真面目たぁ珍しいねぇ。つぶれんじゃねえかこの店、物理的に』
「何事にも本気ってのが俺のモットーでね。おっと、そろそろ出が渋くなってきやがったな」

 すると彼は何かを察したのか、残ったクレジットをプレーすると換金に向かう。この日この店の売り上げは彼一人によってマイナスまで落とされたとか。



 直人が向かったのはとあるガンショップ。質量兵器が禁止されているこのクラナガンでも、いやだからこそ、サバイバルゲームは密かに人気がある。この店はクラナガン郊外にあり、豊富なラインナップとシューティングレンジと呼ばれる試射台があり、さらにその隣には店舗経営による広大な屋外フィールドと屋内フィールドが存在する。別々に利用することも可能であり、また同時利用の貸切も受け付けているため、ミッドチルダのプレーヤーからすれば聖地と呼ばれるほど有名な店だ。店舗主催の定例会の他にも様々な大規模チームによる貸切イベントや、中小規模のチームによる合同イベントなども開かれている。

「着いたでー。店内?え、リーダーもうおんの?わぁった、すぐ入るわ」

 駐車場に車を止め、端末を取り出して通話を数秒で終わらせた直人は、店内に入ってすぐに筋肉とハグを交わす。

「リーダー、お久しぶりです」
「おう坊主、元気してたか?」
「俺も相棒も気合十分ですよ。すいません中々こっちに来れなくて」
「いいってことよ。この界隈は集まれないとイベントができないからな」
「まぁでも今日は遅い時間かつ屋内って聞いてたから安心しましたわ」
「その割には前日飲み明かしたんだってな。酒は残ってないだろうな?」
「残ってたら流石に辞退してましたね。公務員がポリにつかまってたまるかいって」
「そりゃそうだ、間違いねぇや」

 直人と軽口を叩いているのは、彼の所属するサバゲーチームのリーダーである。がっしりした肉付きをした長身の中年男性で、肉体労働上がりなのか焼けた肌色が貫録と迫力を周囲に放っているが、本人はとても気さくで話しやすい人というのは直人の談。

「ところで、何か新しい相棒は入りましたか?」
「んー、さっきからいくつか試射はさせてもらってるんだが、俺はやはり今のこいつがお気に入りだな。いろいろ弄ってると、やっぱ愛着もひとしおって奴よ」

 そういって直人に見せたのは、使い古したかのように傷があちこちにある大きなキャリーケース。口ぶりからすると、彼の長年の相棒のようだ。

「わかりますそれ。でも俺はまだまだいろいろ試してみたいですね」
「おう、どんどん試せ。色々扱えるってのは、悪いことじゃないからな。ああそうそう、お前さんを呼ばせた奴も奥にいるから、先に顔だけ見せとけよ」
「はーい」

 そういうと彼はキャリーケースを引っ張って、直人を連れて店内奥のシューティングレンジに近づいていく。店員に銃を返してほっこりした笑顔で彼らのもとへやってきたのは、紫色の髪をショートカットにした長身の女性。

「ああ、着いたのか」
「おう。すまんな、なかなか来れんで」
「まったく、お前がいないと私と同レベルで戦える奴がいないから辛いんだぞこっちは」
「素直に寂しいって言えんのかお前は」
「ほう、言うじゃないか」

 などと軽い挨拶を交わし、店内を二人で見て回りながらああでもないこうでもないと喋ること十数分。

「ところで、何か撃っていかないか?」
「んー、こいつ使ってみたかったんよなぁ」
「ああそれか。私も撃たせてもらったことがあるが、動き回るには少し重かったな。やはりグリップは銃口を直接支えられるほうがいい」

 そういって直人が示したのは一丁のアサルトライフル。重厚感のある黒光りしたボディ、大きく張り出した銃床、トリガーより銃口側にあり、地面に向けて取り付けれれたグリップなど、地球ではステアーAUGと呼ばれるモデルである。もちろんメーカーどころか世界を跨いでいるため名称は違うが。

