八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第六十話 夕刻その六
「困った人だから」
「いえ、実は」
「実は?」
「わたくしが思うことですが」
「巫女としても人としてもなんだ」
「素晴らしい方ですわ」
「そうなのかな」
正直だ、僕は首を傾げさせて答えた。
「大酒飲みで女の子にセクハラをする」
「実際にそうですけれど」
「いい人なんだね」
「はい、巫女としても人ともしても」
どちらでもというのだ。
「尊敬出来る人ですわ」
「それでその人からなんだ」
「巫女としてのあり方を学ぶ為に」
「この夏はなんだ」
「八条荘に残りますわ」
「皆だね」
僕はここでまた言った。
「何かな」
「何か?」
「いや、皆八条荘に残るね」
「そうですわね」
「夏休みだから」
それでだ。
「帰ってもいいけれど」
「はい、どなたも」
「皆残って」
その八条荘にだ。
「楽しく過ごされてますわね」
「そうだよね、不思議だね」
夏休みだからだ、実家に戻ってもいいのにだ。
「まあ外国の人は簡単にはだけれど」
「皆さんそれぞれの事情で残られてますわね」
「実は僕夏休みは一人かもって思ってたんだ」
この八条荘にだ。
「使用人の人達がいてもね」
「畑中さん達と」
「皆はいないかもって思ってたんだ」
八条荘にいる皆はだ。
「だから畑中さん達と色々遊ぼうって思ってたんだ」
「畑中さんとですか」
「お世話になってるからね」
本当にだ、あの人には。
「何かお礼もって思って」
「そういえば義和さんの執事でしたわね」
「本当はね」
今は八条荘の実質的な管理人になっているけれどだ。
「そうなんだ」
「八条家本家の方が送ってくれた」
「うん、凄くよく出来た人で」
僕は最初お会いした時からそう思っている。
「普段のお礼をって思ってたけれど」
「けれどでしたのね」
「それもするけれど」
「今は」
「皆と一緒にいる時間もね」
つまりこの夏休みをだ。
「楽しもうかな」
「そうされますのね」
「こんな夏休みないだろうしね」
皆と一緒に過ごす、そうした夏休みはだ。
「これまで夏休み、中学校に入ってからは」
「お父様とご一緒でしたか」
「家ではね、ただ親父はいつも仕事と遊びで家にいない時も多くて」
朝帰りなんて普通だった、そうした時いつも見ていて嫌になる位明るくて脳天気な顔で笑って帰ってきていた。
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