| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ぼくだけの師匠

作者:櫻木可憐
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第1章~ぼくらを繋ぐ副作用~
  08.恋心

菊地原は分厚い紙の束を眺める。
『感情と記憶の直列関係』と書かれている。
興味はないが如月の集めたデータらしく、読んでいて楽しい。
感情と記憶は直列していると言うデータ。
最後までは読めていないが、菊地原は束を閉じて風間隊の作戦室に置き去りにした。
そしてA級昇格祝いに来なかった如月に会いに行った。
寒いと感じてはいたが、まさか雪が降るとは考えていなかった。
カイロを握りながら、菊地原は目的地にたどり着いた。
インターホンを襲うとして、菊地原は躊躇った。
家の窓は開いている。換気中なのだろう。
部屋からは二人の人の声がした。
盗み聞きの趣味は菊地原にないが、ついその声が耳に入ってしまう。

「天井の破壊は見事だったな。」

「どうも、ほめてくれて」

城戸司令官と如月だった。
二人が一緒にいる場面など見たことはない。
菊地原には不思議な組み合わせに思えた。
なぜ、そして何の話をしているのか、気になって仕方ない。

「親父、珈琲しかないがいいか?」

「それより話の続きだ。
いつから隠していた、体調の話を。」

「隠していたわけじゃない。大丈夫だろうと考えていただけだ。
はぁ・・・原因不明で今は咳が出るだけだ。
心配するな」

菊地原は驚いて窓をジッと見つめた。
自分には何も聞かされていない話を聞いてしまった。
しかも、如月が病気だという話だ。
風間や歌川が知っていたのか、と菊地原は疑念を抱く。

「菊地原にだけは絶対言うなよ」

如月がそういう言うのが聞こえ、菊地原は不愉快になる。
年齢差。子ども扱い。身長差。
気を使われていることが不愉快ならない。
城戸司令官の娘と隠していたのはともかく、自分にだけ病気のことを隠すように言った如月が嫌いだった。
その感情をなんと言うか。世の中でいう恋心である。
翌日のこと。
一心不乱というのはこれか、と如月は思う。
菊地原が自作訓練室にて無我夢中でモールモッドを切り刻んでいた。
その光景は異様に見えた。
データのモールモッドを消して、如月は菊地原に問いかけた。

「菊地原、もしかして、A級昇格祝いに来なかったことをふて腐れているのか?」

「そこまで子どもじゃないよ」

「ならなんだ。言わないと鈍感な俺にはわからないな。」

「病気の話が気になる」

菊地原はまっすぐ答えた。
如月は頭を掻きながら反省する。
換気しながら話したせいで話が漏れていたのだ。
しかし、頑固なまでに菊地原に言うつもりはなかった。

「さあな。」

「言わないなら別にいい。
城戸司令官や風間さんに聞くから。」

「はぁ~あんたのその性格はどちら似なんだ?」

如月はあっさり折れた。
勝ち負けが決まっているものを、頑なになり続ける主義ではなかったのだ。
とりあえず如月は、城戸司令官が父であることを黙っていたことを謝った。

「嫌いで嫌いで」

「そんなに嫌いなんだ」

菊地原は如月を、素直ではないと感じた。
わざわざ珈琲を用意しておいて、嫌いな訳がない。
素直さはこの二人してなかった。
この師弟はよく似ている。

「病気は原因不明でな。
あまり言いたくなかったんだ。
気を使わせたくなくて・・・すまない。」

「ふーん。ねぇたまにはぼくのわがままを聞いてよ。
隠してた反省を含め」

如月はさらに反省した。
初めて出会った日から今まで我が儘を押し通したばかりで、菊地原には何もしていなかったからだ。
だから今日だけは、菊地原が何を言おうが受け止めようと決めた。

「ぼくを彼氏にしてよ」

予想外の発言に如月は叫んだ。

「城戸の財産目当てか!?」 
 

 
後書き
やっとここまで来た・・・
ちょっと疲れた。アニメオリジナル話がやりたい。
新巻まだかな~ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