「そういうもんかね」
「デザインは私も好きなんだがなぁ。一回撃たせてもらったらどうだ?」
「ま、他にも見てからな」

 また、この世界におけるサバイバルゲーム用の銃は、基本的には地球と同じような構造をしている。違うのはバッテリーやガスの代わりとして魔力を使っていることで、それにより発射構造が変わっているくらいだろう。威力も地球のものとそう大差ないと直人は語っていた。



 一方その頃ゲス地味た顔で膨れ上がった黒の長財布を弄ぶフレディは、さらに大金をせしめてやろうとしたのか、地下に潜っているダーツバーを訪れていた。電動ダーツ板を導入していて遊びやすいためか人気で、なおかつ客も酒が回っているためか非常に騒がしい店内を悠々と進んで空いたカウンターへと座る。

「いらっしゃいませ。初めての方ですか?」
「そうだな。システムを教えてくれないか?」
「かしこまりました」

 日本人離れした彫りの深い顔立ちにスーツ姿のバーテンが、さわやかな笑顔で料金表を差し出しながら説明する。

「なるほどね、大体わかった。じゃあ早速遊ばせてもらっていいか?」
「かしこまりました。当店のスタッフと対戦することも可能ですが、いかがいたしましょうか?」
「しばらくは一人で投げさせてくれ。その気になったら伝える」
「かしこまりました。こちらが当店のハウスダーツになります。お飲み物はいかがいたしましょう?」
「ボトルがあるウイスキーはあるか?」
「確認致しますのでお時間いただいてもよろしいですか?」
「構わんよ。なんでもいいからある奴を席においといてくれ」
「かしこまりました。でしたらスタッフがダーツまでご案内いたしますね」
「はいよ」

 そしてフレディについたのは、黒髪をうなじまで下した女性。前髪は同色のヘアピンで留めてあり、どこか品の高さを漂わせる。パンツスーツの上からも男好きするスタイルがわかるため、この店の対戦相手としてよく指名されると後ほどドリンクを持ってきたバーテンが語った。

「同伴はOKなのか?」
「申し訳ございませんが勤務時間内はお断りさせていただいております」
「んじゃそのあと時間くれるかい?」

 その勤務態度や戦闘スタイル、さらに数々の恐怖伝説から忘れられがちだが、フレディの見た目はワイルドな好青年なのだ。初見で苦手意識を持つ女性はそうそういない。

「そうですね……では、私と対戦して頂いて、勝利すればお客様にお付き合いいたしますね」
「いいねぇ。勝負は?」
「他のお客様のお相手もいたしますので、01でお願いできますか?」
「OK。サクッと終わらせて君の時間を買わせてもらうよ」

 この勝負に店内が静かに沸き上がった。するとフレディは軽く手を叩いて自分に注目を集めると、集まっていた客に提案をぶつける。

「この店員さん狙ってる奴、ほかにもいるだろう?今宵彼女に挑む権利をかけて、ここで総当たり戦をしないか?あまり長いこと俺が彼女を独占するわけにもいくまい、ましてや彼女はお仕事中だ。接客してほしい奴もいるだろうし、この店だってスタッフが多いわけじゃない。そんな中長い時間拘束するわけにもいかないだろう?」

 この瞬間、フレディが蒔いた火種によって、静かな炎が店内に燃え上がった。男たちの熱き戦いが今始まる。 
 

 
後書き
ちょっとずつでも書かないと全く書かなくなるのが怖い。もうしばらくはフレディさんが裏でなんやらやっている間に、直人君がミッドチルダでこんな生活してますよー的な章です。フレディさんは向こうの原作を読む限り結構猫かぶれるらしいので、知らないところに突撃かけて遊ぶ時はこれくらい紳士に振る舞うんじゃないかなーと思った次第。中身クソ野郎なのに。この話は後半に続く() 
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