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アインクラッド篇
movement Ⅰ 白き夜のクリスマスソング
南十字星の相棒
前書き
書き方変えてみました。
48層主街区、リンダース
「こんな前線直下の層に店出せるってことはやっぱり腕はいいのかな?」
「結構評判みたいよ。固定客も多いみたいだし………、店主の人気も高いんだって。」
町外れを流れる川沿いに歩く。少し進むと水車小屋が見えてきた。
「ここか?」
「ええ、ここが噂の『リズベット武具店』。早速入ってみましょ!」
心なしかテンションの高いソラと店のドアをくぐる。どうやら他に客はいないようだ。と、店の奥から元気な声が飛んできた。
「いらっしゃいませ!何をお探しですか?」
出てきたのはピンク色のエプロンドレスに同じくピンク色の髪をした少女だった。成る程、人気が高いってそういうことか。確かに男受けしそうだ。
「えっと、武器の作成をお願いしたいんだけど。っとその前に、」
そこで背中の剣を外す。
「コイツをインゴットに変えて欲しい。」
「………へぇー、珍しい剣ね。両手剣?」
「いや、片手半剣だ。」
その一言に少女鍛冶屋は少なからぬ驚きを受けたようだ。
「コレが!?いや、昨日いきなり作成リストに出たからびっくりしてたのよ。」
「多分俺が修得したからだな。」
それからそのリズベットという名らしい鍛冶屋は剣を睨んで言った。
「でも、コレも充分いい剣よ。わざわざインゴットにしなくても………!?」
そこで彼女は何かに気付いたようだ。
「あなた…、ひょっとして『南十字星』?」
「あー、うん。周りからはそう呼ばれてるらしいな。」
南十字星、俺の二つ名………らしい。呼ばれ始めたのは25~6層辺り。名前の由来は俺のロングコートの背中にある。
「て、ことはあるの?背中に。」
「あー、コレだろ?」
俺のコート、固有名《コート オブ クルックス》の背中には金糸で縁取られた赤い十字架が斜めに架けられている。ちなみにクルックスとは南十字星のことだ。大損害の出た25層のボス戦において手にいれたボスドロップ品だ。性能は極めて高く、未だに最前線で手にはいる品のそれを軽く凌駕している。
「確かに、攻略組なら……あと使えて3層ってとこかしら?」
「そういう訳だ。っと、あとコイツらもだ。」
そういってさらにストレージから二振りの剣を取り出す。片手直剣と両手剣。どちらも片手半剣を修得する前に使っていた物だ。
「確かに承りましたっと。」
そう言うと彼女は剣を受け取ると奥の工房に入った。しばらくして3つのインゴットを手に戻ってきた。
「はい、ミスリルインゴット二つと……ブラッドストーンインゴットかな?これを心材にすればいいの?」
「いや、その三つは添加材にしてくれ。心材には……コイツをたのむ。」
取り出したのは鈍い金色に輝くインゴットだ。
「ナニコレ……、ちょっと見せて。」
リズベットはインゴットを手に取りポップアップメニューを開く。そして驚愕する。
「…………コレ、トンでもないじゃない。何処で?」
「クエスト報酬だ。《スターダストインゴット》。隕石の欠片らしい。」
「こんなの聞いたことないわよ!どっから持ってきたの!?」
「あー、いや。話すと長くなるから今度な?」
「今話しなさい!じゃなきゃ作んないわよ?」
「…………分かったよ。そのクエスト、難しい過ぎんの。ワンパーティーでしか受注出来ないし、対象が最前線のフィールドボス並み。しかも攻略の進行につれて強くなる。そんなのとやらなきゃなんないから、攻略組以外に情報行かないようにしてんの。納得?」
リズベットはしばらく呆気にとられているようだ。無理もない。
「そう言う訳だ。頼むぜ、リズベットさん。」
その言葉で我に帰ったようだ。
「………リズでいいわ。よーし、やってやろうじゃないの!」
十分後
「お待たせ!出来たわよ!」
渡されたのは刃渡り120cmほどの長剣だった。刀身はまるで夜空のような漆黒。しかし、エッジの部分だけまるで鮮血のような深紅に染まっている。そして、剣の腹には金色の十字が刻まれている。柄にも金銀で流麗な装飾が施され、黒い革が滑り止めとして巻かれている。固有名《ブラッドクロス》。その性能もまた恐るべき物だった。
「………ありがとう。いい剣だ。」
「当たり前よ。過去最高クラスにいい出来映えよ。折ったら許さないからね。」
「肝に銘じとくよ。」
こうして、その後共に浮遊城を駆け上がる相棒が、産声を上げたのだった。
後書き
過去最大に長いです。
次回から再び「赤鼻のトナカイ」に戻ります。
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