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アインクラッド篇
movement Ⅰ 白き夜のクリスマスソング
アリ狩り
「セイ、リャァァァ!!」
片手半剣単発ソードスキル、《クレセント》が金色の三日月を描いて今まさに俺を喰い千切ろうと顎を広げた巨大アリを、真っ二つに切り裂いた。ポリゴン片となり、爆散するアリの奥からさらに3体のアリが突進してくる。。ソードスキル後の硬直を課せられている俺は、こいつらの攻撃を避けることはできない。……………通常は。
「あらよっ!と、」
軽業スキルのmod、《硬直遅延》。技後硬直の発生をコンマ5秒から1秒程度遅らせることができる。その一瞬の隙間を使い、右ステップで回避。今度こそディレイを課せられるが、敵の攻撃は空を切るのみだ。
と、視界の外から白銀の稲妻が駆け抜けた。狙いを違う事無くアリ達の急所を捉えた白い光は、今辿った軌跡を戻る。
「ナイス、ソラ!」
ソラのムチ、『ヨルムンガント』の射程はおよそ3m。両手槍も顔負けだ。加えて先端速度は、視認もままならない程速い。欠点を挙げるなら火力不足とコントロールの難しさだが、彼女の練度ならほぼ確実にクリティカルだ。
ディレイから回復し、片手直剣三連撃《シャープネイル》の一撃ずつでアリを仕留める。
「やりぃ!」
「次、左から4体!来るわよ!」
俺とソラで組む時は、俺が前衛で彼女が援護兼司令塔となる。彼女の指揮能力はかなり高く、恐らくではあるがフロアボス戦の指揮すらこなせると俺は踏んでいる。
ここは第47層にある大人気の狩場、アリ谷だ。攻撃力はあるが装甲紙ぺらの アリが大量湧出する。かなり高効率のレベリングスポットなので、ワンパーティーにつき一時間までと制限時間が決められている。昼間なら最低三時間は待たされるが、深夜なら居ても一組だ。
「あ、」
「どしたぁ?」
「いや………ちょっとマズイかも。」
「ああ?」
要領を得ないソラの話はしかし、数秒後にこれ以上ない実感を伴って説明された。
『キシャァァァァ!!』
「………げ。」
閃光さまだぁ!?………じゃなくて女王アリだあぁぁぁぁぁ!!?
女王アリ、このアリ谷にランダムで湧くモンスターで、正式名称は《レギーナ・クイーンアント》。今までの兵隊アリが可愛く見えるステータスを有している。この狩場でコイツに遭遇したら、逃げるのが定石だ。出現に時間がかかるために、撤退はさほど難しくない。
「アマギ、どうする?」
「んーーー、」
視線を巡らす。待機用になっている安全地帯には、某黒ずくめの剣士が立っていた。
(このまま退いたら………なんか一人でも挑んで行きそうだな。)
少し思考を巡らす。ちらとソラを見ると目があった。
(まあ、無理…って程でもないか。)
「行くか。」
「……勝算は?」
「まっ、何とかなるだろ。」
ブラッドクロスを構え直すのと、巨大な女王アリが奇声を上げたのはほぼ同時だった。
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